自然史博物館のページへ] [友の会のページへ  戻る

結晶片岩(けっしょうへんがん)
crystalline schist                            
片理という縞模様が見られ,その縞目に沿ってはげるように割れる傾向がある。そのはげるように割れた面は片理面とい う。片理面を見ると光沢があり,造岩鉱物が1方向に並んで見えることがある。この方向を線構造という。

強い圧力で波打ったようにおし曲げられている結晶片岩の露頭(しゅう曲)
結晶片岩の露頭では,しばしば強い圧力で曲がりくねった,しゅう曲が見られる。


主な結晶片岩の種類
黒色片岩(こくしょくへんがん)


石墨を多く含むため,全体に灰黒色〜黒色。片理面は石墨や白雲母の存在により脂肪光沢があり,ハンマーで簡単に傷がつく。きめ細かく,個々の石墨などの造岩鉱物の粒は認められないことが多い。
なお,片理面以外の方向から見ると,石英・長石類に富む白い層と,石墨に富む黒い層が互い違いの縞になっていることが多い(下写真)。これは変成作用の過程で両者が分離してできた縞である。
泥岩が約300〜500℃・約3000〜8000 気圧(地下約10〜25km)で変成してできる。

-------------------------------------------------
黒色片岩の偏光顕微鏡写真
黒色片岩の偏光顕微鏡写真
黒色不透明部は石墨,無色部は石英・白雲母・長石類。
-------------------------------------------------
国内では北海道の中央部を南北に貫く神居古潭帯,関東・中部・東海・紀伊半島中部〜四国中央部にかけての三波川変成帯,近畿北部から中国地方中部の三郡変成帯などに,緑色片岩などの他の結晶片岩類とともに多く見られる。
岡山県内では中〜北部に見られる。

白雲母片岩(しろうんもへんがん)


白雲母
と石英を多く含み,白っぽく,日光に反射させると,白雲母がきらきらと白く輝いて見え,ハンマーで簡単に傷がつ く。他に少量の暗緑色の緑泥石や角閃石類などをまばらに含むことがある。
砂岩泥岩などが約300〜500℃・約3000〜8000 気圧(地下約10〜25km)で変成してできる。

白雲母片岩の偏光顕微鏡写真
白雲母片岩の偏光顕微鏡写真
虹色部は白雲母,他は石英。

-------------------------------------------------
国内では北海道の中央部を南北に貫く神居古潭帯,関東・中部・東海・紀伊半島中部〜四国中央部にかけての三波川変成帯,近畿北部から中国地方中部の三郡変成帯などに,緑色片岩などの他の結晶片岩類とともに普通に見られる。
岡山県内では中〜北部にしばしば見られる。


ケイ質片岩(けいしつへんがん)


石英に富み,淡灰色・淡灰緑色・淡褐色などで,硬い。他に少量ながら,きらきら光る白雲母を含むことが多い。
チャー トが約300〜500℃・約3000〜8000 気圧(地下約10〜25km)で変成してできる。

-------------------------------------------------
国内では北海道の中央部を南北に貫く神居古潭帯,関東・中部・東海・紀伊半島中部〜四国中央部にかけての三波川変成帯,近畿北部から中国地方中部の三郡変成帯などに,緑色片岩などの他の結晶片岩類とともに普通に見られる。
岡山県内では中〜北部にしばしば見られる。

紅れん石片岩(こうれんせきへんがん)


マンガンを主成分とする桃赤色で微細な紅れん石という鉱物を含み,岩石全体が特徴的な桃赤色。石英に富み,きらきら光る白雲母も含まれる。また,時に細かい黒色粒状のブラウン鉱という鉱物をわずかに含むことがある。
主にマンガンを含むチャー トが約300〜500℃・約3000〜8000 気圧(地下約10〜25km)で変成してできる。

紅れん石片岩の偏光顕微鏡写真
紅れん石片岩の偏光顕微鏡写真
オレンジ〜桃赤色部は紅れん石, 無色部 は石英と白雲母
-------------------------------------------------
国内では関東・中部・東海・紀伊半島中部〜四国中央部にかけての三波川変成帯にしばしば見られ,特に埼玉県や四国中央部に多い。三波川変成帯以外ではまれである。
岡山県内では見られない。

緑色片岩(りょくしょくへんがん)


玄武岩はんれい岩が約300〜500℃・約3000〜8000 気圧(地下約10〜25km)で変成してできる。
アクチノ閃石緑泥石,斜長石が多く含まれ,全体にくすんだ緑色。白〜淡褐灰色鱗片状の白雲母(フェンジャイト)や黄緑色(うぐいす色)の緑れん石を伴うこともしばしばである。他に微粒の石英などが含まれることが多い。
変成温度がやや低いものはパンペリー石(肉眼ではアクチノ閃石と区別できない)を含むことがある。
変成温度がやや高いものは2〜3mm程度の白色斑点状の曹長石を伴うことがある。

結晶片岩では黒色片岩とともに最も多く見られる。


緑色片岩のしゅう曲
緑泥石・アクチノ閃石などの含まれる造岩鉱物の割合の違いによる色調の違う部分が細かい縞模様をなしている。

緑色片岩の偏光顕微鏡写真
緑色片岩の偏光顕微鏡写真
緑色部はアクチノ閃石緑泥石, 無色部は斜長石・石英。
-------------------------------------------------
国内では北海道の中央部を南北に貫く神居古潭帯,関東・中部・東海・紀伊半島中部〜四国中央部にかけての三波川変成帯,近畿北部から中国地方中部の三郡変成帯などに,黒色片岩などの他の結晶片岩類とともに多く見られる。
岡山県内では中〜北部にしばしば見られる。



青色片岩(せいしょくへんがん)


藍閃石片岩ともいう。藍閃石〜リーベック閃石が多く含まれ,くすんだ青色で,細粒ち密。水に濡らすと鮮やかな濃い青色に見える。うぐいす色の緑れん石を伴うことも多い。他に微粒の石英などが含まれ,時に白〜淡褐灰色鱗片状の白雲母(フェンジャイト)や,赤〜褐赤色粒状の鉄ばんざくろ石(アルマンディン)を少量伴うこともある。
玄武岩はんれい岩が約300〜500℃・約8000〜約1万5000気圧(地下約25〜50km)という低温高圧の変成作用を受けてできる。そして,そのような低温高圧条件で安定なローソン石やアラレ石,ひすい輝石+石英の共生体などを含むことがある。ただし,それらの高圧鉱物は白っぽい微粒子で肉眼では認めがたいことが多い。なお,斜長石は時に含まれるが,灰長石成分はローソン石に,曹長石成分は藍閃石の成分や,ひすい輝石+石英に変化する傾向にあるので,含まれないことも多い。


青色片岩の偏光顕微鏡写真
青色片岩の偏光顕微鏡写真
青色部は藍閃石〜リーベック閃石, 無色部は石英・緑れん石,黒色部は磁鉄鉱
-------------------------------------------------
国内では神居古潭帯や三波川変成帯のうちで変成度の高い部分に存在する。特に徳島県高越地域にまとまって見られる。三郡変成帯にもわずかに見られ,山口県玖珂地域などに緑色片岩などとともに見られる。他には高知市の黒瀬川構造帯にわずかに見られる。
岡山県内では新見市にまれに見られる。



角閃石片岩(かくせんせきへんがん)
主に普通角閃石からなり,黒っぽく,きらきらと光り,やや重い。他の結晶片岩よりも平たくはがれにくく割れにくい。縞模様が粗く,時にほとんど縞模様は見られない。
黄緑色〜淡褐色の緑れん石〜斜灰れん石,白い灰れん石,褐〜暗褐色片状の黒雲母を含むものや,白い斜長石(曹長石)や赤い鉄ばんざくろ石(アルマンディン)の斑点(斑状変晶)を含むものなどがある。他に微粒の石英や斜長石などが含まれることが多い。
玄武岩はんれい岩が約500〜700℃・約5000〜約1万気圧(地下約15〜30km)で変成 してでき,やや高温でできた結晶片岩である。



角閃石片岩の偏光顕微鏡写真
緑褐〜緑色部は普通角閃石,無色 部は斜長石,黒色部は磁鉄鉱
-------------------------------------------------
国内では三波川変成帯のうちで変成度の高い四国中央部にまとまって見られる。その他では福島県の阿武隈地方にわずかに見られる程度である。
岡山県内では見られない。


上記以外の結晶片岩としては,黒くキラキラ光る黒雲母を多く含む黒雲母片岩・同様な見かけでスチルプノメレンを多く含むスチルプノメレン片岩などがある。