流紋岩中の長石類(ちょうせきるい) feldspar  [戻る]

流紋岩中に長石類は多く含まれ,カリウム・ナトリウムを主成分とするアルカリ長石と,ナトリウム・カルシウムを主成分とする斜長石とがある。
アルカリ長石は火成岩ではケイ長質岩である流紋岩や花こう岩に多く含まれ,その他の火成岩中には少ない。
一方,斜長石は他の多くの岩石にも含まれ,地殻では最も多く存在する鉱物である。火成岩に含まれる斜長石については,流紋岩・花こう岩(ケイ長質岩)中のものはややナトリウムに富み,苦鉄質岩(玄武岩・はんれい岩)中のものはややカルシウムに富む。

長石類は石基にも顕微鏡的な大きさで豊富に含まれる。

流紋岩中の長石類と石英

流紋岩中の長石類の斑晶の例

このように流紋岩中のアルカリ長石と斜長石はいずれも白く半透明で,互いに区別できないことが多い。灰色でガラス光沢の強いのは石英。
なお,このように含まれる長石類や石英などの造岩鉱物の斑晶の多くが不定形(破片状)の場合,火砕流堆積物としての流紋岩と判断できる。


流紋岩中のアルカリ長石の斑晶(赤矢印先)と斜長石の斑晶(青矢印先)の例

流紋岩の場合でも花こう岩の場合と同様に,アルカリ長石がこのようにわずかに赤味かがることがあり,白い斜長石と区別可能なことがある。この場合,アルカリ長石は斜長石よりも透明度が低い。
このような流紋岩は斑晶がやや粗いことが多い。
なお,黒矢印先は石英,黒い小さな斑晶は黒雲母と普通角閃石。


流紋岩中のアルカリ長石の斑晶の例(矢印先)

流紋岩にはかなり透明感のある白いサニディン(ハリ長石)と呼ばれるアルカリ長石が含まれることがある。写真のような大粒のサニディンの斑晶を含む流紋岩には斜長石の斑晶はあまり多く含まれない場合が多い。
なお,中央下部の灰色透明な粒は石英。

流紋岩中のアルカリ長石の斑晶の例(矢印先)

まれにアルカリ長石には水で濡らすと青白い光を発するものがある(宝石名で「月長石」,「ムーンストーン」という)。この場合,そのように光らない白い斜長石とは区別可能。
この青白い光は,高温でできたアルカリ長石が冷える時,Kの多い部分とNaの多い部分に厚さ0.0001mm程度の極く薄い層状に分かれ(離溶),その微細な層構造での光の干渉によるものである。
なお,黒い粒は黒雲母。
流紋岩中のアルカリ長石(あるかりちょうせき) alkali-feldspar
色/白色だが,花こう岩中のものよりもやや透明感がある場合が多い。斜長石とは区別しにくい。なお,時にわずかに赤みがかったり,まれに青白く光るもの(月長石)があり,この場合,斜長石と区別できる。
透明度/半透明〜不透明に近い。透明感に富むものはマグマ中で急冷してできたサニディン(はり長石)と呼ばれるアルカリ長石の一種のことが多い。
光沢/やや鈍いガラス光沢。
硬さ/ナイフと同じくらい。
形態/長方形の自形〜半自形。あるいは不定形粒状。不定形のものは火砕流堆積物としての流紋岩中に多く見られる(上左写真)。
へき開/1方向に完全,もう1方向に明瞭。
成分/カリウム・ナトリウムを主とするアルミノケイ酸塩:(K,Na)AlSi3O8
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流紋岩中の斜長石(しゃちょうせき) plagioclase
色/白色。
透明度/半透明〜ほとんど不透明
光沢/やや鈍いガラス光沢
硬さ/ナイフと同じくらい。
形態/長方形の自形〜半自形。あるいは不定形粒状。不定形のものは火砕流堆積物としての流紋岩中に多く見られる(上左写真)。
へき開/1方向に完全,もう1方向に明瞭。完全なへき開面にはアルバイト式双晶による平行な条線が見られることがあり,この場合,アルカリ長石と区別できる。
成分/ナトリウム・カルシウムを主とするアルミノケイ酸塩:(Na,Ca)(Al,Si)4O8