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エクロジャイト  eclogite

塊状のほか,粗いしま状組織が見られることもある。
非常に高温高圧の変成作用(600〜800℃,1万〜数万気圧)ででき,ざくろ石類(ややマグネシウムを含むアルマンディン)単斜輝石(主に透輝石)などからなり,緑れん石や石英なども含まれることがある。また,滑石とひすい輝石の共生体や藍晶石とひすい輝石の共生体などの特殊な鉱物組合せが存在したり,構成鉱物に異例の副成分が含まれることもある(例:くさび石にアルミニウムが多く含まれたりする)。これらはエクロジャイトが高圧条件でできたことを示している。
特に コーサイト(約3万気圧以上で生成)やダイヤモンド(約6万気圧以上で生成)などの超高圧条件でできる鉱物を含んでいるエクロジャイトを超高圧変成岩という。超高圧変成岩は大陸プレート同士の衝突帯に見られ,海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込んでいる所(環太平洋造山帯)には見られない。

岡山県内では見られない。


ややマグネシウムを含むアルマンディン(赤)透輝石(緑)からなるエクロジャイト(愛媛県東赤石山)
最も普通に見られるエクロジャイトで,海洋プレート上部の玄武岩または中部のはんれい岩が,そのプレートの沈み込みで地下50〜60kmに引き込まれて約1万7000〜約2万気圧の圧力を受けて変成したもの。
その後に起こった弱い変成作用(後退変成作用)で,透輝石は部分的に黒っぽい角閃石類に変質していることが少なくない。


パイロープ(苦ばんざくろ石 無色〜淡桃色),白雲母・ひすい輝石・滑石・藍晶石・石英(白)からなる エクロジャイト(超高圧変成岩)
アルプス山脈付近のプレート運動でアルミニウムやケイ素に富む泥岩または砂岩が地下100km以深に引き込まれて3万気圧以上の変成作用を受けてできた超高圧変成岩のエクロジャイト。原岩が大きく異なるので左のエクロジャイトとは構成鉱物が大きく異なる。
パイロープ(矢印先)は主成分以外の成分(鉄など)をほとんど含まないため,無色に近い(ごく淡い桃色)。SiO2の約3万気圧以上の高圧相であるコーサイトの仮像(右写真)を包有する。
青色片岩の高圧鉱物である藍閃石も,このような超高圧条件では,ひすい輝石と滑石の組み合わせになる(Na2Mg3Al2Si8O22(OH)2(藍閃石) → 2NaAlSi2O6(ひすい輝石) + Mg3Si4O10(OH)2(滑石))。



左のエクロジャイト(超高圧変成岩)のパイロープ中に含まれるコーサイト(Coe)の仮像
コーサイトは石英が約3万気圧以上で相転移してできる鉱物で,これが含まれる岩石はそのような超高圧(地下約100km以深)で形成されたものである。その岩石が地下深部から地表へ上昇する際に,コーサイト(比重2.9)は不安定になり,石英(比重2.65)に相転移する。そのとき,体積が膨張し,周囲のパイロープには放射状の亀裂ができる。
このようなコーサイトの仮像(あるいはコーサイトそのもの)を含む岩石は超高圧でできたエクロジャイト(超高圧変成岩)である。



エクロジャイト(ドイツ バイセンシュタイン)
上の愛媛県東赤石山産のものと同じように,ややマグネシウムを含む赤褐色のアルマンディンと,灰緑色の透輝石(ややナトリウムやアルミニウムを含むオンファス輝石というもの)からなるが,少量の1mm程度の白い粒状の石英も含む(中央付近など)。このオンファス輝石と石英の共生は曹長石(斜長石)が不安定な高圧での生成条件を示している(NaAlSi3O8(曹長石) → NaAlSi2O6(オンファス輝石中のひすい輝石成分) + SiO2(石英))。
なお,この試料はエクロジャイト形成後の弱い変成作用(後退変成作用)で,透輝石が部分的に黒っぽい角閃石類に変質している(上端部分・左〜下端部分)。