「縄文」という一見して考古学的なテーマの講座をなぜ動物分野で開いたのかについて一言書いておきましょう。
動物分野では淡水動物の採集,つまり魚とりを行っています。その道具としてステンレス枠にナイロン糸の網を張った手網,プラスティックのバケツなどを使っています。
ある時,私は歴史博物館で縄文時代の遺跡から出土したという骨で作られたまっすぐな釣り針を見て,はたと気づきました。今では当たり前のように使っている,これら道具はいわゆる文明の利器だったのだと。
プラスティックはもちろん,金属さえもっていなかった彼らは魚とりにもさぞ苦労していたことだろう。いや,待てよ。そう考えるのは物質文明をどっぷりと浸かっている現在人の浅はかさかもしれない。
縄文人は,かつて考えられていたよりも遙かに高度な文明を築いていたことが最近の研究で明らかになってきています。
あのまっすぐな釣り針をどのように使って何を捕らえていたのか。魚とりは魚と人の知恵比べです。
ここはひとつ,現代人が縄文人の知恵を学び,縄文人の釣りに挑戦してみようと。
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