令和元年6月議会における所信表明
議員の皆様、本日は、御多忙の中お集まりいただき、厚くお礼を申し上げます。

はじめに、5月1日に天皇陛下が御即位され、令和という新しい時代を迎えました。この令和という元号には、厳しい寒さの後に咲き誇る梅の花のように、国民一人ひとりが、明日への希望とともに花を咲かせることができる、との願いが込められていると伺っております。令和元年は、本市にとっての復興元年となりますので、未曽有の大災害からの一日も早い復興をはじめ、市民の皆様の明日への希望につながるまちづくりを進めてまいりたいと考えております。

また、上皇陛下におかれましては、30年余の長きにわたり、我が国の象徴として、常に国民に寄り添い、歩みを進めてくださいました。特に、昨年9月には、本市真備地区に御視察とお見舞いの御訪問を賜り、私たち市民にとりまして、復旧・復興に向けての大きな励みとなりましたことに感謝申し上げますとともに、今後、上皇陛下・上皇后陛下が幾久しくお健やかにあらせられますことをお祈り申し上げます。

それでは、提案理由説明に先立ちまして、市政を取り巻く状況につきまして御説明申し上げます。

昨年7月の未曽有の大災害から、間もなく1年となります。この大災害により、災害関連死10人を含め市全体で62人もの尊い命が失われ、真備地区では、今なお7千人を超える方々が自宅を離れ、市内外の仮の住まいの生活を余儀なくされています。本市では、このたびの豪雨災害で亡くなられた方々を追悼するとともに復興への誓いを新たにするため、発災から1年の節目となる7月6日に真備支所において追悼式を執り行います。また、追悼式に引き続き、災害の記憶を後世に伝え、災害に強いまちづくりへの思いを皆様と共有するため「平成30年7月豪雨災害の碑」の除幕を行います。

復興元年となる今年度は、真備地区復興計画に基づいて、復興への歩みをスタートしております。

まず、治水対策につきましては、4月15日に、国が事業をより身近なところで対応いただけるように、「高梁川・小田川緊急治水対策河川事務所」を真備支所の旧真備保健福祉会館1階に開設していただきました。また、出水期に備え、国が小田川、県が末政川・高馬川・真谷川の堤防について、昨年の豪雨災害で決壊又は一部損壊した箇所の本復旧工事を行っており、真谷川は6月5日に完了し、その他の河川については6月15日までに完了する予定です。本市では、大武谷川・背谷川・内山谷川について、小田川合流点付近において川底に堆積した土砂を取り除き、流下能力を高める工事を、大武谷川は5月、背谷川は1月、内山谷川は2月までにそれぞれ完了したところであり、今後も、引き続き、市が管理する他の河川や、道路側溝に堆積した土砂についても撤去を進めてまいります。また,被災した11の排水機場につきましては、6月中旬までに全てについて応急復旧及び本復旧を完了し、本格的な出水期に備えることとしております。

また、小田川の水位を低下させるため、国が昨年10月から工期を前倒して概ね5年での完成を目指して整備を行っている小田川合流点付替え事業に加え、国と市との連携・協力のもと、河道掘削で発生する大量の土砂を有効活用して、高梁川との合流点から上流7.2キロメートルまでの両岸において、堤防上部の幅を現在の5メートル程度から、7メートル程度へと広げ、法面の勾配も緩くする堤防拡幅を行います。現在、国が設計に取り掛かっており、国と市で概要についての地区説明会を始めているところです。また、県では、末政川・高馬川・真谷川の堤防の嵩(かさ)上げや断面拡大など、今後、堤防強化を行っていく予定と伺っております。さらに、小田川合流点付替え事業完了までの間については、増水時の水位を低下させるため、小田川の河道を掘削し、水が流れる断面を拡大するように、国が全体で約19万6千立方メートルの河道掘削を行う予定となっており、これまでに下流付近において、約6万3千立方メートルの土砂が撤去されました。また、高梁川についても国の緊急対策として、整備計画を前倒して概ね3年間で、樹木伐開・河道掘削等を行う予定です。

高梁川流域における河川の安全性向上に向けては、昨年の12月から、倉敷市、総社市、高梁市、新見市の4市長で、中国電力等に対し、大雨が予想される場合にあらかじめダム水位を下げる事前放流等の実施を強く要請しておりましたが、新成羽川ダムにおいては、6月中旬から運用が開始されることとなりました。

また、末政川の堤防改修に併せて、安全な避難経路を確保するため、真備町有井6号線の延長340メートルの区間の拡幅工事を実施してまいりたいと考えております。4月には、川辺小学校、呉妹小学校、真備東中学校、真備中学校、真備陵南高校の計5か所を浸水時緊急避難場所として新たに設置し、防災・減災体制の強化を図ったところですが、さらに、今月には、真備地区以外の市内全域において、計54か所の浸水時緊急避難場所を設置いたしました。今後は、その避難場所を記載した洪水・土砂災害ハザードマップを順次、作成・配布してまいります。

次に、生活再建に向けた支援につきましては、自費解体は1,198件の申請に対して,5月末時点で1,157件償還しています。被災により全半壊した家屋等を市が解体撤去する公費解体は、5月末までの1,347件の申請に対して、1,158件まで発注を進めています。さらに、被災した空家や地区集会所などで解体が必要な建物が残っていること、また、権利関係者の手続に時間がかかっているなど、特別な事情を踏まえ、6月28日までとしていた申請期限を、12月27日まで延長することとしました。また、被災者生活再建支援金(基礎支援金)については、5月末までに5,378世帯から申請があり、災害援護貸付制度及び災害特別融資利子補給金については、申請期限を来年3月末までに延長したほか、倉敷市真備支え合いセンターが中心となり、被災者の見守りや心のケア等の支援を行い、5月末までに延べ10,600世帯への個別訪問を行っています。

次に、安定した住まいの確保への取組につきましては、現在も真備地区5か所及び船穂地区1か所にある建設型仮設住宅229戸に549人が、市内外にある借上型(みなし)仮設住宅2,510戸に6,642人が仮の住まいでの生活を余儀なくされています。仮設住宅に入居されている方々からは、なるべく真備に近い場所で暮らしたいという声があり、借上型(みなし)仮設住宅に入居後、建設型仮設住宅や他の借上型(みなし)仮設住宅への転居について、柔軟な対応を国・県へ要望しているところです。また、住宅の自力再建が困難な方のための災害公営住宅として、まずは、約120戸の整備を検討しており、そのなかで、川辺の市営住宅敷地内に、集会所も備え、浸水時の緊急避難場所にもなる3階建て程度で約40戸の災害公営住宅と、18戸の市営住宅を来年度中の完成を目指して整備してまいります。また、年齢などにより通常の融資を受けることが困難な方が活用しやすくなるものとして、本市が住宅金融支援機構とともに設けたリバースモーゲージ型融資への申請は、5月末現在で32件となっています。今後、県と連携し、住まいの再建に関するアンケート調査を実施し、災害公営住宅の必要戸数の精査や、候補地の絞り込み等を行いつつ検討を進めてまいります。

次に、産業の再興の取組につきましては、国・県・市が連携して農機具や農業用ハウス等の再購入・修繕に対して、365経営体に助成しております。また、中小企業等がグループを形成して取り組む共同事業に対し、国・県が施設・設備の復旧や整備を支援するグループ補助金については、これまでに計280事業者が構成員である7グループの復興事業計画が認定されておりますが、そのうち交付決定を受けた事業者は62事業者に留まっております。補助金の交付申請期限は11月末までとなっているため、これまでも県に対し、できるだけ事業者の負担を軽減し、円滑に交付手続きが行われるように体制の強化をお願いしてまいりましたが、引き続き、強く要望していくとともに、今後も、中小企業向け緊急融資や事業継続奨励金等の市独自の支援策と併せ、地域の産業の復興支援に取り組んでまいります。

次に、開会まで残り1年1か月余りとなりました2020年東京オリンピック・パラリンピックにつきまして、東京オリンピックの聖火リレーが、来年5月20日に、本市においても実施されることが決定いたしました。この機会を通じ、オリンピックへの機運をさらに高めていくとともに、復興に向けて市民の皆様が、少しでも元気になっていただく機会としてまいりたいと考えております。

また、今月27日から15日間にわたり、倉敷市屋内水泳センターにおいて、日本、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの4か国の水球女子ナショナルチームによる事前キャンプが実施されることとなりました。これは、水球競技に対する本市のこれまでの取組が認められ実現したものであり、このたびの事前キャンプでは、練習の一般公開や、選手と子ども達との交流事業等も実施することとしております。

次に、地方創生に向けた取組について申し上げます。

はじめに、子育て支援の取組でございますが、昨年度から今年度当初にかけて、小規模保育施設、事業所内保育施設や企業主導型保育施設の創設、認定こども園への移行による定員増により、新たに約140人の定員を確保しました。一方で、保育需要の高まりから入所申込が過去最高となり、昨年度と比べて166人増加したため、今年4月1日の待機児童数は、昨年度の125人と比べて18人の増加となる143人となりました。今年10月からの幼児教育・保育の無償化の開始に伴い、これまで以上に保育需要の高まりが見込まれることから、来年4月までに、保育所の創設・増改築による約300人の定員増に加え、企業主導型保育施設の創設など、引き続き、保育士の処遇改善による保育士確保に向けた取組等とともに待機児童対策に取り組んでまいります。

また、今年度に入り、大津市、川崎市等において幼い子ども達が事故、事件に巻き込まれ、尊い命が失われるという痛ましい事案が起こっています。これまでも、通学路の安全点検を毎年実施し、関係機関等と連携を図りながら、対応が必要な箇所の改善に努めておりますが、今後も、交通安全はもとより防犯の観点も加えて点検の強化等に取り組むとともに、学校においては、発達段階に応じた学習活動を通じて、日常生活において事故、事件から身を守るための行動を意識付けてまいりたいと考えております。

次に、教育環境の充実に向けた施設整備として、昨年度末には、児童・生徒数の増加に対応するための南中学校や東陽中学校の大規模増改築、倉敷支援学校の大規模改修が完了しました。岡田小学校、薗小学校、二万小学校、呉妹小学校の普通教室へのエアコン設置につきましては、今月末までに完了する予定としております。川辺小学校、箭田小学校につきましては、仮設校舎であるプレハブ校舎には、既にエアコンを設置しておりますが、本校舎には、本年度末までの復旧に併せてエアコン設置を行ってまいります。

また、全面的な改修工事を実施したライフパーク倉敷科学センターのプラネタリウムが、3月27日にリニューアルオープンしました。高解像度で約1億個の星が投映できる映像技術に加え、音響の質や座席の快適性の向上、車いす用リフトや補聴システムの整備など、多くの方々が安心して御利用いただける施設となり、上映再開から2か月間の入場者数は昨年同期の約2.4倍となる約17,600人となりました。学習施設としてだけでなく、観光目的で訪れる方にも魅力的な施設として発信してまいります。

次に、地方創生拠点整備交付金を活用して、整備を進めていたふなおワイナリーの赤ワイン醸造棟が3月に完成しました。今後、新たに赤ワインを生産するとともに、本市独自の赤ワイン用新ブドウの品種開発を行うことで商品力の強化を図ります。白ワイン用のマスカット・オブ・アレキサンドリアの生産に携わる農業者支援等と併せて、更なる農業振興と地域経済の活性化につなげてまいります。