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花こう岩(かこうがん) granite

花こう岩は,流紋岩と同じく,ケイ酸 分(SiO2)を多く(70%前後)含む粘っこいマグマからできる。流紋岩はそれが 地表付近で急に冷えて固まるなどしてできるのに対し,花こう岩はそれが地下深部で数10万〜数100 万年くらいかけてゆっくり冷えて固まってでき,流紋岩よりきめが粗い(平均して1mmより粗い)。
日本には北海道から沖縄県まで広く分布し,分布域は国土の約12%の面積を占め,特に中国地方には広い露出が見られる。
花こう岩は石材によく用いられ,「御影石」などという石材名で呼ばれていることが多い。日本では下の写真の見かけのものが一般的。

日本に普通に見られる花こう岩2例








岡山県笠岡市北木島 産/アルカリ長石が白色不透明。石材名で「北木石」と呼ばれるもの。
岡山県岡山市万成産/ アルカリ長石が赤みを帯びる。石材名で「万成石」と呼ばれるもの。
この花こう岩を細 かく観察すると,灰色で透明感のある粒子,紅〜橙色がかった粒子(または白色不透明の粒子),白色でわずかに透明感のある粒子,黒い粒子が見られる。灰色 で透明感のある粒子は石英,紅〜橙色がかった粒子(または濁ったような白色で透明度の低い粒子)はアルカリ長石,白色でわずかに透明感のある粒子は斜長石,黒い粒子は黒雲母(または少量の普通角閃石)で,これらがモザイク状に集合 している (等粒状組織)。

花こう岩中に含まれる主な鉱物
石英 アルカリ長石 斜長石 黒雲母 普通角閃石

しかし,世界的には,花こう岩は産地により造岩鉱物の色や量比,岩石組織が異なることが多く,下の写真のようなさまざまな見かけのものがある。これらは, 街中で石材と して広く用いられている。このような派手な模様や濃い赤色のものは外国産(大陸)の花こ う岩で, 10億〜25億年前にできたものが多い(日本のような造山帯の花こう岩は比較的新しく,数1000万〜約1億年前にできたものが多い)。

石 材としてよく用いられている外国産の花こう岩
石材の花こう岩
大きな桃色のアルカリ長石がまだらに含まれるもの。一種の斑状組織。(アメリカ産)
花こう岩
大きなアルカリ長石が流れ模様に沿って並んでいるもの。 地下深部でマグマが流れつつ冷えて固まってできた,流理組織を示すもの。
石材の花こう岩
粗い鉱物集合体の中に更に大きな径数cmに達するような丸いアルカリ長石が散在し,そのアルカリ長石の回りを暗緑色の斜長石が薄く取り巻いているもの。 (フィ ンランド産。ラパキビ花こう岩と呼ばれるもの。一種の斑状組織)

石材の花こう岩
含まれるアルカリ長石が赤く,派手な色調のもの。(ブラジル産)


金属鉱床をもたらす花こう岩
花こう岩はタングステン,銅,亜鉛,鉛,錫,モリブデン,金,銀,希土類,タンタル,ベリリウムなどの金属鉱床の生成とも密接な関係がある。それは花こう岩のマグマが固まる際,その中に微量含まれていたそれらの金属成分が,水分(水蒸気や熱水)とともにマグマから分離して濃集するからである。

花こう岩に伴う金属鉱脈(タングステン鉱脈)白っぽく細長く見える部分
花こう岩マグマが冷えて固まる際,マグマに含まれていた水分や微量のタングステン・銅などが300〜400℃程度の熱水やガスとしてマグマから分離し,それが花こう岩の周囲の岩石や花こう岩自身の割れ目に入り込み,その熱水やガスから鉄マンガン重石・黄銅鉱・石英(灰白色の部分)などが結晶化してできた金属鉱脈。


鉄マンガン重石(黒い部分:タングステン鉱石) 黄銅鉱(金色の部分:銅鉱石)

花こう岩に伴うペグマタイト/中央から左右に広く見られるモザイク状の粗い鉱物集合体(白〜クリーム色:長石類,灰〜黒色:石英(黒水晶))がペグマタイト。右上部分のきめ細かく見える部分は花こう岩
花こう岩マグマが冷えて固まる際,マグマに含まれていた水分や微量の希土類・ニオブ・タンタル・ベリリウムなどが400〜500℃程度のガスとしてマグマから分離し,それが花こう岩の周囲の岩石や花こう岩自身の隙間に入り込み,そのガスから粗い長石類・雲母類・石英などが結晶化してできた岩石をペグマタイトという。ペグマタイトにはその希土類・ニオブ・タンタル・ベリリウムなど主成分として含むサマルスキー石・コルンブ石・緑柱石などを伴うことがある。
なお,ペグマタイトには10cm〜数m程度の空隙を伴うことがあり,そこには石英(黒水晶)のほか,トパーズやリチア電気石などの宝石鉱物が見られることもある。ブラジル,パキスタン,アフガニスタンなどではそれは宝石資源として採掘されている。


ペグマタイトから産した各種の宝石鉱物の自形結晶の例


花こう岩の風化
花こう岩は風化すると,水はけのよい,径数mm程度の粗いまさ土(下写真B)になる。
花こう岩が広く 分布する中国地方の平 野部には広く「まさ土」が見られる。

花こう岩の風化
 花こう岩の風化 (@→A→Bの順に風化していく)
@全く風化していないもので堅い。
Aやや風化したもの。黒雲母の鉄分がしみ出して茶色になり,ややもろくなっている。
B風化が進んだもの。造岩鉱物がバラバラに分離して長石や黒雲母がかなり粘土化している(
まさ土)。



花こう岩の方状節理と侵食地形(下図は侵食が進む様子を模式的に示したもの)
 
花こう岩の方状節理と風化
花こう岩のマグマが約700℃で固まり,その後,冷えるときに体積がわ ずかに収縮することで,花こう岩には直方体方向の規則的な割れ目(方状節理)ができる。その方状節 理に沿っ て雨水や地下水がしみ込み,図の左から右のように風化が進むと,風化に耐えた部分(大きな岩塊)が山の斜面に点在した侵食地形となる(右下写真)。花こう 岩地域には,このような地形がよく見られ,大雨が降ると,まさ土と岩塊が混ざったものが急激に流れ下る「土石流」が発生することがある。


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岡山県内の花こう岩について
花こう岩は県内には流紋岩とともに,広く分布している。国内の他 の地域と同様,上の「日本に普通に見られる花こう岩2例」のいずれかに近い外観を示すものが多い (※赤みを帯びた岡山市の「万成石」,白っぽい笠岡市北木島の「北木石」は全国的に有名な石材)

生成年代は,おおむね,山陽地方に分布するものは7000万〜9000万年前,中国山地に分布するものは3000万〜5000万年前で ある。
象岩
倉敷市六口島の「象岩」/海岸に露出する花こう岩が侵食 作用で削ら れ,偶然,象の形となったもの。国指定天然記念物。
磁鉄鉱系花こう岩とチタン鉄鉱系花こう岩の分布

中国 地方におけるチタン鉄鉱を含む花こう岩と,磁鉄鉱を含む花こう岩の分布域
 花こう岩にはチタン鉄鉱磁鉄鉱と いった黒い微細な鉄鉱物が少量 含まれる。山陽地方の花こう岩にはチタン鉄鉱が含まれ,中国山地〜山陰地方の花こう岩には主に磁鉄鉱 が含まれる。
 花こう岩が風化するとこれらの鉄鉱物は砂鉄となって土砂中にたまる。「たたら製鉄」にはチタン含有率の少ない磁鉄鉱の砂鉄が適し,中国山地〜山陰地方の磁鉄鉱を含む花こう岩が風化してできた「まさ土」からは,鉄穴流しで盛んに磁鉄鉱の砂鉄が採取されていた。
 なお,チタン鉄鉱を含む山陽地方の花こう岩にはタングステン・錫の鉱床が随伴し,磁鉄鉱を含む山陰地方の花こう岩にはモリブデンの鉱床が随伴する傾向がある。この傾向は日本列島を含む世界の造山帯の花こう岩についてもあてはまる。

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チタン鉄鉱(ちたんてっこう) ilmenite
微小な黒色粒状で副成分鉱物。鉄とチタンの複酸化物(FeTiO3)で見かけは磁鉄鉱とよく似ているが,磁石につかず,チタンを多 く含んでいる。酸素の乏 しい条件でできる。
まとまって多く産する場合にはチタンの鉱石となる。中国地方の南部にはチタン鉄鉱を含んだ花こう岩が広く分布し,海岸や河川には磁石につかないチタン鉄鉱 からなる砂鉄が見られる
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磁鉄鉱(じてっこう)  magnetite
副成分鉱物。文字通り磁石につく鉄の鉱物で,成分は酸化鉄(Fe3O4)。岩石中に黒い微細な粒をなし,岩 石が 風化してできた土砂の中に,黒い砂鉄としてたまっていることが あり,磁石で簡単に集めることができる。砂鉄は「たたら製鉄」の原料とされる。
磁鉄鉱はかたまり状で多く産する場合には鉄鉱石として採掘されることがある。
砂鉄
磁鉄鉱(砂鉄)