かんらん岩中のかんらん石は,他の火成岩中のものよりも,鉄に乏しくマグネシウムに富み,褐色を帯びることは少なく,黄緑色や,くすんだ緑色のことが多い。
南アフリカのブッシュフェルト地域のような大陸の層状貫入岩体のかんらん岩中のかんらん石はマグマから初生的に結晶化したもので,10億年以上前にできたものである。くすんだ黄緑色塊状で,堅固なかんらん岩の主成分をなす。
また,プレート同士の衝突帯で地表へ上昇し,大きな岩体をなすかんらん岩(造山帯のかんらん岩)を構成するものは,圧力で変成し,緻密なくすんだ緑色で,一つ一つのかんらん石の粒子は肉眼では識別できないことが多い(下左写真)。また,地表へ上昇する際に蛇紋岩に変化しかかったものは暗色になり軟化している。それがその後,花こう岩などのマグマの熱で変成し脱水することで,かんらん岩に戻っている場合もある(この変成作用でできたかんらん岩中のかんらん石は非常に鉄に乏しく,淡い灰緑色のことが多く,しばしば白色で真珠光沢のある鱗片状の滑石,淡緑色・淡褐色・灰色で繊維状や粗大結晶をなす輝石類を伴う)。
一方,地下深所の上部マントルの玄武岩マグマに取り込まれ,ゼノリス(捕獲岩)として地表にもたらされたかんらん岩(ゼノリスとしてのかんらん岩)を構成するかんらん石は,美しい透明な黄緑色粒状の集合体で,上部マントルに存在していたときの等粒状組織が残っている。暗オリーブ緑色の頑火輝石やエメラルドグリーンの透輝石の粒と組み合っている(下右写真)。
造山帯のかんらん岩を構成するかんらん石の例(視野のほぼ全体のくすんだ黄緑色部分。なお,白矢印先の黒粒はクロムスピネル) 写真のものは大部分がかんらん石からなるダナイトと呼ばれる かんらん岩。このかんらん石はくすんだ黄緑色で緻密。圧力にによる変成作用を受け細粒化しており,個々の粒子は肉眼で識別できない。 矢印の先の黒粒はクロムスピネル。 |
ゼノリスとしてのかんらん岩中のかんらん石(黄緑色透明の粒状集合体をなす。矢印先は輝石類やクロムスピネル) 美しい透明な黄緑色粒状の集合体(等粒状組織)で,暗オリーブ緑色の頑火輝石(青矢印)・エメラルドグリーンの透輝石(黄矢印)の粒と組み合っている。赤矢印先の亜金属光沢のある黒い粒はクロムスピネル。 上部マントルに存在していたときの等粒状組織が残っている。 |
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層状貫入岩体や造山帯のかんらん岩中のかんらん石 色/くすんだ緑色・くすんだ黄緑色。やや蛇紋岩化を受けたものは蛇紋石・微粒の磁鉄鉱が混ざり暗緑色 |
ゼノリスとしてのかんらん岩中のかんらん石 色/美しい透明な黄緑色 |