石英(せきえい) quartz  [戻る]

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火成岩では石英はケイ長質岩(流紋岩・花こう岩)によく含まれる。時に中性岩である閃緑岩にも少量含まれることがある。
火成岩中の石英は灰色のことが少なくない。この着色原因は,火成岩自身に微量に含まれるウラン,トリウムなどの放射性元素からでる放射線(γ線)により,石英中の微量のアルミニウム原子の電子状態が変わることで光の吸収を起こしているためである。この石英はできた当初は無色だが,長い年月にわたるγ線の影響で徐々に光の吸収部が増え,無色→淡灰色→灰→黒色になっていく。一般に,古い時代の火成岩ほどその中の石英は暗色で,特に大陸の10億年以上前の花こう岩中の石英は黒色に近い(街中で石材として用いられている花こう岩は大陸地域の約10億〜25億年前のもので,日本の花こう岩(数1000万〜約1億年)に比べ非常に古く,石英の色は黒に近いものが多い)。

花こう岩中の石英の色



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堆積岩では砂岩・泥岩に多く含まれ,その砂粒・泥粒のかなりの割合は石英粒である。これは石英が普通の造岩鉱物の中では比較的多く存在し,かつ,化学的に安定で分解しにくいため,砂や泥になりやすいためである。また,チャートの主要な構成鉱物で,緻密塊状をなす。
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変成岩では黒色片岩・ケイ質変岩・白雲母片岩・紅れん石片岩・片麻岩に多く含まれ,苦鉄質の組成を持つ緑色片岩や青色片岩にも多少含まれることが多い。また各種の変成岩中には白っぽい石英脈として頻繁に見られる。
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色/灰色・無色〜白色など
透明度/透明〜やや透明
光沢/ガラス光沢
硬さ/ナイフより硬い
岩石中で見られる形態/粒状など
へき開/認めにくい
成分/二酸化ケイ素:SiO2

石英

かたまり状の石英/純度の高いかたまり状のものがまとまって多量に 産する場合,ガラ スの原料とされる。
  
水晶

岩石の空洞で結晶した石英(水晶)/結晶外形が現れた石英を水晶と いう。

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火成岩中の石英の例     



流紋岩中の石英の例

ガラス光沢のある灰色粒状で,約1億年前の流紋岩中のもの。数100万年前程度の時代の新しい流紋岩中のものは無色に近いものが多い(※ただし,無色のものでも石基の色が透けて灰色に見える場合もあるので観察には注意がいる)。

なお,やや風化した流紋岩を割ったときには,6角両錐状の結晶面(3角形)が見られることがある。その結晶面は破面とは異なり光沢が鈍い(右写真)。


流紋岩中の石英の例
やや風化した流紋岩を割ったときにしばしば見られるもので,6角両錐状の自形(結晶形)が現れたもの。その結晶面は3角形で,左写真のような破面よりも光沢が鈍い。


花こう岩中の石英の例
ガラス光沢のある灰色粒状(矢印先)。淡紅色部はアルカリ長石,白色部は斜長石,黒色部は黒雲母。
これは約8000万年前の花こう岩中のもので灰色。1300万〜1400万年前の西南日本外帯の時代の新しい花こう岩中のものは淡い灰色のことが多い。



花こう岩中の石英の例
約17億年前のフィンランド(安定陸塊)の花こう岩中の石英。このような時代の古い花こう岩中のものは,ほどんど黒色で黒雲母と紛らわしい。
街中でビルなどの装飾石材として用いられている花こう岩は,このような大陸地域(安定陸塊)の約10億〜25億年前のものが多い。日本のものに比べ粗粒で,全体に派手な模様や濃い赤色・褐色系のものが多く,その中の石英はこれと同じく黒に近いものが多い。


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堆積岩中の石英の例     



砂岩中の石英の例
石英はガラス光沢のある灰白色で,砂岩を構成する砂粒のかなりの割合を占める。白く濁ったように見える粒子は長石類。黒い部分は磁鉄鉱・やや分解した角閃石類など。
この写真のように風化していない砂岩の割れ口では1粒ごとの石英の粒の形は分からないことが多く,その場合,右のように偏光顕微鏡で観察するとわかりやすい。
なお,泥岩中の石英は1/16mm以下でルーペでは認めがたい。



砂岩中の石英の例(偏光顕微鏡写真 クロスニコル)
丸みを帯びた石英の砂粒が多く含まれる砂岩。堆積後,地層中で長い地質時代を経て,石英の砂粒の間に自生鉱物である白雲母ができている。


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変成岩中の石英の例     



結晶片岩(黒色片岩)中の石英の例
白色部が石英と長石類の密に混ざった集合体。このような結晶片岩中の石英や長石類は微細なため,互いに区別しにくいが,長石類はルーペで観察するとチカチカと劈開面が反射するので,かろうじて石英と区別できる。また,石英は長石類よりもやや透明度が高い。
なお,上写真の白い部分には方解石が混ざっているところがあるがこれは針先で簡単に傷つき,塩酸で発泡して溶ける。
黒っぽい部分は石墨や白雲母。


片麻岩中の石英の例
ガラス光沢のあるわずかに灰色がかった透明粒状。やや透明度の低い白色部は長石類,黒色部は黒雲母。
一般に片麻岩は左の結晶片岩よりも造岩鉱物の粒度が粗いので,その造岩鉱物は同定しやすい。