鉄隕石  博物館のホームページへ] [友の会のホームページへ[戻る]

 太陽系形成後にできた天体が衝突などで破壊され,その核の部分(単体 の鉄(鉄ニッケル合金))が飛散 したものです(右図)。
 したがって,主に単体の鉄(鉄−ニッケル合金)からなり,非常に重いです。表面は落下後に風化作用でできた褐色の水酸化鉄 でおおわれていますが,切断面(内部)は銀色です(下左写真)。地球 内部の核(地下2900kmより深い部分)もこれと同じものでできています。
 この鉄隕石は天体が破壊された際の衝撃で,鉄の結晶が変形双晶を起こしているもの が多いです。変形双晶の組織は,希硝酸で腐食させた切断面に,直線的なきれいな格子模様として見えることが多いです(下左写真)。
 また,それとは別の格子模様が見られることあります(下右写真)。 これは破壊される前の天体内部で鉄−ニッケル合金が高温の状態から 100万年に2〜3℃くらいの割合で徐冷する際,固体の状態でニッケルの多い部分(テーナイト)と少ない部分(カマサイト)が分離してできたもので,ウィドマンステッテン組織といいます離溶組織の一種)。
鉄隕石の起源
鉄隕石
反射顕微鏡で見たウィドマンステッテン組織
ウィドマンステッテン組織のエックス線像
鉄隕石
 この写真のものは鉄92wt%,ニッケル8wt%からなる。
 これは切断面を希硝酸でエッチングした面。もとの天体が破壊されたときの衝撃による鉄の結晶の変形双晶が直線的な美し い模様として見られる(この写真で光の反射具合で明色に見える部分と暗色に見える部分は互いに双晶関係にある)。
 下方の黒っぽく見える数個の斑点はトロイライト(FeS)。
・ナミビアに落下したもの(写真幅約15cm)
鉄隕石のウィドマンステッテン組織(左のナミビアに落下したものを観察したもの。写真幅約3mm)
 写真上は光学顕微鏡写真。やや明るい細い線状部分がニッケルの多い部分(テーナイト)で,やや暗い全体の部分はニッケルの少ない部分(カマサイト)。
 写真下は写真上の同じ範囲を,化学分析できる電子顕微鏡(EPMA)でNiKαの特性]線像として観察したもの。ニッケルの多い部分(テーナイト)が明色 (緑色)で示され,写真上の明るい細い線状部分と対応していることが分かる。全体の暗色(青 〜黒色)部はニッケルの少ない部分(カマサイト)。