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屈折率(平行ニコルで観察)     [戻る]


屈折率は光が鉱物を通過する際にどのくらい光が屈折するかという度合いです。

鉱物の屈折率=sinθ1/sinθ2   

※偏光顕微鏡観察でいう鉱物などの屈折率とは,空気に対する
鉱物などの相対屈折率をいいます。
 

※多くの鉱物(等軸晶系以外の鉱物)は方位により屈折率が異なります。


屈折率を偏光顕微鏡で観察するときは,鉱物の輪郭や割れ目が黒い筋となってはっきり見えるかどうかということに着目します。

・スライドグラスと岩石の間にある接着剤の屈折率(1.54)に近い屈折率をもつ鉱物(石英・アルカリ長石・斜長石)の場合,輪郭や割れ目は,ほとんど見えません。
・その接着剤よりも屈折率がかなり高い鉱物(1.6〜1.7:白雲母・黒雲母・普通角閃石・輝石類・かんらん石)の場合,輪郭や内部の割れ目は,はっきり見えます。なお,屈折率が1.8を超えるような鉱物(ざくろ石類,ジルコンなど)は,さらにその鉱物全体がざらついた感じに見えます(さめ肌状)。
※屈折率が接着剤よりもかなり低い鉱物の場合にも,その輪郭や割れ目がはっきりと見えますが,そのような屈折率の低い造岩鉱物(方沸石などの沸石類・蛍石など:1.43〜1.50)は例がやや少ないです。




閃緑岩中の斜長石(Pl),黒雲母(Bt),普通角閃石(Hb),普通輝石(A)

斜長石(1.55)はスライドグラスと岩石の間にある接着剤の屈折率(1.54)に近いので割れ目や輪郭はほとんど見えないが,黒雲母(1.6程度)は輪郭や割れ目がややはっきり見える。普通角閃石(1.63程度)は黒雲母よりもさらに輪郭や割れ目がはっきり見える。普通輝石(1.68程度)は普通角閃石よりもさらに輪郭や割れ目が太い線ではっきり見える。
はんれい岩中の斜長石(Pl),普通輝石(A),かんらん石(Ol)

斜長石(1.55)はスライドグラスと岩石の間にある接着剤の屈折率(1.54)に近いので割れ目や輪郭はほとんど見えないが,普通輝石(1.68程度)は輪郭や割れ目がはっきり見える。かんらん石(1.7程度)は普通輝石よりもさらに輪郭や割れ目が太い線ではっきり見える。


      主要な造岩鉱物の屈折率
屈折率は同種の鉱物でも,結晶方位や固溶体による成分変化で変動するので以下の値はおよその値である。

※方解石のように,結晶方位で屈折率が大きく異なる鉱物(複屈折量が大きい鉱物)はステージを回転させると輪郭や割れ目の黒い線が,急にはっきり見えたり,見えなくなったりする。そしてクロスニコルでは非常に高い虹色の干渉色を示す。

※鉄・マンガンなどの原子量の大きな元素を多く含む鉱物は屈折率が高い傾向がある。また,高い圧力を受けてできた鉱物(藍晶石やダイヤモンドなど)は原子配列が密なので構成原子の種類にかかわらず,屈折率が高い傾向がある。

石英:1.544〜1.553 アルカリ長石:1.522〜1.528 斜長石:アルカリ長石よりわずかに高い
黒雲母:1.57〜1.62 普通角閃石:1.62〜1.64 普通輝石:1.66〜1.69
斜方輝石:1.69〜1.70 かんらん石:1.68〜1.72 ざくろ石:1.8前後
灰れん石,斜灰れん石,緑れん石,紅れん石:1.7〜1.8前後 ジルコン:1.95〜2.01 方解石:1.486〜1.658
緑泥石:1.57〜1.67 蛇紋石:1.57〜1.67 ほたる石:1.433
紅柱石:1.639〜1.650 ケイ線石:1.660〜1.682 藍晶石:1.715〜1.731
ルチル:2.605〜2.900 コランダム:1.760〜1.772 ダイヤモンド:2.42


                   ベッケ線の観察

ステージ下の絞りを絞り,注意すると,鉱物同士の境にわずかに明るい輝線が見えることがあります。
これはベッケ線というもので,ピントを合わせた状態では見えませんが,ピントをわずかにずらすと見えます。対物レンズを薄片にわずかに近づけると屈折率の低い鉱物の方へ移動し,逆に離すと屈折率の高い鉱物の方へ移動します。このベッケ線の性質を用いて隣り合う鉱物の屈折率の高低を見きわめることができます。