輝石類(きせきるい) pyroxene  [戻る]

輝石にはいろいろな種類があり,主に火成岩中には普通輝石や頑火輝石が含まれ,変成岩中には透輝石,灰鉄輝石,ひすい輝石などが含まれる。
頑火輝石は斜方晶系に属し斜方輝石と呼ばれ,普通輝石・透輝石・灰鉄輝石・ひすい輝石などは単斜晶系に属し単斜輝石と呼ばれる。

頑火輝石(斜方輝石)] [普通輝石〜透輝石] [灰鉄輝石] [エジリン(エジリン輝石)] [ひすい輝石


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頑火輝石(がんかきせき)  enstatite 斜方輝石  
色/くすんだ緑〜褐色(安山岩・閃緑岩・はんれい岩中のものはやや鉄に富み,赤みを帯びる場合が少なくない),白色(変成作用を受けたかんらん岩中のものは鉄に極めて乏しく白色に近い)
透明度/半透明〜ほとんど不透明
光沢/鈍いガラス光沢。(変成作用を受けたかんらん岩中のものは絹糸光沢・真珠光沢)
硬さ/ナイフと同じくらい
岩石中で見られる形態/小さな粒状・不定形
へき開/明瞭〜不明瞭
成分/マグネシウム・鉄のケイ酸塩:(Mg,Fe)(SiO3)


安山岩中の頑火輝石の例
赤みのある褐色のもの。安山岩中のものは玄武岩中のもの(右)より鉄に富む場合が多く,このように少し赤みを帯びる場合が多い。



玄武岩中の頑火輝石の例
褐色味の強いオリーブ色で透明感がある。左の安山岩中のものよりも鉄に乏しく赤みがあまりない。



閃緑岩中の頑火輝石の例
赤みのある暗灰褐色不規則粒状で,やや鈍いガラス光沢がある。閃緑岩中のものはかなり鉄に富むことがあり,フェロシライトという種類のものがある。これもフェロシライトに近い頑火輝石で,色が暗く赤みを帯びる。写真はへき開で割れた平滑なへき開面で光を反射してやや白っぽく見えている。
白〜灰色の部分は斜長石。



かんらん岩中の頑火輝石の例(青矢印先)
このかんらん岩は地下深部での急激なマグマの活動により,上部マントルのかんらん岩が破片として地表に放出されたもの。頑火輝石は暗オリーブ緑色粒状で,黄緑色透明粒状のかんらん石,少量のCrを含みエメラルドグリーンの透輝石(黄矢印先),黒色のクロムスピネル(赤矢印先)とともに等粒状組織をなす。



かんらん岩中の頑火輝石の例
火成作用でマグマから直接できたものではなく,変成作用でできたもので,鉄に乏しく,灰白色で,劈開が発達し,鈍い真珠光沢がある。このようなものはしばしば1〜数cmに達し,放射状集合体をなすものもある。
周囲の灰緑色で緻密な部分は鉄に乏しいかんらん石。



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普通輝石(ふつうきせき)augite 〜 透輝石(とうきせき)diopside
※普通輝石は火成岩以外にはほとんど含まれず,変成岩ではまれに高温でできたグラニュライトに含まれる程度。
※透輝石は火成岩以外に,エクロジャイト・角閃石片岩・ドロマイトスカルンなどの変成岩にもよく含まれる。
※火成岩中の単斜輝石と呼ばれるものは主にこの普通輝石・透輝石である。
色/緑褐黒色・濃緑色・黒色。(透輝石はやや色が淡く,くすんだ緑色・エメラルド緑色(→少量のCrを含むもの。かんらん岩中)) ※いずれも頑火輝石のように赤みを帯びることはまれ。
透明度/ほとんど不透明(透輝石はやや透明感があることが多い)。
光沢/鈍いガラス光沢
硬さ/ナイフと同じくらい
岩石中で見られる形態/短柱状・粒状・不定形
へき開/明瞭(普通輝石よりも透輝石の方が劈開が発達し,完全な劈開を示すこともある)。
成分/普通輝石はカルシウム・マグネシウム・鉄などのケイ酸塩:(Ca,Mg,Fe)(SiO3),透輝石は鉄に乏しく,カルシウム・マグネシウムに富む:CaMg(SiO3)2 ※両者は固溶体をなす。



安山岩中の普通輝石の例
緑黒色で透明感に乏しい。



玄武岩中の普通輝石の例
緑黒色で透明感に乏しい。左矢印のものは明瞭な菱形の自形の断面が見えている。


はんれい岩中の普通輝石の例
緑褐黒色不定形で,透明感に乏しく,不規則な粒状をなし,やや鈍いガラス光沢がある。中央上部の粒子は明瞭なへき開でやや平滑な破面を示している。それ以外の粒子はへき開以外の方向で割れて不平坦な断口を示している。
白い部分はカルシウムに富む斜長石。


かんらん岩中の透輝石の例
かんらん岩には普通輝石よりも透輝石が含まれることが多い。これは少量のクロム(0.5%程度のCr2O3)を含み鮮緑色を呈するもので,「クロム透輝石」と呼ばれる。
周囲の緑灰色の部分はかんらん石。


エクロジャイト中の透輝石の例

緑色集合体の部分。エクロジャイトには,この透輝石以外に,ややNa,Alに富むオンファス輝石という輝石が含まれることがある(肉眼では識別困難)。
赤い部分はややMgを含むアルマンディン(鉄ばんざくろ石)。
※エクロジャイト中の輝石類は生成後の弱い変成作用で黒っぽい角閃石類に変質していることがある。

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灰鉄輝石(かいてつきせき) hedenbergite
主にスカルンから産出し,マグネシウムを含んで透輝石との固溶体のものも多い。
色/暗緑〜緑黒色(マグネシウムに富むものはやや緑色味が強い)
透明度/ほとんど不透明
光沢/鈍いガラス光沢
硬さ/ナイフよりもやや軟らかい
岩石中で見られる形態/粗大な柱状・針状・緻密塊状
へき開/明瞭〜完全
成分/カルシウム・鉄のケイ酸塩:CaFe(SiO3)2   ※鉄の代わりにマグネシウムを含み,それが増えると透輝石に移り変わる。
灰鉄輝石
スカルン中の灰鉄輝石の例

粗大な緑黒色柱状。灰鉄輝石は代表的なスカルン鉱物。

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エジリン(エジリン輝石) aegrine
やや酸化的な条件でできた,アルミニウムに乏しく,アルカリ元素に富む岩石に産する。特に閃長岩に含まれることが多い。日本には少なく,カナダ・ロシアに大規模な産地がある。
色/黒〜緑黒色
透明度/不透明
光沢/鈍いガラス光沢。針状集合体はフェルトのような光沢がある。
硬さ/ナイフよりもやや軟らかい
岩石中で見られる形態/針状・それらの緻密な不規則集合体。他の輝石類よりも細長く伸びた形態が多い。
へき開/完全
成分/ナトリウム・鉄のケイ酸塩:NaFe(SiO3)2  ※鉄は3価で,やや酸化的な条件でできる。なお,アルミニウムに富む鉱物(コランダムなど)とはあまり共生しない。


閃長岩中のエジリンの例

黒色針状集合体で,白色部は斜長石。

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ひすい輝石(ひすいきせき)  jadeite
高圧でできた変成岩(主に青色片岩)に含まれ,この場合,肉眼で認められないような微小なものが多い。なお,蛇紋岩中に割れにくい塊状で産することがあり,これは「ひすい」(硬玉)という宝石になる。火成岩中に造岩鉱物として含まれることはない。
色/白色・緑色・灰色,まれに紫色(微量のTiを含む)
透明度/半透明
光沢/鈍いガラス光沢
硬さ/ナイフより少し硬い
岩石中で見られる形態/細柱状など
へき開/完全
成分/ナトリウム・アルミニウムのケイ酸塩:NaAl(SiO3)2
ひすい輝石
青色片岩中のひすい輝石の例(偏光顕微鏡写真)
岩石中に造岩鉱物として含まれるひすい輝石は肉眼で認められないような微小なものが多い。
ひすい輝石
蛇紋岩中から産した塊状のひすい輝石

白色・緑色,まれに紫色で,割れにくく,「ひすい」(硬玉)と呼ばれる宝石になる。