角閃石類(かくせんせきるい) amphibole  [戻る]

角閃石には多くの種類があり,細長い形で,縦に割れやすい。火成岩中に含まれているのは普通角閃石というものが多く,変成岩中に含まれているのは, ほかにアクチノ閃石や藍閃石など,多くの種類がある。

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普通角閃石(ふつうかくせんせき)  hornblende
火成岩のほか,高温でできた変成岩(角閃石片岩,片麻岩)に含まれる。
色/黒色(時にわずかに褐色,緑色を帯びる)
透明度/不透明
光沢/樹脂〜ガラス光沢
硬さ/ナイフと同じくらい
岩石中で見られる形態/柱状・不定形
へき開/完全
成分/カルシウム・マグネシウム・鉄・アルミニウムなどのケイ酸塩:Ca2(Mg,Fe,Al)5(AlSi7O22)(OH,F)2



安山岩中の普通角閃石の例
黒い柱状結晶。左のものは柱状結晶の縦に沿って割れたものでへき開面が反射している。右下のものものは柱状結晶を輪切りにするように割れたもので,ひずんだ菱形に近い6角形の断面が見えており,これはへき開以外の方向に割れた面で,光沢が鈍い。
この普通角閃石の周囲はわずかにオパサイト化し,暗赤色の薄い縁が見られる。
安山岩のような火山岩中のものはわずかに褐味を帯びたものが多く,緑色を帯びたものはほとんどない。





閃緑岩中の普通角閃石の例(青矢印先)
不規則な形の黒い他形のもの。
同じく黒い黒雲母(白矢印先)と密接に共生している。黒雲母に比べ,へき開面の平滑さが劣り,へき開は粒子の伸びに沿って2方向にある。また,黒雲母より硬度が高く,針先で傷つきにくい。
白〜灰色の部分は斜長石。



はんれい岩中の普通角閃石の例
黒い柱状の部分。へき開面はガラス光沢や樹脂光沢が強い。輝石類よりもへき開が完全(2方向。へき開の角度は約120°)で,一層,黒色であることで区別できる。
周囲の白〜灰色の部分は斜長石。



花こう岩中の普通角閃石の例(矢印先)
自形の柱状結晶(短冊状)をなす。へき開に沿って割れた断面はこのような短冊状に見えることが多い。その割れ口の伸び方向にはわずかに平行な直線状のすじが見えている。似たような色の黒雲母はこのような短冊状になることはあまりなく,へき開の割れ口の光沢が一層強く,針先で薄くはげるように割れ,硬度が低く簡単に傷つく。
なお,花こう岩中の普通角閃石はわずかに緑味を帯びたものが多く,褐色を帯びたものはほとんどない。
写真中のその他の黒い鉱物は黒雲母,白い部分は斜長石,淡褐色の部分はアルカリ長石,灰色の部分は石英。




角閃石片岩中の普通角閃石の例
黒っぽく,細粗まちまち。柱状でへき開面がキラキラ光る。これはほぼ普通角閃石だけからなる角閃石片岩。



角閃石片岩中の普通角閃石の例
淡褐色の微細な粒〜不明瞭な細柱状の斜灰れん石と密に共生した,青緑黒色の不明瞭な細柱状の普通角閃石。


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アクチノ閃石(あくちのせんせき)(別名:透緑閃石・緑閃石・陽起石)   actinolite
主に低温でできた結晶片岩(緑色片岩など)に含まれる。また岩石中の普通角閃石や輝石類が変質してできることがある。
なお,アクチノ閃石はマグマから初生的にできることはない(火成岩中に初成的な造岩鉱物としては含まれない)。
色/くすんだ緑色
透明度/半透明〜ほとんど不透明
光沢/ガラス光沢(緑色片岩中のものは微細で光沢はわかりにくい)
硬さ/ナイフと同じくらい
岩石中で見られる形態/針状〜短い繊維状。緻密な集合体。
へき開/完全
成分/カルシウム・マグネシウム・鉄のケイ酸塩:Ca2(Mg,Fe)5(Si8O22)(OH)2  ※鉄に乏しいものは透角閃石(tremolite)という。

アクチノ閃石
粗い柱状集合体のアクチノ閃石。このようなものは通常の岩石には含まれず,蛇紋岩と結晶片岩との境にできる滑石鉱床から産する。
アクチノ閃石
細かいアクチノ閃石や緑泥石を多く含み,緑色を呈する結晶片岩(緑色片岩)。下はその拡大写真。緻密な集合体だが,わずかに針状の構造が分かる。





変質したはんれい岩(変はんれい岩)中のアクチノせん石(Ac)
海洋底のプレートの中層部を構成していたはんれい岩がプレートの動 き (1年に数cmの動き)で移動し,プレート同士の衝突帯(造山帯)で地下に沈み込み,弱い変成作用を受けたものは「変はんれい岩」と呼ばれ,もとの造岩鉱物は変質していることが多い。
元のはんれい岩中の輝石類はアクチノ閃石に変質し(Ac),これは暗緑色緻密な繊維状〜針状集合体で針先で崩れやすく,しばしば,より軟らかい暗緑色鱗片状の緑泥石を伴う。
一方,斜長石(Pl)は,緻密で乳白色〜にごった緑灰色のぶどう石・斜灰れん石などに変質している。
なお,変はんれい岩には写真中央のような白い細脈(Ph ぶどう石や斜灰れん石など)が見られることも多い。

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藍閃石(らんせんせき)  glaucophane
高圧でできた結晶片岩(主に青色片岩)に含まれ,それ以外ではほとんど見られない。特徴的な青〜藍色で水で濡らすと鮮やか。しばしば高圧鉱物であるローソン石やあられ石,石英とひすい輝石の共生体を伴う。
成分中のAlは3価のFeに置き換えられ,Al<Feとなったものはリーベック閃石である。両者とも青っぽく,肉眼では区別しにくいことも多いが,Mgの多い藍閃石はやや淡色で,Feの多いリーベック閃石は暗色で黒っぽい。
藍閃石は高圧条件ででき,青色片岩以外にはほとんど産しないが,リーベック閃石は必ずしも高圧条件でできるものではなく,青色片岩以外に,アルカリに富む火成岩中にもエジリンやかすみ石などと共に含まれている。
色/青〜あい色
透明度/不透明
光沢/微細なため光沢は分かりにくい
硬さ/ナイフと同じくらいだが,微細なため分かりにくい
岩石中で見られる形態/微細な針状や繊維状
へき開/完全
成分/ナトリウム・マグネシウム・鉄・アルミニウムのケイ酸塩:Na2(Mg,Fe)3Al2(Si8O22)(OH)2



水に濡らした藍閃石片岩
藍閃石片岩は藍閃石を含むため,特徴的な青色だが,水に濡らすと一層,青色がはっきりする。淡褐色の部分は少しMg,Feを含む白雲母(フェンジャイト)


藍閃石片岩中の藍閃石の例
藍閃石は非常に微細なことが多く,高倍率のルーペでようやく針状や繊維状の細長い結晶が見える。これは片理面上の藍閃石で結晶は部分的に湾曲している。
乾いた状態で観察したもの。
黄緑色の粒は緑れん石。