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偏光顕微鏡での観察 [戻る]
普通の光学顕微鏡は拡大することを主な目的としていますが,偏光顕微鏡は拡大することのほかに偏光下における鉱物の光学的性質で岩石などに含まれる鉱物の同定・岩石の組織の観察などを行うことを目的としています(※偏光:あらゆる方向に振動している通常の光を,ニコル(偏光板)というフィルターに通過させた1方向だけ振動する光)。
そのためには,岩石・鉱物を厚さ0.03mm程度にすり減らしたものをスライドグラスに貼り付けた状態にした薄片(プレパラート)を観察します。
薄片(スライドグラスは28×48mmの強化ガラス製)
→ [薄片の作成方法]
・1枚のニコル(偏光板)でプレパラートを観察することを平行ニコル(開放ニコル,単ニコル)で観察するといいます。
・互いに直交する方向の2枚のニコルを重ね合わせると暗黒になります。この状態で2枚のニコルの間にプレパラートを入れて観察することをクロスニコル(直交ニコル)で観察するといいます。
ニコル(偏光板)の性質 ・あらゆる方向に振動している通常の光を,ある1方向に振動する光だけ通過させ,偏光にする。 ・互いに直交する方向の2枚の偏光板を重ねると暗黒になる。 |
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1枚だけのニコルで薄片を観察した様子 (平行ニコル) |
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互いに直交する方向の2枚の偏光板の間に薄片を入れて観察した様子(クロスニコル) | ![]() |
偏光顕微鏡による観察は,基本的に,上記のようなニコルを使ったプレパラートの観察を拡大して行っていることになります。下図は偏光顕微鏡の基本構造で,上述の2枚のニコルは下方ニコルと上方ニコルで,上方ニコルを挿入しないで平行ニコルで観察する場合と,挿入してクロスニコルで観察する場合とがあります(下右の上の写真)。
下方ニコルと上方ニコルの間にあるステージ(薄片(プレパラート)を置く部分)は360°回転するようになっています。
![]() 偏光顕微鏡の各部の名称 |
![]() ![]() 鉱物の伸長の正負,光学的正負を決める際には検板を使う。通常は下の鋭敏色検板を使う。 |
偏光顕微鏡観察の前準備 | |
接眼レンズのクロスヘアーのピント調整 接眼レンズ(双眼の偏光顕微鏡では片方の接眼レンズ) にはクロスヘアーという十字の黒く細い線が刻まれている。クロスヘアーがはっきり 見えるように接眼レンズのギザを回転させる(右写真)。 |
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接眼レンズのピント調整 適当な薄片をステージに載せ,ピント調整できる方の接眼レンズのピント調整ギザを回転させ,もう片方の接眼レンズと同じピントになるようにする(2つの接眼レンズのピントを一致させる)。 |
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接眼レンズの目幅調整 両眼で覗いたときに視野がほぼ円に見えるようにする。 |
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センタリングの調整 |
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ニコルの調整 花こう岩などの薄片に含まれる短冊状に見える黒雲母をクロスニコルの状態で見ながら,完全に直消光するように下方ニコルを回して調整する。 |
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偏光顕微鏡の取扱上の主な注意点 | ||
湿気・ホコリは厳禁 | 偏光顕微鏡のレンズはカビが生えやすく,湿気・ホコリは大敵である。保管には必ずカバーを掛けておくこと。 | |
レンズのクリーニングについて | 偏光顕微鏡のレンズは屈折率を高めるために鉛などを混ぜた特殊な軟らかいガラスを使っており,万一,汚れた場合は取扱い説明書記載の方法でクリーニングすること。 | |
対物レンズの交換について | 顕微鏡の対物レンズの倍率を変える時は,必ずリボルバーを指で挟んで回すこと。対物レンズに指をかけることは厳禁である。 | ![]() |
偏光顕微鏡で造岩鉱物を観察する際の主な事柄 ※各項目をクリックするとその観察事項がご覧いただけます。 結晶軸・光軸・光学的弾性軸について → [結晶軸・光軸・光学的弾性軸] 各造岩鉱物の光学的性質については → [偏光顕微鏡下での造岩鉱物の性質] 岩石の組織については → [偏光顕微鏡で見られる岩石組織] |
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平行ニコル(開放ニコル,単ニコル)で観察する項目 | 鉱物の形態 | へき開 | 屈折率 | 多色性 | 累帯構造 | ||
クロスニコル(直交ニコル)で観察する項目 | 干渉色 | 消光角 | 伸長の正・負 | 1軸性・2軸性(光軸角)と光学的正負 | 双 晶 | 離溶組織 |