片麻岩中のケイ線石(けいせんせき) sillimanite   [戻る]

ケイ線石は泥岩や砂岩から変成してできた片麻岩に含まれることがある(泥岩・砂岩はアルミニウムに富むので変成作用でケイ線石やざくろ石のようなアルミニウムに富む鉱物ができやすい)。明瞭な白色柱状の斑状変晶をなすこともあるが,微細な針状〜繊維状集合体をなすことも多く,これはルーペで絹糸光沢が見られる。長石類・石英・黒雲母・ざくろ石(アルマンディン)などと共生していることが多い。また石英をほとんど含まない片麻岩中にコランダムと密接に共生していることもある。
ケイ線石を含む片麻岩は約700℃程度の高温生成のもので,白雲母をあまり含まない。このケイ線石は白雲母が高温で石英の成分と下式のように反応してできることが多いと考えられる。
KAl2(AlSi3O10)(OH)2/白雲母 + SiO2/石英の成分 →  Al2O(SiO4)/ケイ線石 + KAlSi3O8/アルカリ長石 + H2O/水分



片麻岩中のケイ線石
これは数mmに達する灰白色短柱状の斑状変晶として見られるケイ線石(写真中央やや上部)。それ以外の部分は,片麻岩としてはやや細粒で,細かい石英,長石類,黒雲母,ケイ線石からなる。


片麻岩中のケイ線石

これは褐黒色の黒雲母に密接に伴う細かい針状の集合体。片麻岩中ではケイ線石はこのような状態で黒雲母に密接に伴うことが少なくない。

――――――――――――
片麻岩中のケイ線石 sillimanite
色/白色・灰色
透明度/半透明〜ほとんど不透明
光沢/柱状のものは鈍いガラス光沢・針状〜繊維状集合体のものは絹糸光沢
硬さ/ナイフと同じくらい〜やや硬い
形態/柱状,針状〜繊維状集合体
へき開/伸び方向に完全
成分/アルミニウムのケイ酸塩:Al2O(SiO4)


ケイ線石と同じ成分(アルミニウムのケイ酸塩:Al2O(SiO4))の鉱物には紅柱石・藍晶石があり,これら3つの鉱物は,主に変成岩中に見られ,互いに結晶構造(原子配列)が異なる。同じ成分であるにもかかわらず,異なった結晶構造になるのは,下図のようにできるときの温度や圧力が異なるからである。
接触変成岩であるホルンフェルスは広域変成岩よりも低圧条件でできるので,紅柱石を含む場合が多い。広域変成岩は接触変成岩よりもやや圧力がかかった状態(数1000気圧以上)でできるので,ケイ線石や藍晶石が含まれることが多い。なお,広域変成岩のうちで片麻岩はやや高温でできるので藍晶石よりもケイ線石を含むことが多い。



紅柱石・ケイ線石・藍晶石が生成する圧力・温度の範囲