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累帯構造(主にクロスニコル・時に平行ニコルで観察)   [戻る]

1つの結晶が成長していくときに最初に成長した部分(中心部)と終わりに成長した部分(周辺部)で,同形置換による固溶体の成分の違いなどがあるものを累帯構造といいます。これはクロスニコル下での消光角や干渉色,時には平行ニコル下での色が異なっていることで認められます。

消光角で累帯構造が認められるもの)
ナトリウム(Na)とカルシウム(Ca)などが同形置換で置き換わる斜長石(下左写真)など。

干渉色で累帯構造が認められるもの)
ナトリウム(Na)-カルシウム(Ca)-鉄(Fe)-マグネシウム(Mg)-アルミニウム(Al)などが同形置換で置き換わる単斜輝石(普通輝石など)
鉄(Fe)-マグネシウム(Mg)が同形置換で置き換わる斜方輝石
ナトリウム(Na)-カルシウム(Ca)・鉄(Fe)-マグネシウム(Mg)-アルミニウム(Al)などが同形置換で置き換わる単斜角閃石(普通角閃石など)
鉄(Fe)-マグネシウム(Mg)が同形置換で置き換わるかんらん石 など。

平行ニコル下での色で累帯構造が認められるもの)
鉄(Fe)-マグネシウム(Mg)-アルミニウム(Al)などが同形置換で置き換わる単斜角閃石(普通角閃石など)
鉄(Fe3+)-マグネシウム(Mg)・アルミニウム(Al)などが同形置換で置き換わる単斜輝石(普通輝石:下右写真など)
鉄(Fe)-マグネシウム(Mg)-マンガン(Mn)が同形置換で置き換わるざくろ石 など




花こう岩中の斜長石の累帯構造(クロスニコル)

斜長石の多くは固溶体組成(CaとNaの比率)の違いで消光角が異なる。クロスニコルでそれを数度ずつゆっくりステージを回転させて観察すると,中心から周辺部へと消光部が移動する。
中心付近がCaに富み,縁辺部がNaに富むことが多いが,その逆や不規則に変化しているときもある。不規則に変化しているときはステージを回転させると消光部が変則的に変化する。


閃緑岩中の単斜輝石の累帯構造(左:平行ニコル,右:クロスニコル)

単斜輝石中にFe3+が多いと緑味が強く,平行ニコルでも色で累帯構造が分かることがある(左)。クロスニコルではその部分は干渉色がやや高く,消光角も異なる
(右)。


結晶片岩(青色片岩)中のざくろ石の累帯構造(平行ニコル)

鉄(Fe)-マンガン(Mn)-マグネシウム(Mg)が同形置換で置き換わるざくろ石(パイラルスパイト)は平行ニコルで赤味の濃淡で累帯構造が認められる場合がある。一般にFeが多いと赤みがあり,Mgが多いと無色になる傾向がある。
上写真のざくろ石(Gar)は結晶中心部(桃紅。変成作用初期の晶出部)ではMgに乏しくアルマンディン90%・スペサルティン10%・パイロープ0%程度の組成を示すが,結晶周辺部(淡桃紅。変成作用後期の晶出部)ではMgに富みアルマンディン70%・スペサルティン0%・パイロープ30%程度の組成を示す。
これは一連の変成作用の過程で後期に圧力が高くなり(原岩の海洋プレートの玄武岩の沈み込みが深くなる),ざくろ石のMgが増加していった累進変成作用の現れである。
ざくろ石の周囲の灰青色部(Ghp)は藍閃石,藍閃石中の屈折率の高い粒〜柱状鉱物は緑れん石。