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相関係 〔戻る〕
鉱物の同定には,鉱物そのものの肉眼的性質以外に,鉱物の相関係(共生関係)も役
立つことが多い。
例えば,苦土かんらん石(Mg2SiO4)と頑火
輝石(MgSiO3)はいずれもオリーブ色透明で硬さなども同じでほとんど区別できない。しかし,前者は石英
(SiO2)とは共生できず,後者はそれと共生できる。これにより,石英と密接に共生するオリーブ色の鉱物は苦土かんらん石ではないと消去法で判
定でき,鉱物の同定に役立つ。この理由は下の反応関係
で,通常の地殻の温度・圧力条件においては常に右辺が安定に存在するからである(左辺の苦土かんらん石+石英の組合せは不安定)。
Mg2SiO4
+ SiO2 → 2MgSiO3
苦土かんらん石 石英 頑火輝石
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他に互いに共生しない鉱物の例(左辺)には以下のような例などがある。以下の反応関
係は,通
常の地殻の温度・圧力条件において常に右辺が安定(左辺の組み合わせは存在しない)。
Mn2SiO4 + SiO2
→ 2MnSiO3
テフロ石
石英 ばら輝石
TiO2 + CaSiO3 →
CaTiSiO5
ルチル 珪灰石 くさび石
SnO2 + CaSiO3 →
CaSnSiO5
錫石 珪灰石 マラヤ石
CaTiO3 + SiO2
→ CaTiSiO5
ペロブスカイト 石英 くさび石
Al2O3 + SiO2
→ Al2SiO5
コランダム 石英 紅柱石・珪線石・藍晶石
2MgAl2O4 + 5SiO2
→ Mg2Al3(AlSi5O18)
スピネル 石英 菫青石
NaAlSiO4 + 2SiO2
→ NaAlSi3O8(高圧条件ではヒスイ輝石(NaAlSi2O6)と石英(SiO2)の組合せが安定)
かすみ石(ネフェリン) 石英 曹長石
Ag3SbS3 + Sb2S3
→ 3AgSbS2
濃紅銀鉱 輝安鉱 ミアルジル鉱
また,約200℃以下の限定された条件では右辺が安定な例。
Ag2S + Ag3SbS3 → Ag5SbS4
輝銀鉱
濃紅銀鉱 脆銀鉱
※なお,輝銀鉱は,輝安鉱やミアルジル鉱とはあらゆる温度圧力条件で共生できない。