輝石類にはいろいろな種類があり,はんれい岩には普通輝石や頑火輝石が含まれる(普通輝石は単斜晶系に属し単斜輝石といい,頑火輝石は斜方晶系に属し斜方輝石という)。
なお,普通角閃石とは,輝石類がわずかに光を通し,透明感があり,かつ,へき開が劣ることで区別できる。かんらん石とは,輝石類が透明度が劣り,かつ,暗色で,へき開が少し認められることで区別できる。
はんれい岩中に含まれる普通輝石は緑黒色〜緑褐黒色,頑火輝石はそれより赤みのある暗褐色・暗灰褐色,および暗緑褐色。いずれもこれらの輝石類は不規則な粒状のことが多く,時に短柱状をなす。小粒のものは互いに肉眼で識別できないことが多い。
※はんれい岩には輝石類のうちで,単斜輝石だけを含むもの,斜方輝石だけを含むもの,両者を共に含むものなどがある。
※はんれい岩や閃緑岩中の斜方輝石には時にマグネシウムよりもやや鉄に富み,赤みのある暗色のものがある。これは頑火輝石ではなくフェロシライトといい,やや珍しい輝石である。ただし,マグネシウムが非常に少ないフェロシライト(FeSiO3)は超高圧条件で生成し,通常の岩石には含まれない。
※はんれい岩中の輝石類は変成作用や熱水作用で変質して灰緑色〜暗緑色でやや軟らかいアクチノせん石などに変質している場合もある。海洋プレート中層部のはんれい岩が付加体になったものは変はんれい岩といい,輝石類はほとんどアクチノせん石などに変質している。また同時に斜長石はクリーム色緻密なぶどう石などに変質している。
はんれい岩中の普通輝石の例 緑褐黒色不定形で,透明感に乏しく,不規則な粒状をなし,やや鈍いガラス光沢がある。中央上部の粒子は明瞭なへき開でやや平滑な破面を示している。それ以外の粒子はへき開以外の方向で割れて不平坦な断口を示している。 白い部分はカルシウムに富む斜長石。 |
はんれい岩中の頑火輝石の例 暗灰褐色不規則粒状で,やや鈍いガラス光沢がある。はんれい岩中の頑火輝石はかなり鉄に富むことがあり,フェロシライトという種類のものがある。これもフェロシライトに近い頑火輝石で,わずかに赤みを帯び,かつ色が暗い。 白〜灰色の部分はカルシウムに富む斜長石。 このはんれい岩は著量の1mm程度の粒状の磁鉄鉱を伴い,ひもにつるした磁石が吸い寄せられる。 |
はんれい岩中の頑火輝石(がんかきせき) enstatite
色/赤みを帯びた暗褐色・暗灰褐色,および暗緑褐色
透明度/ほとんど不透明〜半透明
光沢/やや鈍いガラス光沢
硬さ/ナイフと同じくらい。
形態/不定形粒状。時に短柱状。
へき開/明瞭〜不明瞭
成分/マグネシウム・鉄のケイ酸塩:(Mg,Fe)(SiO3)