紅柱石(こうちゅうせき) andalusite      [戻る]
ケイ線石(けいせんせき) sillimanite
藍晶石(らんしょうせき) kyanite

この3つの鉱物は,主に変成岩中に見られる。成分はいずれもアルミニウムのケイ酸塩(Al2O(SiO4)) だが,互いに結晶構造(原子の結びつき方)が異なる。同じ成分であるにも かかわらず,異なった結晶構造になるのは,それぞれできるときの温度や圧力が異なるからである。




紅柱石・ケイ線石・藍晶石が生成する圧力・温度の範囲


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紅柱石(こうちゅうせき)  andalusite
多くは白っぽい色で,泥質ホルンフェルス中にしばしば含まれる。しかし,軟らかい白い緻密な白雲母に変質していることが多い。
ペグマタイトに文字通り紅色で柱のような外観の濃桃色・赤色の柱状で産することがある。

色/白〜灰色。白雲母に変質すると白色不透明。変質していないものは赤〜褐色を帯びる。
透明度/白雲母に変質すると不透明。変質していないものはわずかに透明感がある。
光沢/白雲母に変質すると無光沢,あるいはわずかにチカチカ光る。変質していないものは鈍いガラス光沢。
硬さ/白雲母に変質するとナイフで簡単に傷つく。変質していないものはナイフよりも硬い。
形態/柱〜粒状。断面が正方形のマッチ軸のような柱状のこともある。
へき開/柱の伸び方向に平行に不明瞭
成分/アルミニウムのケイ酸塩 Al2O(SiO4)



紅柱石(白色の柱状や斑点状)を多く含んだ泥質ホルンフェルス
泥質ホルンフェルスには時に写真のように数mm〜1cm程度の目で見える大きさの紅柱石ができている。アルミニウムに富む泥岩が接触変成作用を受けるとできやすい。
写真のものもそうであるが,白色軟質の白雲母に変質していることが多い。


泥質ホルンフェルス中の紅柱石の例
紅柱石はアルミニウムに富む泥岩が接触変成作用を受けるとできやすい。
写真のホルンフェルスでは,上半分の泥質ホルンフェルス中には4角柱状の紅柱石ができているが,下半分の砂質ホルンフェルス中ではアルミニウムがやや乏しいため紅柱石はできていない。これは同じ500℃程度の接触変成作用でも,元の岩石の成分により,できる変成鉱物が異なる例
写真の左右10cm。



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ケイ線石(けいせんせき) sillimanite
高温でできた片麻岩や,まれにホルンフェルスに含まれる。時に白くきめ細かく軟らかい白雲母に変質していることがある。
ケイ線石はまれに安山岩や花こう岩中にふくまれるが,それはマグマから直接結晶化したものか不明である。

色/白色〜灰色
透明度/半透明〜ほとんど不透明
光沢/柱状のものは鈍いガラス光沢・針状〜繊維状集合体のものは絹糸光沢
硬さ/ナイフと同じくらい〜やや硬い
形態/柱状,針状〜繊維状集合体
へき開/伸び方向に完全
成分/アルミニウムのケイ酸塩:Al2O(SiO4)


片麻岩中のケイ線石の例
これは白っぽい斑点状〜短柱状をなすもの。通常は右のように細かい針状・繊維状をなすものが多い。

片麻岩中のケイ線石の例
このように黒雲母と密接に共生して,矢印先のような細かい針状集合体をなすことが多い。


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藍晶石(らんしょうせき)  kyanite
柱状で,高圧条件でできた結晶片岩中に見られる。時にエクロジャイトにも小さな柱状・粒状で含まれる。時に白くきめ細かく軟らかい白雲母やソーダ雲母に変質していることがある。

色/白色・灰色・青色
透明度/半透明
光沢/ガラス光沢
硬さ/結晶の伸びの方向ではナイフより軟らかく,それに直角の方向ではナイフより硬い
へき開/伸び方向に完全
岩石中で見られる形態/柱状・粒状
成分/アルミニウムのケイ酸塩:Al2O(SiO4)


結晶片岩(角閃石片岩)中の藍晶石の例
2cmに達する青色柱状をなし,白色の灰れん石,青黒色の普通角閃石を伴うもの。


結晶片岩(ケイ質片岩)中の藍晶石の例

1cm程度の青灰色柱状で白い石英に伴うもの。暗灰色で真珠光沢のあるものは白雲母。