【鉄(てつ)】(8族 元素記号:Fe)    [周期表へもどる]
 
<自 然界での産出>
 鉄は地殻には酸素ケイ素アルミニウムに次いで豊富にあり(5.6%),多くの鉱物に含まれる。資源(鉄鉱石)としては酸素と化合した赤鉄鉱が採掘されている。産出は中国・ブラジル・オーストラリア・インドが多い。
 一般的に土壌が茶色に見えるのは水酸化鉄が含まれているからである。身近な石に色がついて見えるのも鉄分が着色原因になっている場合が一番多い。
 なお,マントルにも酸素・マグネシウム・ケイ素に次いで多く存在する(5.9%)。
 また,太陽に比較的近い地球などの惑星の核は鉄−ニッケルの合金で,鉄が8〜9割を占める。
<用途>
 鉄は古来,さまざまな金物に用いられ,今日ではいろいろな元素を混ぜて合金として用いられることも多い。
 また,酸化鉄(Fe2O3) は赤色顔料(ベンガラ)として用いられる。



赤鉄鉱

 赤鉄鉱  hematite   
成分:酸化鉄 Fe2O3

 写真は縞状鉄鉱層と いう赤鉄鉱を主とする鉄鉱石。これは20〜25億年前に,海中でのシアノバクテリア(藍藻類)の光合成によってでた酸素により,鉄が酸化鉄として海中で沈殿してできたもので,現在,世界的に最も重要な鉄鉱石 である。なお,赤鉄鉱は磁石につかない。
 上は産出状態がわかる縞の細かいもの(黒色部が赤鉄鉱の多い部分)。
  下は幅の広い縞から採取された大きな塊。 
・オーストラリア産


 磁鉄鉱   magnetite  
成分:酸化鉄 Fe3O4

 磁鉄鉱は赤鉄鉱に次いで重要な鉄の鉱石。赤鉄鉱とは異なり磁石につく。
 写真上はスカルン鉱床から産したもので,黒色塊状をなすもの。
 写真下はいわゆる砂鉄である。山陰地方などの花こう岩には微細な磁鉄鉱粒が含まれ,それが風化すると磁鉄鉱粒は他の鉱物に比べ密度が高く,黒色の砂鉄と なってたまり,「たたら製鉄」に用いられる。  国内でかつて採掘された鉄鉱石の多くは磁鉄鉱である。
上:岡山県高梁市備中町山宝鉱山産
下:岡山県産(砂鉄)
褐鉄鉱
塊状のもの/岡山県美咲町柵原鉱山産

褐鉄鉱






高師小僧と呼ばれるもの/愛知県高師ケ原産

“褐鉄鉱”  “limonite”
成分:3価の鉄を主とする水酸化鉄
 褐鉄鉱は,非晶質の3価の鉄を主とする水酸化鉄鱗 鉄鉱,針鉄鉱の総称である。
 褐鉄鉱にはさまざまな外観のものがあり,鉄を含んだ鉱物の風化により簡単に生成する。ま た,鉄製品が常温でさびたものも褐鉄鉱である。
 皮膜状,塊状などのほか,草の根の周りに褐鉄鉱が沈殿してできた高師小僧と呼ばれるものなどもある。高師小僧は棒状で,断面にはか つて草の根が存在していた細 い穴が見える。


なお,通常,土壌が褐色に見えるのは褐鉄鉱を含むからである
(下写真)。
茶色の地層