花こう岩中の長石類(ちょうせきるい) feldspar  [戻る]

花こう岩中に長石類は最も多く含まれ,カリウム・ナトリウムを主成分とするアルカリ長石と,ナトリウム・カルシウムを主成分とする斜長石とがある。
アルカリ長石は火成岩ではケイ長質岩である花こう岩や流紋岩に多く含まれ,その他の火成岩中には少ない。
一方,斜長石は他の多くの岩石にも含まれ,地殻では最も多く存在する鉱物である。火成岩に含まれる斜長石については,花こう岩・流紋岩(ケイ長質岩)中のものはややナトリウムに富み,苦鉄質岩(はんれい岩・玄武岩)中のものはややカルシウムに富む。

花こう岩中のアルカリ長石と斜長石
花こう岩中のアルカリ長石と斜長石の例

両者とも白いが,アルカリ長石は斜長石より透明感に乏しい。
灰色の粒は石英,黒い粒は黒雲母。
花こう岩中のアルカリ長石と斜長石
花こう岩中のアルカリ長石と斜長石の例

アルカリ長石は赤味がかることがあるが,斜長石は白い場合がほとんどである。
灰色の粒は石英,黒い粒は黒雲母と少量の普通角せん石。

約17億年前のフィンランド(安定陸塊)の花こう岩中の長石類の例
街中でビルなどの装飾石材として用いられている花こう岩は大陸地域(安定陸塊)の約10億〜25億年前のものが多く,日本のものに比べ粗粒で,全体に派手な模様や,濃い赤色・褐色系のものが多い。この中の長石類はアルカリ長石が肉色・濃赤・濃褐色などで,斜長石は暗灰・灰緑色などで,日本のものとはかなり異なる。
上写真のものはラパキビ花こう岩と呼ばれているもので,直径2〜数cmに達する肉色の大きな丸いアルカリ長石が含まれ,その周りを暗灰緑色の斜長石が数mmの厚さで取り巻いている独特の組織をもっている。斜長石は黒い石英と共に基質の部分にも見られる。
花こう岩中のアルカリ長石(あるかりちょうせき) alkali-feldspar
色/白色・帯赤淡褐,時に肉色・濃赤・濃褐色など(白色のものは斜長石と区別がつきにくいが透明感に乏しい)
透明度/ほとんど不透明に近い。
光沢/やや鈍いガラス光沢。
硬さ/ナイフと同じくらい。
形態/不定形粒状・しばしば1cmを超える自形(長方形)。
へき開/1方向に完全,もう1方向に明瞭。カルルスバッド式双晶をなすものは完全なへき開面に光をあてると粒子の半分だけが反射し,反射している部分と反射していない部分が直線的な境界になっている。下写真はカルルスバッド式双晶のアルカリ長石で,矢印を境として下半分が白っぽく明るく反射している(およそ60°傾けると上半分が明るく反射する)。なお,カルルスバッド式双晶は斜長石にもある。


成分/カリウム・ナトリウムを主とするアルミノケイ酸塩:(K,Na)AlSi3O8

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花こう岩中の斜長石(しゃちょうせき) plagioclase
色/白色・淡灰色,時に暗灰・灰緑色・青色など
透明度/半透明〜ほとんど不透明
光沢/やや鈍いガラス光沢
硬さ/ナイフと同じくらい。
形態/不定形粒状。
へき開/1方向に完全,もう1方向に明瞭。完全なへき開面にはアルバイト式双晶による平行な条線が見られることがある(下左写真。下右写真は偏光顕微鏡で見た斜長石のアルバイト式双晶。)。


成分/ナトリウム・カルシウムを主とするアルミノケイ酸塩:(Na,Ca)(Al,Si)4O8