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蛇紋岩(じゃもんがん)  serpentinite

蛇紋岩はかんらん岩が 地下深部で水分の作用を受けて変質してできる岩石で,直接マグマが冷えて固まってできた岩石ではない。しかし便宜上,火成岩の仲間と されている。

地球の表面を覆う十数枚のプレートと呼ばれる巨大な岩盤同士の衝突により,上部マントル(地下:数10km〜400km)のかんらん岩は部分的に水分の 供給を受けて蛇紋岩に変化する。その変化の1例は下の反応で表される(かんらん岩の主成分であるかんらん石が水で分解して,蛇紋石と ブルーサイトからなる 蛇紋岩 になる)。

2Mg2SiO4 + 3H2O → Mg3Si2O5(OH)4 + Mg(OH)2
かんらん石   水分     蛇紋石       ブルーサイト

(Mg:マグネシウム,Si:ケイ素,O:酸素,H:水素)

蛇紋岩のもとの,かんらん岩はマグネシウムに富むかんらん石や輝石類か らなり,堅く,密度が3.5g/cm3に 達する重い岩石で,上部マントル (地下数10km〜400kmの領域)に多く存在する。しかし,それが分解してできた蛇紋岩は軟らかく,可塑性に富み,もとのかんらん岩に比べ軽く な るため(密度が2.6g/cm3程度に下がる),地表付近へ固体のまま上昇する。

かんらん岩から蛇紋岩への変化:@→A→Bの順に 蛇紋岩に変化(顕微鏡写真)
かんらん岩の蛇紋岩への変化
@かんらん岩/かんらん石や輝石の粒が等粒状組織でぎっしりと集合して いる。
A蛇紋岩化しつつあるかんらん岩/かんらん岩のかんらん 石や輝石の粒の境界に沿って水分が作用し,蛇紋石などができつつある。
B完全に蛇紋岩になったもの/かんらん石や輝石はすっか り分解し,蛇紋石などに置き換わっている。黒いのは,もとのかんらん石や輝石中に含まれていた鉄分が 蛇紋岩化の際,酸化されて磁鉄鉱(Fe3O4)になったもの。


蛇紋岩
蛇紋岩/全体に暗緑色緻密で,色の淡い部分や白い部分な どが不規則に混ざっていることも多い。目に見えない無数の割れ目があり,ハンマーで軽く叩くとばらばらと不規則に割れやすい。その割れた面はすべす べして滑らかなことが多い。また,軟らかく,釘などで簡単に傷が付く。しばしば白っぽいアラレ石や水苦土石,クリソタイル(白石綿)などの鉱物が脈状をな して含まれる。
黒いものは微粒の磁鉄鉱を多く含み,ひもに吊るした磁石が吸いつけられる。

蛇紋岩の岩石カッターでの切断面/かんらん岩から蛇紋岩に変わる変質過程において,最初にできた緑黒色の蛇紋岩がいったん角れき状に破砕され,その間を色の淡い灰緑色の蛇紋岩が満たしている様子が分かる。このように蛇紋岩は破砕・変形作用を伴いながら形成される。したがって無数の割れ目があり,不規則に割れやすい。
緑黒色の部分には磁鉄鉱の微粒子が多く含まれ,ひもに吊るした磁石が吸いつけられる。


※蛇紋岩には無数の割れ目があるため,蛇紋岩地域の傾斜地では,大雨の時,その割れ目に雨水が入り,山崩れが起こることがある。


岡山県内の蛇紋岩について
 
岡山県内では北西部にまとまって分布している。クロムの鉱床を伴うこともある。
なお,花こう岩のマグマの熱で脱水し,「かんらん岩」になっているものもある(接触変成作用でできた「かんらん岩」)。
新見市の蛇紋岩
新 見市の蛇紋岩の露頭/蛇紋岩は県内では北西部の新見市に多く分布してい る。かんらん岩と一緒に見られることも多い。