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多色性(平行ニコルで観察)   [戻る]

鉱物は肉眼で見たときと偏光顕微鏡で見たときでは色が違って見えることが多いです。薄片は,その厚さが0.03mmと薄いので,その中の鉱物の色は肉眼で見たときより淡く見えます。色が見える鉱物のうちで,平行ニコルの状態でステージを回転させると色が変化することがあります。これを多色性といいます。 多色性の色の変化はステージを1回転(360°)させるごとに2回ずつ同じ色が現れます。例えば淡褐色〜濃緑褐色の多色性を示す場合なら,1回転ごとに淡褐色の色と濃緑褐色の色が交互に2回ずつ現れます(90°毎に淡褐色→濃緑褐色→淡褐色→濃緑褐色へと変化する。下図の普通角閃石の多色性 ↓ )。



   普通角閃石の多色性


多色性を示す主な造岩鉱物は,火成岩では有色鉱物である黒雲母,普通角閃石,斜方輝石です。石英,アルカリ長石,斜長石などの無色鉱物は岩石薄片では無色なので色の変化がなく,多色性は見られません。なお,有色鉱物でも普通輝石,かんらん石はほとんど多色性を示しません(鏡下での色:普通輝石は淡緑色や淡褐色。かんらん石はほとんど無色)。
なお,ざくろ石類やスピネル類など等軸晶系の鉱物は有色であっても多色性を示しません。

多色性が顕著な主な造岩鉱物の色の変化


黒雲母(淡黄〜濃褐色。多色性の程度は強い。)


緑泥石(緑〜淡緑色。多色性の程度は弱い。なお,鉄に乏しいものは無色で多色性なし)



錐輝石(エジリン)(濃黄〜褐緑〜濃緑色。多色性の程度は極めて強い)


緑れん石
(淡緑〜淡黄色〜無色。多色性の程度はやや強い。鉄に乏しいものは無色で多色性なし)



普通角閃石(淡褐〜濃褐色。緑色を帯びる場合も多い。多色性の程度は強い)


藍閃石(淡青〜濃藍青〜紫色。多色性の程度は強い)


多色性の強い同種の鉱物の粒子が集まっているときはステージを回転させなくても粒ごとに色が違って見え,あたかも別種の鉱物の集合体に見えるので,ステージを回転させるなどしてよく観察する必要があります。


錐輝石(エジリン)(濃黄〜褐緑〜濃緑色)


紅れん石
(橙〜淡桃〜濃桃赤色)



普通角閃石(淡褐〜褐緑〜濃緑色)


藍閃石(淡青〜濃藍青〜紫色)


なお,本来,多色性を示す鉱物でも光軸方向では多色性は見られません。


黒雲母を光軸方向(C軸に近い方向)から見たもの。ステージを回転させても多色性は見られない。