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鉱染鉱床    〔戻る〕

有用元素を溶かしこんだ熱水が岩石にしみ込み,そこで熱水中の有用金属が沈殿するもの。この鉱石は熱水で変質した岩石中に散点状に硫化物などの鉱石鉱物が含まれ,比較的,鉱石の品位は低いが,大規模な鉱床が多い(例:世界最大のチリの銅鉱床群(斑岩銅鉱床),アメリカ ネバダ州のカーリン型金鉱床など)。



チリ チュキカマタ鉱山の斑岩銅鉱床の銅鉱石
チュキカマタ鉱山は世界最大の銅鉱床。チリには斑岩銅鉱床が多く存在し,世界最大の銅産出国である。その銅鉱石はこのように変質した花こう岩質の岩石中に細かい黄銅鉱が点在するものである(顕微鏡的な微細な黄銅鉱が多く存在する部分は黒ずんでいる。画像の中央〜上部)。この花こう岩質の岩石は変質作用でアルカリ長石が多くなっている。
緑色部分は後の風化作用で黄銅鉱が分解し,その銅分が塩化銅であるアタカマイトとなったもの(アタカマイトは,黄銅鉱の銅分とこの付近の乾燥地域の塩湖の塩分が反応してできたもの)。
このほかに斑岩銅鉱床の鉱石には鱗片状の輝水鉛鉱や微細な自然金を伴う場合もあり,モリブデン資源や金資源としても重要である。



鉱脈鉱床のそばの岩石(母岩)が鉱染鉱床となったもの
山口県佐々並鉱山
これは高温生成の銅鉱脈のそばの花こう閃緑岩が高温の熱水変質を受け,それ自体がまばらに黄銅鉱(Cp)が散点する銅鉱石になったもの。もとの花こう岩閃緑岩中の黒雲母や角閃石は緑黒色の緑泥石となり,長石類は微細な白雲母(セリサイト)などになっている。なお,この佐々並鉱山の鉱床自体は小規模だった。



南薩型金鉱床と呼ばれる金鉱床から産した金鉱石
鹿児島県赤石鉱山
岩石に金や硫黄分に富む酸性の熱水が作用し,その岩石自体が硬い石英質の金鉱石となったもので,全体に0.001〜0.01mmくらいの微細な金粒がわずかに含まれ,金品位は鉱石1tあたり金が1〜5g程度含まれるもの。南薩型金鉱床からはほかに自然硫黄・硫砒銅鉱・ルソン銅鉱を産し,かなり硫黄分が多く,かつ,スコロド石などの砒酸塩鉱物・明礬石類などの硫酸塩鉱物も多産することから,かなり酸化的な条件で形成されたと考えられる。




鉱染鉱床の鉱石の偏光反射顕微鏡写真
鉱染鉱床の鉱石は肉眼では塊状で,特定の組織が見られない場合が多いが,このように顕微鏡下では幅1mm以下の微細な鉱脈が頻繁に見られ,その中に鉱石鉱物が集中していることが少なくない。