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離溶組織(クロスニコルで観察)   [戻る]

高温でできた固溶体鉱物が,ゆっくりとした温度の低下で固体の状態で2種以上の鉱物に分離することがあり,これを離溶という。
離溶が起こるのは,結晶構造中で構成原子の拡散速度(結晶構造中での原子の移動速度)が速く,かつ,原子の大きさがかなり異なるものが互いに同形置換を起こしている場合である。離溶した鉱物には,1つの結晶中で別種の離溶した鉱物が直線的に配列している離溶組織という組織が見られる(下写真)。

通常の造岩鉱物では離溶組織は,高温から徐冷してできた深成岩中の長石類や輝石類によく見られる。時に高温でできたグラニュライトなどの広域変成岩中の長石類や輝石類にも見られる。しかし,低温でできた結晶片岩・堆積岩中の鉱物や,高温から急冷してできた火山岩中の鉱物にはあまりみられない。

花こう岩中のアルカリ長石に見られる離溶組織
固体のアルカリ長石が約700℃から徐冷する際,カリウムの多い部分(暗灰色)とナトリウムの多い部分(明灰色)に分離してできた離溶組織。
このようなアルカリ長石の離溶組織をパーサイト組織と呼ぶ。
はんれい岩中の単斜輝石(普通輝石)に見られる離溶組織
固体の普通輝石(クロスニコルで青色)が約900℃から徐冷する際,結晶内部にカルシウムに乏しい頑火輝石(クロスニコルで白〜明黄色に見える)が数10枚の薄い板状に離溶してできた離溶組織。普通輝石自体が(001)面に対称に双晶をなしているため,離溶した頑火輝石は双晶境界により折れ曲がったような形態をなす。