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鉱物の肉眼以外での調べ方(機器での鉱物の調べ方) [戻る]

鉱物の肉眼同定では慣れた人でも正確な同定率は3〜4割程度です。確実に同定するため,実体顕微鏡,偏光顕微鏡,偏光反射顕微鏡,X線回折装置,分析装置の付いた電子顕微鏡などを使うことがあります。特に,偏光顕微鏡,偏光反射顕微鏡,X線回折装置,分析装置の付いた電子顕微鏡は高価な機器で,これらを使った同定は各県にある工業技術センターなどで行われています(多くは有料)。それぞれ同定に向くケースは以下の通りです。
※実体顕微鏡,偏光顕微鏡,偏光反射顕微鏡のレンズは屈折率を高めるために鉛などを混ぜた特殊な軟らかいガラスを使っており,万一,汚れた場合は取扱い説明書記載の方法でクリーニングしてください。また,レンズはカビが生えやすく,湿気・ホコリは大敵です。

・実体顕微鏡/岩石・鉱石の隙間の微小鉱物の集合体・結晶形態,岩石・鉱石の組織を20〜40倍程度の倍率で立体視する。外観で鉱物を同定するという意味では肉眼での同定と同じであるが,ルーペ(通常は10倍程度)よりも倍率が高く,かつ,立体視できる → 実体顕微鏡へ

・偏光顕微鏡/岩石のプレパラート(薄片)を作成し,その中の鉱物の種類や組織などを調べる。倍率は50〜400倍程度。粉末状の鉱物やもろい鉱物を含む岩石はプレパラートの作成が困難なので調べられないことが多い → 偏光顕微鏡へ

・偏光反射顕微鏡(反射偏光顕微鏡)/金属鉱石中の金・銀・銅・鉛・亜鉛などを主成分とする不透明な鉱物の種類やその組織などを調べる。倍率は50〜400倍程度。→ 偏光反射顕微鏡へ

・X線粉末回折装置(XRD)/鉱物の原子配列(結晶構造)に基づくデータから鉱物種の同定を行なう。耳かき一杯分以上の量が純粋に分離できる鉱物の同定に向く。また,熱水変質した岩石中の微細な変質鉱物の種類を調べる場合もある → X線粉末回折装置(XRD)へ
化学成分が同じで原子配列が異なる鉱物の同定には特に有効(閃亜鉛鉱とウルツ鉱,黒辰砂と辰砂,あられ石と方解石,石英とトリディマイトとクリストバライトなど)。

・分析装置が付属した電子顕微鏡(EPMA EDS・WDS)/鉱物の化学成分(化学組成)を調べる。1000分の数mm(数μm)程度の大きさの鉱物の化学成分が調べられる。分析には,含まれる元素の種類だけを知る定性分析と,含まれる各元素の割合を知る定量分析がある → 分析装置が付属した電子顕微鏡(EPMA EDS・WDS)へ
レアメタルなどの特殊な元素を含む鉱物は定性分析だけで同定できる場合が多い。特殊な元素を含んでいない沸石類や通常の造岩鉱物などは定量分析する必要がある。
この方法は化学成分の決定が中心となるので,化学成分が同じで原子配列が異なる鉱物の同定には使えない。また,ホウ素よりも原子番号が小さい元素(リチウム,ベリリウムなど)の分析はできない。しかし,数μm程度の非常に微小な鉱物でも分析でき,また,結晶内の元素の分布状況などもくわしく調べられ,鉱物の同定方法では最も信頼度が高い。