【マンガン】(7族 元素記号:Mn)     [周期表へもどる]
 
<自 然界での産出>
 堆積岩中に局部的に20〜30%という高濃度で含まれていることがあり,轟石(とどろきいし),軟マンガン鉱(MnO2), サイロメレーンという鉱物が採掘される。このような堆積鉱床は地下深部での熱や圧力の影響で変成している場合も多く,それらの鉱物が変成してできたバ ラ輝石,テフロ石,ハウスマン鉱(Mn3O4),緑マンガン(MnO)などとしても産する。
 また,熱水により周 囲の岩石からマンガンが濃縮され,菱マンガン鉱などからなる熱水鉱脈鉱床をなしていることもある。
 マンガンは通常の岩石中にも少量含まれているが,含有率が低いので利用されない。また,マンガンの含有率が高いものでもアラバンダ鉱(硫化マンガン: MnS)のように硫黄が含まれている鉱物はあまり鉱石とはならない。
<用途>
製鉄の際の脱硫黄剤,乾電池の材料などに利用される。また鉄−マンガン合金はキャタピラなど,強度が求められる鉄合金部品の材料として重要。

轟石
轟石(とどろきいし)   todorokite
成分:マンガンを主とする酸化物
(Mn,Ca)Mn3O7・ 2H2O

 世界で初めて日本で発見された世界新鉱物は100種ほどあるが,その中でこの轟石は一番早い発見(1934年)で,北海道の轟 鉱 山から発見された。
 轟石は黒く軟らかい炭のような外観で,現在では世界の多くのマンガンの堆積鉱床から発見されており,マンガンの含有率も高く,重要な鉱石の一つと なっ ている。深海底で現在でも生成されつつあるマンガンノジュールという団塊にも轟石が多く含まれている。
・青森県産
サイロメレーン
サイロメレーン  psilomelane

 成分:4価のマンガンを主とする酸化物
 複数のマンガン酸化物の集合体で,黒色で轟石に似ているが,それより硬く,わずかに青みを帯びる。重要なマンガン鉱石の1つで,たい積鉱床や,他のマン ガン鉱物の分解物として 多 く産する。
・滋賀県産
ばら輝石
バラ輝石(ロードン石) rhodonite

成分:ケイ酸マンガン MnSiO3
 桃色で,熱の影響で変成してできたマンガン鉱床に多産し,マンガン鉱石としては低品位。バ ラ輝石という名前だが輝石の仲間ではない。風化すると成分中の2価のマンガンが,4価に酸化して二酸化マンガンとなり,黒くなる。よく似た鉱物にパイロク スマンガン鉱という鉱物があるが,肉 眼では区別できない。美しいものは宝石とされることがある。
・京都府法花寺野産
テフロ石
テ フロ石(マンガンかんらん石)      tephroite 
  
成分:ケイ酸マンガン Mn2SiO4

 熱の影響で変成してできたマンガン鉱床に多産し,マンガンの含有率は高く,重要なマンガン鉱石。緑灰〜灰色でかたく,あまり肉眼的に特徴がないが,やや 重く感じる。風化すると成分中の2価のマンガンが,4価に酸化して二酸化マンガンとなり,黒くなる。
・京都府法花寺野産
菱マンガン鉱
菱マンガン鉱    rhodochrosite
   
成分:炭酸マンガン MnCO3
 桃色で,バラ輝石に似ているが,それより軟らかく,塩酸で二酸化炭素の泡を出して溶ける(堆積鉱床に産するものは汚い褐色の塊状)。マンガンの品位が高 く,重要なマンガン鉱石の1つで,鉱山用語では炭マンと呼ばれる(成分の炭酸マンガン からきた言葉)。風化すると成分中の2価のマンガンが,4価に酸化して二酸化マンガンとなり,黒くなる。
・北海道稲倉石鉱山産
二酸化マンガン
軟マンガン鉱   pyrolusite   
成分:二酸化マンガン MnO2
 マンガンの含有率が高く,堆積岩から黒褐〜黒色の塊状や層状で産するものは重要なマンガン鉱石となる。しかし,写真のようなものは「シノブ石」と呼ば れ, 岩石の割れ目に樹枝状の集合体をなしてよく見られるが,量が少なく,マンガン鉱石とはならない。
・香川県広島産