令和元年9月議会における所信表明
議員の皆様、本日は、御多忙の中お集まりいただき、厚くお礼を申し上げます。

はじめに、8月27日から佐賀県、福岡県、長崎県を中心とした九州北部において記録的な大雨となり、大きな被害をもたらしました。お亡くなりになられました皆様の御冥福をお祈りしますとともに、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

それでは、提案理由説明に先立ちまして、市政を取り巻く状況につきまして御説明申し上げます。

未曽有の大災害から1年となる7月6日、真備支所において、災害によりお亡くなりになられました皆様を追悼するとともに、今後の復興への誓いを新たにするため、「平成30年7月豪雨災害 倉敷市追悼式」を行い、御遺族や住民代表、国・県・市の関係者をはじめ、約350人が出席しました。また、災害の記憶を後世に伝え、災害に強いまちづくりに邁(まい)進すべく「平成30年7月豪雨災害の碑」を設置しました。式典後には、500人を超える市民の皆様が献花に訪れました。発災からこれまでに災害関連死12人を含め、市全体で64人の尊い命が失われ、今なお、真備地区では、約6,500人の方々が自宅を離れ、市内外の仮の住まいでの生活を余儀なくされています。被災された皆様が、一日も早く安心して落ち着いた生活を取り戻していただけるよう、復旧・復興に向けて真備地区復興計画に基づき取組を進めてまいります。

まず、治水対策としましては、小田川合流点付替え事業の着工式が6月16日に行われ、令和5年度の完成に向けて整備が進められています。また、国と市との連携・協力のもと、河道掘削で発生する土砂を有効活用して、小田川と高梁川との合流点から上流7.2キロメートルまでの両岸において、既に拡幅している区間などを除き、堤防上部の市道の幅を現在の5メートル程度から、7メートル程度へと広げ、法面の勾配も緩くする堤防拡幅については、概ね令和3年度までの完成を目指して整備を行っています。現在、国が概略設計を行い、国と市で各地区において工事概要等の説明会を進めており、今後、詳細設計や用地調査・補償等の作業に入っていき、早いところでは9月から工事を開始してまいります。

また、県では、末政川・高馬川・真谷川の堤防の嵩(かさ)上げや断面拡大など、今後、令和5年度までに堤防強化を行っていく予定です。現在、用地調査、設計を終え、権利者等への説明や用地補償の手続を順次行っていると伺っております。

市では、大武谷川、背谷川、内山谷川については、5月までに堆積した土砂の撤去を完了し、堤防が小田川より低い区間について嵩(かさ)上げ等を行うため、9月補正予算において測量及び設計のための委託料を計上しております。

小田川合流点付替え事業完了までの間については、増水時の水位を低下させるため、小田川の河道を掘削し、水が流れる断面を拡大するように、国が全体で約19万6千立方メートルの河道掘削を行うこととしており、これまでに下流付近において、約7万8千立方メートルの土砂が撤去されています。高梁川についても、河道内に土砂が堆積し、樹木が茂っていることから、国に対して以前から市が強く要望しておりましたが、国の緊急対策として、整備計画を前倒して概ね3年間で、西阿知地区から酒津地区の樹木伐開・河道掘削等を進めていただくこととなっております。

次に、仮設住宅につきましては、現在も建設型仮設住宅220戸に526人が、借上型(みなし)仮設住宅2,277戸に5,980人が、仮の住まいでの生活を余儀なくされています。また、年齢などにより通常の融資を受けることが困難な方が活用しやすくなるものとして、本市が住宅金融支援機構とともに新たに設けたリバースモーゲージ型融資への申請が、現在までに56件となっています。

次に、6月から8月までに市と県が連携して実施した「住まいの再建に関する意向調査」の結果から、仮設住宅に入居する世帯の8割以上が再建方法を決めており、一方で、転居時期については4割以上の世帯が未定と回答しています。そのなかには、事業者不足や災害公営住宅の完成時期が分からないため決められないなど、やむを得ない事情を抱えられている方が多いことが分かったため、仮設住宅の入居期間の延長について、市が要請して、県が国と協議を始めております。

また、借上型から建設型仮設住宅への転居については、真備の小中学校への通学が1時間以上かかっている児童・生徒のいる世帯、又は65歳以上の高齢者のみの世帯を対象に、6月19日から7月2日まで転居希望者を公募し、4世帯が入居されることになりました。現在も、建設型仮設住宅に空き住戸があり、県と転居要件の緩和について協議が整ったため、9月には、再度公募したいと考えております。

借上型から借上型仮設住宅への転居については、原則認められていませんが、本市といたしましては、真備地区外から住宅の再建のために自宅に通う負担をはじめ、小中学生が毎日スクールバスに長時間乗車して通学する負担や、高齢者が真備のかかりつけ医療機関に通う負担などの軽減を図るため、様々な機会を通じて、国・県へ要件の緩和を要望しているところです。

次に、安定した住まいの確保に向けて、住宅の自力再建が困難な方のための災害公営住宅につきましては、令和2年度中の完成を目指して、建物の屋上などを地区の浸水時緊急避難場所として利用することも考慮し、一定規模以上の大きさを持つ建物として整備を進めることとしています。6月に川辺の市営住宅敷地内に、約40戸の災害公営住宅と、18戸の市営住宅の整備を発表しましたが、今回の「住まいの再建に関する意向調査」の回答をもとに、災害公営住宅の整備戸数の精査を行ったところ、真備地区内での災害公営住宅に入居希望された方は106世帯で、その中で、リバースモーゲージ型融資の活用も検討している方が16世帯おられます。入居希望地区としては、川辺地区、箭田地区、有井地区の順に多い状況でした。川辺地区の40戸に加え、箭田地区30戸、有井地区20戸を合わせて90戸程度の整備を進めてまいります。一方で、これ以外に災害公営住宅を検討中の方が35世帯となっており、今後、災害公営住宅を希望する方が増えた場合には、既に復旧が進んでいる真備地区内の民間賃貸住宅を活用し、災害公営住宅の代替とすることを検討するなど、引き続き意向調査等を実施し、整備戸数等の精査を行い、自力での住まいの再建が困難な方への確実な住まいの提供に努めてまいります。

次に、真備地区復興計画に掲げている、「防災拠点の整備」や「川と親しみ楽しめる空間の整備」につきましては、真備地区の復興に向けた新たな取組として、小田川沿いに「災害時の防災拠点や防災教育の場となり、住民が川と親しみ集える場、真備の魅力を発信できる場等としても活用できる復興防災公園(仮称)」の整備を検討してまいります。8月31日には、各地区のまちづくり推進協議会から推薦いただいた方々に参加していただき、小田川沿いの利活用などについてワークショップを開催したところ、洪水時の避難場所、車で避難できる場所、拡幅した堤防上にも駐車できないか、防災ステーション等の防災拠点としての場所、また、スポーツ広場、キャンプ場など、住民が川と親しみ集える場所や、地元の特産品の魅力を発信できる場など、様々な御意見をいただきました。今後は、具体的な機能や整備場所、スケジュール等について、引き続き住民の皆様の御意見を伺いながら検討を進めてまいります。なお、整備にあたっては、小田川等の河道掘削土を有効に活用してまいります。

次に、行政の災害対応力の強化に向け、総合防災情報システム(マルチディスプレイ装置)の運用を7月3日より開始し、8月15日に西日本に上陸した台風10号への対応では、様々な防災情報を画面に一度に表示することにより情報共有を図り、速やかな災害対応の判断に活用することができました。今後、避難情報を発令すべき地域や開設すべき避難所を自動的に表示できる機能などを追加し、今年度末までのシステム全体の完成を目指してまいります。また、玉島消防署真備分署では、7月26日から復旧した元の庁舎で業務を再開しました。

次に、「倉敷市災害に強い地域をつくる検討会」の設置についてですが、昨年の豪雨災害では、気象情報の収集や国土交通省の河川事務所などとの情報交換を行い、様々な手段で避難の呼びかけを行いましたが、行政の対応だけでは住民の避難に結びつけることが難しい状況にありました。今後は、住民自らが避難行動を考え実践する取組を進めるなど、地域における防災力を高める必要があると考えています。このため、避難対策の専門家で構成し、地域防災づくりの基礎となる、住民による「地区防災計画」の策定支援や防災教育の推進、地域による避難行動要支援者の避難対策などを検討してまいります。

次に、被災された方の生活再建に向けた支援について、自費解体は1,202件の申請に対して、8月20日現在で1,195件償還しています。また、公費解体は、8月20日現在までの1,404件の申請に対して、1,279件まで発注を進めています。

被災者生活再建支援金(基礎支援金)については、8月20日現在で5,396世帯から申請があったほか、倉敷市真備支え合いセンターが中心となり、被災者の見守りや心のケア等の支援を行い、8月20日現在で延べ15,700世帯への個別訪問を行っています。

農業の再興については、国・県・市が連携して農機具や農業用ハウス等の再購入・修繕に対して、365経営体に助成しているほか、水路、ため池、揚排水機場、農地、林地等について順次復旧に取り組んでおります。

中小企業等の再興に向けてのグループ補助金の申請・交付決定については、これまでに計280事業者が構成員である8グループの復興事業計画が認定され、そのうち134事業者に対して県より補助金の交付決定が行われています。また、小規模事業者が、商工会等の支援を受けて取り組む事業再建を国・県が支援する持続化補助金については、226件が採択されています。さらに、本市独自の支援として,市内中小企業向け緊急融資は167件、グループ補助金又は持続化補助金を活用して事業継続に取り組む事業者への事業継続奨励金は、216件の申請となっています。

今後も、復興に向けた取組の推進のため、真備地区復興計画の着実な遂行と、進捗状況に応じて必要な見直しを行ってまいります。このため、真備地区の住民等を対象とした復興懇談会を開催するとともに、「真備地区復興計画推進委員会」を開催してまいります。

次に、復興元年となる今年度は、真備地区をはじめ市全体の防災・減災力の向上に向け、排水機場・樋(ひ)門の改修や護岸・水路の改修等の取組を進めてまいりたいと考えており、このたびの補正予算案におきましても例年の約1.5倍となる約15億円の経費を計上しています。平成30年7月豪雨をはじめ、毎年のように全国各地で豪雨による洪水・土砂災害等の自然災害が起こるなか、今年度に創設された緊急自然災害防止対策事業債などの市債を財源とし有効に活用しながら、災害への備えに取り組んでまいります。

また、豪雨災害後の風評被害を払拭し、力強く復興していくまちの姿を全国に発信するため、様々な取組を進めております。観光消費の喚起を図る取組として7月から発行を開始した宿泊クーポンは、8月中旬までに予定枚数全てを発行し、多くの観光客に宿泊いただいております。また、10月13日には、文化庁等と共催し、日本の美を国内外に発信する「日本博」の主催事業の一つとして「まび竹林音楽祭」を箭田大塚古墳において開催いたします。この行事は、毎年、地域が中心となって開催していますが、昨年は、豪雨災害の影響により中止を余儀なくされ、2年ぶりに開催するもので、復興していくまちの姿や豊かな自然・歴史・文化を発信してまいりたいと考えております。

次に、スポーツを通じた取組として、今週末の9月8日に、3年ぶりに倉敷国際トライアスロン大会を開催します。2年前は台風で、また、昨年は豪雨災害の影響で中止になりましたが、全国各地から約650人の選手が参加される予定となっています。運営面では、地元をはじめ約3,000人のボランティアの方々に御協力いただく予定となっており、多くの皆様とともに大会を盛り上げてまいりたいと考えております。

また、10月1日には、倉敷川沿いの福原緑地に、天然芝4コース,計32ホールを備えた「倉敷市グラウンド・ゴルフ場」を供用開始します。幅広い世代に楽しんでいただき、また、市内外からの多くの方々に御利用いただけるように広く周知し、健康増進と一層のスポーツ振興に努めてまいります。

さらに、10月23日には、約1年にわたり耐震改修工事を行っておりました福田公園体育館において、「がんばろう!西日本豪雨復興元年 大相撲倉敷場所」が開催されます。横綱や大関など幕内、十両の力士ら約200人が出場予定ですので、土俵での勇ましい姿で市民を元気にしていただきたいと期待しています。

次に、中心市街地の賑(にぎ)わいと活力の創出に向け、阿知3丁目東地区市街地再開発事業において、6月から既存建物の解体工事が始まりました。計画では、商業施設やホテル、マンション等が整備されるほか、本市が立体駐車場等を整備し、令和3年度には、観光都市倉敷の玄関口として相応しい魅力あふれるエリアへと生まれ変わる予定となっています。

次に、この10月1日には、消費税率の改定が行われます。このため、本市では、消費への影響緩和等を目的に、国が定めた要件を満たす子育て世帯等を対象とした倉敷市プレミアム付商品券を9月24日より販売します。また、事業者に対しては、説明会等の実施により、軽減税率制度の実施による経理事務の留意点やレジ導入等の経費に対する国の補助制度などの周知を行っており、引き続き、消費税率引き上げに伴う影響の緩和に努めてまいります。

また、10月から幼児教育・保育の無償化が実施されます。本市では、国から示された方針に沿って、利用者や事業者の皆様が混乱することがないよう、分かりやすい資料による説明等を行い制度の周知を図っています。また、無償化の開始により、保育ニーズが高まることが見込まれますが、計画的な施設整備や保育士確保等により待機児童の解消と保育の質の向上に取り組んでまいります。

この10月から、令和2年4月の保育園等への入所申込の案内を開始いたします。私の公約である「保育園等における育休退園の見直し」について、平成29年度に、保護者が育休に入った場合についても3歳児以上は継続して通園できるように運用を見直しておりましたが、令和2年4月から、生まれた子どもが1歳になるまでは、上の子どもは年齢にかかわらず継続して通園できるように運用を見直すことといたします。今後も、「子育てするなら倉敷で」と言われるまちの実現に向けて努力してまいりたいと考えております。