流紋岩中の石英(せきえい) quartz  [戻る]

流紋岩中に斑晶として含まれる石英は多くの場合,無色や灰色で,ガラス光沢があり透明感がある(長石類に比べ透明感がある)。普通は1〜6mm程度で丸みを帯びた粒をなし,時に6角両錐状の自形のものもある。火砕流堆積物中のものは火砕流中で砕かれて破片状をなすことが多い。

灰色のものの着色原因は,流紋岩自身に微量に含まれるウラン,トリウムなどの放射性元素からでる放射線(γ線)により,石英中の微量のアルミニウム原子の電子状態が変わることで光の吸収を起こしているためである。この石英はできた当初は無色だが,長い年月にわたるγ線の影響で徐々に光の吸収部が増え,無色→淡灰色→灰になっていく。なお,流紋岩には数億年前より古いものはほとんどないため,花こう岩のように含まれる石英の色が黒色のことはほとんどない。

なお,石基には顕微鏡的な大きさで長石類などと共に多く含まれている。



流紋岩中の石英の例
/ガラス光沢・透明感のある灰色粒状。中央のものはやや大粒のものだが,右上のように1mm程度の小粒の場合も多い。
灰色の石英の斑晶は数1000万年前より古い流紋岩に見られ,数100万年前以降の新しい流紋岩中の石英の斑晶は無色のものが多い(※ただし,無色のものでも石基の色が透けて灰色に見える場合もある)。

なお,やや風化した流紋岩を割ったときには,6角両錐状の結晶面(3角形)が見られることがある。その結晶面は破面とは異なり光沢が鈍い(右写真)。


流紋岩中の石英の例/やや風化した流紋岩を割ったときにしばしば見られるもので,6角両錐状の自形(結晶形)が現れたもの。その結晶面は3角形で,左写真のような破面よりも光沢が鈍い。

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流紋岩中の石英 quartz
色/無色〜灰色
透明度/透明〜半透明。
光沢/ガラス光沢。ただし6角両錐状(自形)の結晶面は光沢が鈍い。
硬さ/ナイフより硬い
形態/粒状。時に6角両錐状(自形)。
へき開/不明瞭(認められない)
成分/二酸化ケイ素:SiO2