【錫(すず)】(14族 元素記号:Sn)     [周期表へもどる]
 
<自 然界での産出>
 錫は単体では白色の金属光沢を有し,非常に軟らかい金属だが,天然では硬い酸化物 である錫石として産出することが多い。たいてい,花こう岩地域に鉱床が 存在 してい る。
 他の錫の鉱石鉱物には黄錫鉱(Cu2FeSnS4)などの硫化物があるが,錫石に比べ産出は少なく,資 源として の重要度は低い。
<用途>
 医薬品のチューブなどに利用されるほか,鉄よりさびにくいため,鉄製品にメッキするとさびにくい。これはブリキと呼ばれ缶詰の缶などに使われる。また,錫と鉛の合金 は ハンダと呼ばれ,電気工業の接点の溶接で重要である。

錫石砂錫
錫石  cassiterite
      
成分:酸化錫   SnO2

 最も重要な錫の鉱石鉱物で,ブラジル,マレーシア,中国,ボリビアなどから多産する。
 左は熱水鉱脈鉱床から産したもので,白色の石英に伴い褐黒色微粒集合体をなす。
 また,錫石は硬く密度が高いので,右のように錫鉱脈が風化してできた土壌中に黒色砂状で濃集することがある(砂錫)。
・左:兵庫県明延鉱山産,右:滋賀県田上産(砂錫)

黄錫鉱
黄錫鉱  stannite 
成分:銅,鉄,錫などの硫化物  Cu2FeSnS4
 わずかに緑味をおびた鋼灰色で,鈍い金属光沢がある。熱水鉱脈鉱床などから黄銅鉱などともに産出する。産出は珍しくないが,まとまって産することが少な く,錫鉱石としては重要度が低い。
・京都府大谷鉱山産
褐錫鉱
褐錫鉱  stannoidite 
成分:銅,鉄,錫などの硫化物  Cu8Fe3Sn2S12
 褐色で鈍い金属光沢がある。熱水鉱脈鉱床などから黄錫鉱,黄銅鉱などともに産出する。1969年に岡山県金生鉱山から世界で初めて報告された鉱物で,世 界的に多くの産地がある。しかし,まとまって産することが少なく,錫鉱石としては重要度が低い。
・兵庫県生野鉱山産