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風化    〔戻る〕

岩石が気候(気温の変化や,雨など)の作用 で, 崩れたり,軟化したり,溶けたり,色が変わったりすることをいいます。
岩石を構成している鉱物は,種類により,あるいは同 じ種類の鉱物でも結晶方位により,気温の変化による熱膨張率が異なります。また,鉱物は水の作用で徐々に分解していく傾向があります。これらの原因で鉱物 同士の結合がゆるんだりして岩石が徐々に風化していきます。

砂岩の風化

砂岩が風化している様子
塊状の砂岩を割った様子。外部は雨水がしみ込んで褐色に風化しているが,雨水がしみ込んでいない内部は灰色で新鮮である。


野外で岩石が風化している様子
雨水がしみ込み風化した部分は軟化して土になりかかっている。まだ風化があまり進んでいない部分は固いため,こぶのようにとび出ている。



花こう岩の風化

花こう岩の風化(@→A→B の順に風化していく)
@全く風化していないもので堅い。
Aやや風化したもの。黒雲母が分解し,その鉄分がしみ出して茶色になり,ややもろくなっている。
B風化が進んだもの。造岩鉱物がバラバラに分離して長石や黒雲母がかなり粘土化している(まさ土)。
花こう岩の風化

花こう岩の方状節理と風化による侵食地形(模式図)
花こう岩のマグマが約700℃で固まり,その後,冷えるときに体積がわ ずかに収縮することで,花こう岩には直方体方向の規則的な割れ目(方状節理)ができる。 その方状節 理に沿っ て雨水や地下水がしみ込み,図の左から右のように風化が進むと,風化に耐えた部分(大きな岩塊)が山の斜面に点在した侵食地形となる(右下写真)。花こう 岩地域には,このような地形がよく見られ,大雨が降ると,まさ土と岩塊が混ざったものが急激に流れ下る「土石流」が発生することがある。

たまねぎ状風化

たまねぎ状風化
塊状の岩石の表面が,昼に直射日光で温まって膨張し,夜に冷えて収縮し,それが繰り返されることで,表面から球面状(同心円状)の割れ目ができ,はがれる ように割れ ていく 風化。


水 による風 化作用の過程

水による風化作用は,岩石中の 鉱物が化学的に分解して進行します。
例えば,花こう岩や流紋岩に多く含まれるカリウムを主成分とするカリ長石は長年,雨水にさらされると,下の反応で分解して粘土状の白雲母になり,さらに粘 土状のカオリンになります。

長石(カリ長石)が雨水で白雲母と石英に変化する反応
3KAlSi3O8    +   2H+   → KAl2(AlSi3O10)(OH)2   + 6SiO2  + 2K+
カリ長石     雨水中の水素イオン    白雲母      ケイ酸分  カリウムイオン
                                    ※ケイ酸分とカリウムイオンは流れ去る

さらに白雲母が雨水でカオリンに変化する反応
2KAl2(AlSi3O10)(OH)2   +  2H+  +  3H2O → 3Al2Si2O5(OH)  +  2K+
   白雲母     雨水中の水素イオン   雨水     カオリン    カリウムイオン
                                             ※カリウムイオンは流れ去る

※カオリンはAl2Si2O5(OH)4と いう化学組成を持つ鉱物(カオリナイト,ハロイサイト,ナクライトなどの多形)の総称。
塊状のカオリン電子顕微鏡で見たカオリン
カ オリナイト
肉眼では白い土状(左)だが,電子顕微鏡では6角板状の結晶形態が認められる(右)。