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新生代

 岡山県の新生代の化石には第三紀の ものと第四紀のものがあります。

第三紀(6500万年〜170万年前) 第四紀(170万年前〜現在)

第 三紀の化石
 1500万年ほど前の海成層の砂岩・泥岩層から産するウミニナ・タマガイといった巻貝の仲間,イガイ・マテガイ・カ キといった二枚貝の仲間など,浅海に生息していた貝類が主なものです。他にはクジラなどの脊椎動物化石,サメの歯などが知られています。これらの化石を含 む地層は,高梁市川上町,吉備中央町,新見市などの県中部の吉備高原上に,浸食を免れて点在して分布しています。したがって,現在,標高が 300〜600mもある吉備高原もかつては海で,隆起によって現在のような標高になったものと考えられます。この地層は特に津山盆地に広く分布し,これは 周囲よりもあまり隆起せずに標高が低かったため,浸食作用をあまり受けなかったからです。
 また,この地層は岡山県以外の中国地方の広い地域に点々と分布し,1500万年ほど前は,現在の中国地方のかなりの部分は浅海であったことを示していま す。
第三紀層
高梁市川上町杖立の 貝化石を産出する新生代の泥岩層/写真幅約20m
ウミニナ
ウミニナ(新見市哲西町大野部)/写真幅6cm
タマガイ
タマガイ(津山市大崎)/写真幅5cm
イガイ
イガイ(津山市大崎)/写真幅6cm
キリガイダマシ
キイキリガイダマシ(奈義町中島東)/写真幅8cm
ビカリア
ビカリア(奈義町柿)/写真幅8cm
ウミニナ の仲間であるビカリアは河口と海が交わる汽水域に生息していたものです。
木の葉と海生貝類 
陸域の植物の葉をともなう海生貝化石(新見市哲西町大野部)/写真幅 6cm
これら の化石の共生関係から,これを含む地層は陸に近い浅い海底で堆積してできたことが分かります。
アツガキ
アツガキ(高梁市川上町芋原)/写真幅30cm
厚さ数cmに達する非常に厚い殻をもつ熱帯性のカキの仲間。この産出から当時の岡山県を含む一帯の海域は熱帯〜亜熱帯であったと考 えられます。
サンゴ
サンゴの一種(新見市哲西町大野部)/写真幅10cm
サメの歯
サメの歯(井原市浪形)/写真幅4cm
クジラの背骨
クジラの脊椎骨(津山市)/写真幅8cm
なお,日本列島は, 中国大陸の縁辺部でおよそ2000万年前頃から始まった火山活動により,その縁辺部が分離して1500万年ほど前にできました。これ らの1500万年前の化石は誕生したばかりの日本列島の環境を示すものとして注目されます。

 岡山県を含む中国 地方は第三紀の終わり頃(約200万年以降)から,隆起し,陸化し始めま した。第三紀末の陸の植物化石が鏡野町人形峠付近からわずかに産出します。
植物の葉
第三紀末の陸の植物化石(鏡野町人形峠)/写真幅10cm

第四紀の化石
  これは県域が陸化した後,そこでたい積した地層から産出するものです。
 第四紀の氷期には海水準が低かったため,日本列島は中国大陸と部分的に陸続きで,かつ,瀬戸内海が陸地でした。その時代に,中国大陸から渡ってきたトウ ヨウゾウ,ナウマンゾウといったゾウ類のほかに,ニホンムカシジカ,グレイ氏カトウキヨマサジカ,カズサジカ,サイ,スイギュウ,イノシシなどが,陸地で あった現在の瀬戸内海の場所に生息していました。これらの化石は倉敷市沖の備讃瀬戸海底から豊富に産出しています(倉敷市の化石)。
 また,県北部の蒜山地域の第四紀の珪藻土は大山の火山活動に伴う火山噴出物により,河川がせき止められてできた湖(古蒜山原湖)に生育していた珪藻の遺骸が長期間,湖底に堆積したものです(珪藻の化石の集合体)。珪藻土はろ過材などの原料として採掘されています。


珪藻土(真庭市蒜山)/写真幅7cm
珪藻が堆積したもので,その積み重なりが縞模様となっている。クリーム色で軟質(もろい)。
けいそう

珪藻の化石(真庭市蒜山)/写真幅0.1mm

左の珪藻土を浸した水を顕微鏡観察したもの。珪藻土はこのような珪藻の化石が集まったもの。