【銅(どう)】(11族 元素記号:Cu)    [周期表へもどる]
 
<自然界での産出>
 世界的に大部分は鉄・硫黄と化合した黄銅鉱として産し,資源としては黄銅鉱が最も重要。黄銅鉱以外の銅の鉱物としては自然銅・輝銅鉱・斑銅鉱・キューバ鉱・くじゃく石等があるが,産出がやや少なく,資源としての重要度はやや低い。現在,世界最大の銅産出国はチリで,隣国のペルーはそれに次ぐ。それらの銅鉱床は花こう岩質の岩石に銅を含む約300℃の熱水がしみ込んでできた斑岩銅鉱床で,鉱石には黄銅鉱の小さな粒がまばらに含まれているだけで銅含有率は0.2〜0.5%程度だが,1つの銅鉱床の鉱石の分布域は数km四方,深さ1kmに達し,銅埋蔵量は数10万〜数1000万tに達する。
 なお,銅は一般的な岩石では微量成分として玄武岩に多く含まれる傾向があり,特に海洋底に広く分布している玄武岩には銅含有率が0.05%に達するものがある。
<用途>
 銅はその導電性を生かして電線等の電気器具の部品,加工しやすい性質を生かしてさまざまな銅器・貨幣として用いられている。

 黄銅鉱
 黄銅鉱   chalcopyrite   
成分:銅と鉄の硫化物 CuFeS2
 金色(真鍮色)で黄鉄鉱に似ているが軟らかい。最も重要な銅の鉱石。 黄銅鉱自体は34.5%の銅を含むが,通常の銅鉱石は黄銅鉱が部分的にしか入っていないので銅含有率は1%未満である。
・岡山県倉敷市帯江鉱山産
世界の主要な銅資源:斑岩銅鉱床
 南アメリカ太平洋側は世界で最も銅に富む地域で,現在,世界最大の銅産出国はチリで,その北のペルーもそれに次ぐ銅産出国である。南アメリカ太平洋側には大規模な銅鉱床が多く,それらは花こう岩質の岩石に銅を含む約300℃の熱水がしみ込んでできた斑岩銅鉱床である。斑岩銅鉱床の銅鉱石は,熱水変質した花こう岩質の岩石に黄銅鉱の小さな粒がまばらに含まれているもので,銅含有率は0.2〜0.5%程度だが,1つの鉱床の鉱石の分布域は数km四方,深さ1kmに達し,採掘経費の安い露天掘りで採掘される。そして1つの鉱床での銅埋蔵量は数10万〜数1000万tに達し,その鉱石は日本にも多く輸入されている。



斑岩銅鉱床の銅鉱石/チリ チュキカマタ鉱山産(世界最大の銅鉱床)
これが世界的に採掘されている平均的な銅鉱石の姿である。熱水変質した花こう岩質の岩石に微細な黄銅鉱が点々と含まれ,その部分が黒ずんで見えるが,よく見ても含まれている黄銅鉱の粒は認めにくい(鉱石の銅含有率は0.2〜0.5%程度)。10円硬貨1枚分の銅(約4g)を得るのにこの鉱石約1kgを採掘して製錬する必要がある。
緑色の部分は風化作用で割れ目に沿い鉱石の銅分がしみ出してできたアタカマイト(塩化銅の鉱物:Cu2(OH)3Cl)。

斑銅鉱
は ん銅鉱     bornite
        
成分:銅と鉄の硫化物 Cu5FeS4
 金属光沢のある塊状,粒状で,新しい表面は褐色だが,古くなると表面が紫色に変化する。銅の含有率が高く(約63%),高品位の銅鉱石を形成することが あるが,産出が少ない。比較 的,軟らかい。
・兵庫県明延鉱山産
キューバ鉱
キュー バ鉱      cubanite
    
成分:銅と鉄の硫化物 CuFe2S3
 淡い金色の塊状で,最初,キューバで発見されたのでその名がある。黄銅鉱に似ているが,磁石につき,色が淡く,銅の含有率が低い。黄鉄鉱とも似ている が,それより軟らかく,磁石につく。
 合成が成功していない鉱物の1つ。
・岡山県井原市芳井町三原鉱山産
自然銅
 自然銅  native copper   
成分:単体の銅 Cu
 自然界に単体で産する銅で産出が少なく,板状をなす。銅鉱床の上部に産することが多い。
・秋田県尾去沢鉱山産

 くじゃく石      malachite       
成分:炭酸銅 Cu2(CO3)(OH)2
 緑色皮膜状で,黄銅鉱などが地下水などで分解し,その銅分が炭酸銅として再沈殿したもの。世界各地に広く産し,粉末にしてもきれいな緑色なので古来 から緑色顔料(岩絵具)として用いられている。銅鉱としては重要でないが,目立つ緑色なので,これがあると近くに銅鉱床があるという目印となる。
 銅製品が野外で錆びたときにできる「緑青」と同じ物質である。
・兵庫県明延鉱山産
珪孔雀石
ケイくじゃく石     chrysocolla 
     
成分:銅のケイ酸塩 CuSiO3・nH2O
 くじゃく石と似ているが,それより青みが強い。粉末はほとんど白色に近いので顔料とはならない。黄銅鉱などが地下水などで分解し,その銅分がケイ酸銅と して 再沈殿したもの。銅の含有率が低く,銅の鉱石にならないが,目立つ色なので,地表に銅鉱床があるという目印となる。
・岡山県倉敷市帯江鉱山産