類似した回折チャートの鉱物    [戻る]

 鉱物には構成原子や原子配列が似ているものの,基本の原子配列の周期が少し異なること(例:珪灰石/CaSiO3・鉄バスタム石/Ca5FeSi6O18)や,基本の原子配列の特定の隙間にさらに原子が入り込んでいること(例:黄銅鉱/CuFeS2・タルナカイト/Cu9Fe8S16)で,別種の鉱物となっているものがある。
 このような鉱物の区別では,1本〜数本の弱い回折ピークだけが同定の決め手になり,残りの数多くの回折ピークは全く同じという場合が多く,注意しないと,誤認するものがある。この区別の決め手になる小さな回折ピーク(超格子による反射)は低角側に現れる場合が多い。

珪灰石/CaSiO3(上)と,鉄バスタム石/Ca5FeSi6O18(下)の回折ピーク

 両者は原子配列が似ているので,回折ピークも酷似している(肉眼でも,共に繊維状で,鉄バスタム石がわずかにベージュ色を帯びることが多い以外は区別が困難である)。
 しかし,CuKαの特性X線で回折を行った場合,鉄バスタム石には2θ=12.7°付近に相対強度が弱いピークが見られる(赤の3角矢印で示した部分)。一方,珪灰石はそこにピークは出ないのでかろうじて区別できる。