平成29年2月議会における所信表明
議員の皆様、本日は、御多忙の中お集まりいただき、厚くお礼を申し上げます。
 
提案理由説明に先立ち、平成29年度の市政運営や予算編成につきまして基本的な考え方を述べさせていただき、皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
 
まず、倉敷市は、昭和42年2月1日に旧倉敷市・旧児島市・旧玉島市が合併してから、このたび50周年を迎えました。今から50年前の3市合併は、昭和39年に新産業都市に指定された3市がひとつになって新しい時代に向かう幕開けであり、その後、旧庄村、旧茶屋町、旧船穂町、旧真備町との合併を経て、倉敷市の人口は当時の約31万人から、現在では約48万5千人となり、また、平成14年4月からは中核市となり、中四国の拠点都市として発展を続けています。平成29年度は、4月23日の倉敷市民会館での記念式典をはじめとして、市民の皆様からいただいた御提案を盛り込んだ様々な記念事業を実施してまいりたいと考えており、これまで倉敷市を支えてこられた皆様への敬意と感謝の気持ちを表すとともに、今後の更なる倉敷市発展への歩みを進める節目の年として取組を進めてまいりたいと考えております。
 
次に、我が国を取り巻く状況についてでございますが、平成27年国勢調査によると日本の総人口は5年前の前回調査と比較して約96万3千人減少し、調査開始以来初の減少となりました。政府は、このような我が国の人口減少の進行に加え、東京圏への転入超過が約12万人となるなど一極集中傾向が加速していること、そして、東京圏とその他の地域で経済活動の格差が生じていることといった地方創生をめぐる現状認識を示し、昨年12月に、私も策定に加わりました「まち・ひと・しごと創生総合戦略2016改訂版」を閣議決定し、人口減少と地域経済縮小の克服などへの取組をさらに深化させることとしています。こうしたなかで、安倍首相は、地方創生への取組の好事例として、1月20日の第193回国会の施政方針演説におきまして、繊維産業を核に商工会議所、商店街、自治体が一体となって整備した児島ジーンズストリートを紹介されました。国産ジーンズ発祥の地として官民連携で進めてきた取組が国会の場で取り上げられたことは、地元の皆様のこれまでの努力に対して高い評価をいただいたものと考えています。
 
次に、倉敷市を取り巻く状況についてでございますが、現在、人口は微増となっているものの、東京圏に対しては転出超過となっており、また、今後の推計では、平成31年をピークに減少に転じる見込みとなっています。このため、平成27年9月に策定した「倉敷みらい創生戦略」に掲げている、子育て支援をはじめとして、健康長寿、まちの魅力向上、産業力強化、安全安心、高梁川流域連携中枢都市圏などへの取組を今後、さらに強化していく必要があると考えています。このように、倉敷市は今後の人口減少社会に立ち向かい、活力ある社会の実現に向けて将来を見据えたまちづくりを進めていく重要な時期を迎えていると考えており、私は3期目の市政運営にあたり、「子育てするなら倉敷でと言われるまち」「温もりあふれる健康長寿のまち」「安心と活力あふれる元気なまち」「世界に向けて発信するまち」「みらいに責任を果たすまち」という公約に掲げた5つの政策に取り組んでいくこととしています。
 
それでは、平成29年度に取り組む主な事業につきまして、平成28年度2月補正の前倒し分とあわせて、5つの政策に沿って御説明させていただきます。
 
第1に「子育てするなら倉敷でと言われるまち」の実現に向けてでございます。安心して結婚・出産ができ、子どもを持つ世代が仕事と子育てを両立することができる環境の充実を図ります。また、子ども達が確かな学力を身に付け、それぞれの個性と能力に応じ、健やかに成長できる環境づくりを進めます。こうした次代を担う子ども達を社会全体で支える環境の整備は、市長就任以来、一貫して取り組んでいる政策であります。
 
平成27年の倉敷市の合計特殊出生率は1.60となり、3年連続して1.6台を維持し、全国の1.45や岡山県の1.54を上回っている状況です。しかしながら、前年の1.63を僅かに下回っており、更なる積極的な子育て支援策に取り組む必要があると考えています。
 
まず、妊娠期から子育て期にわたるまでの切れ目ない支援の強化として、新たにワンストップ相談窓口として、子育て世代包括支援センターを倉敷、児島、玉島、水島、真備の5か所に開設します。また、こんにちは赤ちゃん訪問事業、地域子育て支援拠点や子育てカレッジの運営、子育てサロンへの運営支援のほか、子ども医療費や妊婦健診・乳児健診費用の助成など、医療面からの支援も引き続き実施してまいります。
 
次に、待機児童対策についてでございますが、平成28年10月現在、倉敷市の待機児童は72人であり、また、平成29年度からは、保護者が育児休業を取得した場合でも継続入所できる対象を、これまでの4歳児クラス以上から、3歳児クラスにも拡大することとしています。こうしたことを踏まえ、まず、平成29年度中に、小規模保育施設を4か所増やして11か所に、事業所内保育施設を3か所増やして10か所に拡大することにより、保育定員を107人増加してまいります。そして、平成29年度中に完成する予定の民間保育所の創設1園と増改築2園、認定こども園の創設1園による増加分200人を加えると、平成30年度の保育所等定員につきましては、307人の増加を見込んでいます。このほか、平成30年4月から阿津保育園と大畠保育園を赤崎保育園に統合するための園舎改修、第五福田保育園と第五福田幼稚園を統合して認定こども園に移行するための基本・実施設計、さらに、民間の認定こども園または保育所の1園の改築などにも取り組むこととしています。そして、公立保育所での延長保育を10か所から11か所に、公立認定こども園での延長保育を1か所から2か所に、さらに、病児・病後児保育につきましては対象児童を小学3年生までから小学6年生までに拡大するとともに、近隣自治体の施設でも利用できるように取り組んでまいります。また、不足している保育士確保につなげるため、新たに保育士宿舎借上に対する支援などを実施してまいります。
 
放課後児童クラブの受入児童数につきましては、平成29年度中のクラブ室の新設や建替、小学校余裕教室の改修などにより208人、クラブ数の増加などにより100人程度増加し、全体で300人を超える受入児童数の増加を見込んでいます。
 
次に、教育に関する取組についてでございますが、倉敷市では、G7倉敷教育大臣会合で採択された「倉敷宣言」をどのように市の施策に反映させていくかにつきまして、有識者による「G7倉敷宣言推進会議」に諮問し、検討いただきました。そして1月30日、「子どものグローバル化の推進」「グローバルな視野をもつ教員の育成」「グローバルな感覚をもつひとづくり・世界に愛されるまちづくり」の3つを掲げた答申をいただきました。今後、この答申を踏まえ、平成29年度には、市内の中学生による「(仮称)倉敷こどもサミット」の開催や教職員のインターナショナルスクール等における国際バカロレア教育体験研修などを実施するG7倉敷宣言アクションプログラム推進事業、外国人対応力や英会話能力の向上を目指す地域におけるグローバルなひとづくり講座実施事業、国際おもてなし講座実施事業などに取り組んでまいります。
 
また、新たに、小学校での基礎学習や個別学習にタブレット端末を導入するICTを活用した学習支援事業、小学1年生を対象とした読書推進事業、より分かりやすい授業に改善するための校内研究支援員や学力の基礎づくりのためのアドバイザーを学校に派遣する基礎・基本定着モデル事業を実施してまいります。引き続き、小学3・4年生の算数の授業を中心に非常勤講師を配置する少人数指導による「確かな学力」向上支援事業、授業等で学習支援ソフトを活用し状況に応じた学習支援や個別指導を行う学力向上支援事業、放課後等に学習支援員を配置する放課後学習サポート事業、さらに退職教員や学生等のボランティアによって教育活動を支援する学校園支援ボランティア活用事業などを実施し、学力向上につなげてまいりたいと考えています。生活支援員につきましては、平成21年度以降、毎年増員しており、平成29年度についても194人から199人に増員してまいります。また、地域の皆様が主体となった学習支援等を通じて子ども達の豊かな心を育む、地域連携による学校支援事業の実施校を45校から49校に拡大してまいります。不登校やいじめ対策につきましては、小学校・中学校の不登校対策のために非常勤講師や支援員を配置する不登校児童・生徒支援員等配置事業、教師などの指導・助言にあたるスクールカウンセラー等配置事業、市内5か所で不登校児童・生徒の学校復帰や社会的自立に向けた支援を行うふれあい教室事業を引き続き実施してまいります。さらに、学習教室「くらすぽ」の運営など子どもの貧困対策についての取組を進め、また、給付型奨学金の対象人数につきましても拡大してまいります。
 
教育環境の充実につきましては、平成28年度に中学3年生の普通教室等にエアコンを設置しましたが、このたびの国の補正予算を活用して、平成29年度中に、中学1・2年生の普通教室にエアコンを設置してまいります。児童・生徒数の増加に対応するため、茶屋町小学校屋内運動場・茶屋町東幼稚園園舎の合築、南中学校や東陽中学校の校舎等の建設に取り組んでいるところでございますが、新たに、西阿知小学校校舎の建設に着手してまいります。また、倉敷支援学校の校舎等の改修や、新たに、G7倉敷教育大臣会合の際に各国代表団に視察いただきました市内で最も歴史ある西中学校木造校舎の保全に取り組むこととしています。さらに、ライフパーク倉敷科学センターのプラネタリウムを全面改修し、国内最高水準の解像度となる投映機器を導入して平成30年度中の完成を目指してまいります。
 
第2に「温もりあふれる健康長寿のまち」の実現に向けてでございます。健康長寿のまちを目指して、高齢者や障がい者の方々の社会参加、生きがいづくり、健康づくりなど生涯現役のまちづくりを推進し、誰もが活躍できる社会の実現を目指します。また、医療や介護が安心して受けられるとともに、地域で安心して暮らし続けられる助け合い・支え合いのまちづくりを進めてまいります。
 
まず、昨年10月に分娩の受け入れを再開し12月に8年ぶりとなる赤ちゃんが誕生した児島市民病院につきましては、平成29年度中の新病院オープンに向けて建設を進めています。
 
次に、スポーツ・健康増進への取組についてでございますが、1月16日、倉敷商業高校出身で中日ドラゴンズの投手として、また、中日ドラゴンズ、阪神タイガース、東北楽天ゴールデンイーグルスや、北京オリンピック野球日本代表の監督として活躍された星野仙一氏の野球殿堂入り決定という、うれしい出来事がありました。今後も、日本の野球界の発展に貢献されることを期待申し上げますとともに、倉敷市スポーツ大使として地域のスポーツ振興にも引き続き御支援いただきたいと考えています。また、平成30年8月に全国中学校体育大会の水泳競技を児島マリンプールで開催することとなり、平成29年度は、児島マリンプールの競技用備品の更新や修繕を行い、受入体制を整えてまいります。また、水島緑地福田公園等の再生整備に加え、平成29年度には新たにグラウンドゴルフ場整備に着手することとしています。このほか、高梁川流域圏域での中高年健康スポーツ推進事業など、市民の皆様の健康増進につながる取組を進めてまいります。
 
平成28年12月末時点での、本市の65歳以上の人口は約12万7千人となり、高齢化率は26.3パーセントとなっています。高齢者の方々が生涯現役として地域や社会と関わりを持ち、元気に活躍されることが、地域の活力向上の大きな支えになることから、豊富な経験や知識を発揮していただく取組を進めてまいりたいと考えています。このため、地域において、高齢者の社会参加を促すふれあいサロン活動促進事業に加え、新たに、医療機関や介護事業所における地域交流のサロン活動を支援する健康いきいきサロン活動促進事業を実施してまいります。さらに、地域包括ケアの取組を拡充するとともに、生活支援コーディネーターの配置拡大や、子育てサロンに高齢者の方々の経験を生かしていただくことなどを目的とした補助制度の拡充、新たにいきいきポイントを活用した地域支え合い推進事業を実施することなどにより、地域での支え合いや三世代交流を進めてまいります。また、認知症の方やその家族を支援する取組のほか、老人福祉施設の整備として、新たに特別養護老人ホームなど6施設の整備を助成してまいります。
 
平成28年4月に障害者差別解消法が施行され、現在策定中の職員対応要領を今月中に公表し、3月から職員への周知と研修を実施する予定としています。また、障がい者の方にも利用しやすいホームページへの改修や、共同生活援助施設1施設の整備への助成、鷲羽山レストハウスのバリアフリー対応駐車場の周辺整備、そして、障がい者や高齢者にやさしい公共施設の改修などにも引き続き取り組んでまいります。さらに、引きこもりやニート状態にある方の学習支援やカウンセリングなどを行う高梁川流域学び直し支援事業を新たに実施するなど、温もりあふれるまちづくりへの取組を進めてまいります。
 
第3に「安心と活力あふれる元気なまち」の実現に向けてでございます。安心して暮らせるまちを目指して、耐震化の推進など自然災害への備えを強化し、まちの強靭化に取り組みます。また、地域の産業力強化を図るとともに、人や企業を大都市圏から呼び込み、まちの賑わい創出と地域経済の活性化に取り組みます。
 
平成28年は、4月に発生した最大震度7の熊本地震、8月に東北と北海道に影響を与えた台風10号や、10月に発生した最大震度6弱の鳥取県中部地震など、全国で大きな自然災害が相次ぎました。倉敷市からは、これらの震災への支援として緊急消防援助隊、応急給水隊、避難所における健康相談、災害廃棄物収集などの活動に延べ187人を派遣し、また、救援物資もお届けしました。東日本大震災の復興支援につきましても、引き続き延べ4人の職員を長期派遣し、道路復旧工事などに従事しているところです。倉敷市におきましても、6月に発生した大雨により農業施設や林地、道路に多くの被害が発生するなど、災害に対する備えの強化を図る必要があると考えています。このため、倉敷市では、大規模災害への防災・減災対策の指針となる、「(仮称)倉敷市国土強靭化地域計画」を本年夏頃の完成を目指して、策定を進めています。また、排水機場の新設・改修等の浸水対策事業や、ため池ハザードマップ作成事業を実施するとともに、自主防災組織の結成促進と活動の活性化を図り、総合防災訓練の実施などによって、市民の皆様とともに防災・減災に努めてまいりたいと考えています。
 
施設の耐震化につきましては、私の2期目の公約である小・中学校校舎の耐震化率100%を達成し、この3期目には、幼稚園・保育所や公民館などへの取組を進めることとしています。また、建築物耐震診断等助成事業や木造住宅耐震改修助成事業の助成件数を拡大し、さらに、空家等対策事業を推進していくことで災害に強いまちづくりを進めてまいります。
 
次に、地場産業の振興につきましては、昨年12月、連島ごぼうが、地域ブランドとして特産品を保護する国の地理的表示保護制度、いわゆる「GI保護制度」に、ごぼうとしては全国初の、また岡山県内初の登録という大変うれしいニュースがありました。倉敷市には、白桃、ピオーネ、マスカット・オブ・アレキサンドリア、スイートピー、金時人参などをはじめとした全国に誇る農林水産品があります。農業経営基盤の強化促進事業、新規就農サポートや耕作放棄地対策、高梁川流域圏域での連携した農林水産品のPR、ほ場整備や漁港整備に加え、新たに取り組む次世代施設園芸の振興を図る事業などによって農林水産業の活性化に努めてまいります。また、岡山県教育委員会の平成28年度調査で、倉敷市の公立学校の給食における岡山県産の食材使用状況は69.8パーセントと、早島町、和気町に続き、高い割合であることが発表されており、今後とも地産地消を推進してまいります。また、倉敷市や高梁川流域圏域の中小企業への商品開発、人材育成、経営相談、国内外への販路開拓に対する支援など、競争力強化につながる取組を進めてまいります。
 
このたび、国から、高梁川河口で施工していた水島港臨港道路「倉敷みなと大橋」を、3月25日に開通するとの連絡をいただきました。倉敷市最大の生産拠点である水島地区と物流拠点である玉島地区を往来する港湾貨物輸送の効率化を図ることを主な目的とされていますが、倉敷市にとって広域的な交通網の形成につながり、また、渋滞緩和など市民生活の利便性向上にもつながるものと期待しています。また、4月には、玉島ハーバーアイランドに全国トップクラスの取り扱い規模となる食料コンビナートを形成する3社の操業開始が予定されています。今後も、水島港への集荷を促進するためのインセンティブ制度の拡大、海外ポートセールスなどを実施し、更なる水島港・水島コンビナートの競争力強化を図ってまいります。また、企業の立地や設備投資、本社機能の移転等の促進に引き続き取り組むなど、新たな地域活力を創出してまいります。
 
移住定住施策についてでございますが、1月31日に総務省がまとめた平成28年の人口移動報告によると、東京圏では転入者が転出者を上回る転入超過が21年連続となりました。倉敷市では、127人の転入超過となっているものの、高梁川流域圏域では、半数の市町が転出超過となっています。こうした状況を踏まえ、今後も流域市町と連携した施策に、積極的に取り組んでまいります。倉敷市では、平成28年度から新たに「くらしき移住定住推進室」を設置し、流域市町への移住希望者も利用できるお試し住宅の戸数拡大や、東京・大阪での移住相談会への出展回数拡大、移住受入コーディネーターの配置、お試し住宅利用者への相談体制の充実などを実施してまいりました。平成28年度では1月末までの移住相談件数が181件と、平成27年度の93件のほぼ倍となっています。また、お試し住宅の利用者は平成27年10月の開設以降、平成28年度1月末時点で延べ208人となり、移住された方が21人、そのうち倉敷市には14人となっています。平成29年度は、これらの取組に加えて、新たに市内の移住者受入希望地域のイメージビデオ作成や移住体験ツアーなどを実施してまいります。また、新たに、大学生等の倉敷市への定着促進を図るため、卒業後に倉敷市で居住・就業する学生で、一定の要件を満たす場合に返還を一部免除する奨学金制度を創設します。婚活推進事業につきましては、平成27年7月から倉敷結婚相談所の利用対象者を流域市町の在住・在勤者にも拡大し、圏域内で結婚を希望される方々への支援を行っています。平成28年度では、12月末時点で901人の利用登録があり15組が成婚に至りました。今後も婚活イベントや婚活セミナーを実施し、結婚を希望される方への後押しを行ってまいります。
 
第4に「世界に向けて発信するまち」の実現に向けてでございます。G7倉敷教育大臣会合開催地として、また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、世界から人々が訪れるまちを目指します。このため、海外からのお客様の受入環境を整備するほか、町並みや文化、特産品などの地域資源を世界に向けて発信してまいります。
 
倉敷市は、我が国を代表する文化財を有し、市内各地域においても特色ある歴史文化が受け継がれています。こうした歴史文化の豊かな環境を守り、育み、生かす取組を市全域で展開し、地域の魅力と活力の向上につなげていくことを目的として、昨年12月に「倉敷市歴史文化基本構想」を策定しました。そして、繊維産業を軸とした歴史・文化ストーリーをテーマとする日本遺産認定に向けての取組を進めているところです。また、1月27日には、倉敷らしい貴重な町並みを守り育てることを支援する倉敷市まちづくり基金の助成対象に、新たに大橋家住宅の長屋門と玉島地区の旧回船問屋の改修2件を採択し、これまでの助成対象は23件となりました。今月には、国民宿舎良寛荘をお茶の文化が根付く玉島地区の観光拠点施設として、また、鷲羽山レストハウスを外国人観光客や高齢者が利用しやすい施設として改修する2件の事業が、国の地方創生拠点整備交付金の対象に選定されました。また、児島地区では、児島ジーンズストリートを訪れる増加している観光客の利便性向上を目的として、新たに公衆トイレやベンチを設置します。倉敷美観地区におきましては、倉敷館の長寿命化、バリアフリー化などの改修を進めるとともに、芸文館では、設備の老朽化に対応した改修を実施してまいります。伝統的建造物群保存地区・伝統美観保存地区修景・町並み保存事業や、路地の魅力創出、電線類地中化事業にも引き続き取り組み、これまでの歴史文化を生かしたまちづくりを進めるとともに、これからも積極的に国内外へ発信してまいります。倉敷市を訪れる外国人観光客数につきましては、宿泊者数が平成25年に21,478人、平成26年に25,219人、平成27年には46,948人と2年間で倍以上に増加しており、2020年東京オリンピック・パラリンピックでのニュージーランドのホストタウンに登録された好機も生かし、今後もさらに多くの方々に訪れていただけるような取組を進めてまいります。また、外国人観光客の利便性向上や周遊促進を図るために、平成27年度から整備しているフリーWi-Fi接続ポイントは、倉敷地区、児島地区でサービスを開始しており、平成29年度には、倉敷地区のエリアを拡大することに加え、新たに玉島地区へも整備することとしています。また、流域市町においても高梁市、笠岡市で本市のシステムを利用したサービスを開始しており、今後、さらにエリアを拡大していく予定としています。
 
第5に「みらいに責任を果たすまち」の実現に向けてでございます。豊かな自然環境を守るとともに、暮らしの向上につながる都市機能の充実・強化を図ります。また、市民の皆様とともに考え行動する協働のまちづくりや行財政改革を引き続き推進し、さらに高梁川流域自治体との絆の強化を図ることで、地域の未来に責任を果たしてまいります。
 
まず、環境にやさしいまちづくりを進めるため、地球温暖化対策の普及啓発活動となる「(仮称)倉敷市COOL CHOICEプロジェクト」を新たに実施してまいります。また、県内初となる水素ステーションをこの春に供用開始する予定としており、これに伴い、燃料電池自動車を公用車として導入するとともに、これまでの電気自動車やプラグインハイブリッド自動車に加え、新たに燃料電池自動車の導入補助を実施してまいります。また、温室効果ガス削減に向けた認定エコハウスの普及や住宅用太陽光発電システム等の導入促進につきましては、新たに、電力の自給自足や防災・減災の備えにつながるリチウムイオン蓄電池の導入補助や、中小企業への省エネ設備導入促進事業を実施してまいります。さらに、屋内水泳センターの熱源を、下水熱などを利用したシステムに改修するほか、道路照明や学校屋内運動場照明、市役所庁舎照明のLED化にも取り組んでまいります。
 
次に、都市機能の充実・強化では、倉敷地区におきまして、この3月末までに倉敷駅前東土地区画整理事業が完了いたします。また、同地区内で整備を進めておりました市営駅東駐車場も完成し、平成29年4月1日から供用開始の運びとなります。引き続き倉敷駅周辺の中心市街地の魅力再生・都市機能の充実を図るため、(仮称)倉敷駅前東公園の整備を行い、さらに、倉敷駅周辺第二土地区画整理事業の取組を進めるとともに、新たに阿知3丁目東地区市街地再開発事業への支援を行ってまいります。倉敷駅付近連続立体交差事業につきましては、現在策定中の倉敷駅周辺総合整備計画を踏まえ、事業主体である岡山県や関係機関との協議を進めてまいります。児島地区におきましては、安全安心や快適なまちづくりのため、児島駅前第2公園の再整備など児島駅前地区都市再生整備計画を推進してまいります。倉敷地区西部と水島・玉島地区間の交通の円滑化を図るため、西阿知矢柄線の整備を進めてまいります。また、市民の皆様の利便性向上を図るため、住民票の写し・印鑑登録証明書をコンビニエンスストアで受け取れるように、平成30年1月の実施に向けて準備を進めてまいります。
 
協働のまちづくりの推進につきまして、市長就任時から実施しております、市内の各地域の会場で、私が直接、市民の皆様と自由な意見交換を行う市民ふれあいトークは、この1月28日で68回目となりました。これまでに延べ約4,500人もの多くの方々に参加していただき、活発に意見交換していただいておりますことは、この地域を良くしたいと思っている方や、この地域に住んでいることを誇りに思っている方が大勢おられることの表れと考えており、これからも、市民の皆様とともに、協働のまちづくりを進めてまいります。
 
行財政改革の推進として、私は、3期目の公約として4年間で負債総額200億円以上の削減を掲げています。平成29年度末の臨時財政対策債を除く、特別会計・企業会計を含む全会計の市債残高につきましては、このたびの当初予算編成時点で約100億円削減できる見込みであり、引き続き将来世代への負担軽減につながる財政健全化への取組を進めてまいります。また、中庄団地建設事業、新共同調理場整備事業、白楽町ごみ焼却処理場等解体・整備事業、汚泥再生処理センター整備事業、新ごみ処理施設整備事業など老朽化した施設の更新・集約化や、道路ストック・公園施設・農業用排水機場などの長寿命化対策に計画的に取り組むことにより、財政負担の軽減・平準化を図ってまいります。
 
高梁川流域連携中枢都市圏の取組につきましては、1月12日に流域の商工団体など民間関係機関等で構成する高梁川流域連携中枢都市圏ビジョン懇談会を、また、1月31日には、流域7市3町の市長・町長で構成する高梁川流域自治体連携推進協議会を開催し、連携事業のこれまでの成果やビジョン案の改訂につきまして御意見をいただきました。現在、全国には17の連携中枢都市圏が形成され、また、今後さらに15圏域が形成を目指していますが、高梁川流域連携中枢都市圏の取組は、先駆的で活発であるとの評価をいただいており、全国からの行政機関や地方議会の視察が大変多くなっています。取り組む事業数は、平成27年度48事業、28年度63事業、そして29年度は65事業に拡大しており、高梁川流域連盟で培ってきた「親和協力の精神」のもと、圏域全体の総合力向上に引き続き取り組んでまいります。
 
最後に、これら5つの政策に基づく事業に加えて、郷土への愛着と誇りを高め、明るい未来への思いを込めた50周年を記念する事業として、冒頭に述べた記念式典のほか、原動機付自転車オリジナルナンバープレート導入事業や全国将棋サミット2017開催事業、3月18日に劇場公開される下津井を舞台としたアニメ映画「ひるね姫」とタイアップした観光プロモーション事業、第75期将棋名人戦倉敷対局などに加えまして、市民の皆様から御提案をいただいた、小学校等で育てた綿花からジーンズを製作する倉敷コットンプロジェクト事業、子ども達が宇宙や科学技術への関心を高めることを目的とする国際宇宙ステーション交信事業、『コーラス「ふるさと」を歌う』事業など様々な事業を実施してまいります。
 
今、倉敷市は、冒頭にも申し上げましたとおり、今後の人口減少社会に立ち向かい、活力ある社会の実現に向けて将来を見据えたまちづくりを進めていく重要な時期を迎えていると考えています。私は、こうした倉敷市の3市合併から50周年という節目の年に、市政を担わせていただくことに、皆様への感謝とともに、大きな責任を感じています。倉敷市の特産品である竹は、節目をつくりながら成長し、節目があることで強い風や雪の重みに耐える強さとしなやかさを持つといわれています。これまでの倉敷市の成長は、様々な課題を乗り越えてこられた先人の皆様方の努力の賜物であり、これからの倉敷市の成長は、節目となる今を生きる私たちの努力で決まってまいります。市民の皆様からの思いを託されました市議会の皆様方、地域を支える市民の皆様方と一緒になって、これから先の60周年、70周年、さらには100周年に向けて確かな歩みを進め、倉敷市のより良い未来を築いてまいりたいと考えておりますので、今後とも、皆様方の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げたいと存じます。