自然史博物館のページへ] [友の会のページへ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

硬度  〔戻る〕

 肉眼鑑定では,引っかいたときの硬さで,「モース硬度」という基準が用いられている。これは 基準の硬さの鉱物(下写真)により,硬度を1〜10までの10段階に分けて,未知の鉱物との硬さの比較をして硬度を決めるものである。
※硬度はハンマーなどでたたいて割れやすいか,割れにくいかと いうことではない。例えばダイヤモンドはいくら硬度が高くても,落としたり,ハンマーなどでたたけばすぐに割れてしまう。


モース硬度の基準の鉱物
モース硬度の基準の鉱物(1〜10)。数値が大き いものほど硬い(硬度が高い)  
※硬度が8を超える鉱物は 非常にまれである。



 例えば未知の鉱物を,ほたる石(硬度4)に擦ってほたる石に傷がつき,逆にほたる石を未知の鉱物に擦って未知の鉱物にも傷がつけば,その未知の鉱物はほ たる石と同じ硬度で,4である(双方とも傷がつかなくても同じ)。
 また,別の例として,未知の鉱物をほたる石に擦ってほたる石に傷がつき,逆にほたる石を未知の鉱物に擦って未知の鉱物に傷がつかなかった時は,その未知 の鉱物は硬度が4より高い。次に未知の鉱物を更に硬度の高いりん灰石(硬度5)に擦ってりん灰石に傷がつかず,逆にりん灰石を未知の鉱物に擦って未知の鉱 物に傷がついた時,未知の鉱物は硬度が5より低い。この場合,未知の鉱物の硬度は4と5の間であり,これを硬度4.5と表現する(この4.5という表現は 硬度が4と5の間にあるという意味であり,厳密な数値としての4.5という意味ではない)。

モース硬度測定の傷

硬度を調べるため鉱物に付けた傷
細い線なので,注意して見ること。なお,こすりつけた方の 鉱物が軟らかい場合,その粉が線状に付着して傷のように見えることがあるので,必ず布で拭いて傷の有無を確認すること。
------------------------------------------------------------

 また,
極めて完全〜完全なへき開がある鉱物では,結晶方位や結 晶面によって硬度がかなり異なることが多い
 例えば角閃石の仲間は一般に細長く伸びた結晶であり,細長い面の伸び方向に平行にこすると硬度 は4.5〜5程度で軟らかく,それに直交する方向では硬度は5.5〜6程度である。また,それ以外の面の硬度は6〜6.5に達し,かなり硬い(下左図)。

角せん石の結晶方位による硬度の違い
角せん石の結晶方位による硬度の違い
角閃石類の結晶方位による硬度の違い
伸び方向には硬度が低く,それに交わる方向では硬度が高い。
柱状に伸びた細かい角閃石類が1方向に並んで集まってできている結晶片岩
左のような角閃石類の結晶
方位による硬度の違いにより,それが並んで集まってできている結晶片岩も方向によって硬軟があり,切断・研磨などの加工の難易がある(筋状の模様(線構造)に沿った方向では軟らかく加工しやすいが,それに直交する方向では硬く加工しにくい)。
雲母の仲間(白雲母)の結晶方位による硬度の違い
 また,雲母の仲間は一般に板状の結晶であり,広い板の面(薄くはがれる へき開面)では硬度 は2.5程度だが,それに直交する細長い面で伸び方向には硬度3,それに直角な方向では3〜3.5程度ある(下写真)。
白雲母の結晶方位による硬度の違い

全ての鉱物は結晶方位,結晶面により多少なりとも硬度が異なる。ダイヤモンドの粉を使ってダイ ヤモンドを研磨できるのも結晶方位によって多少,硬度が異なるからである。
---------------------------------------------------------------
なお,実際には,モース硬度の基準の鉱物は手に入りにくいものがあり,下記の代用となる身近な物質を活用しておよその硬度を知ることが行われている。

爪:硬度2〜2.5
銅貨:3〜3.5
軟鉄:4〜4.5
ガラス,縫い針,押ピン:5〜6
鋼ヤスリ:6.5

--------------------------------------------------------------
※モース硬度は基準の鉱物との硬さの比較による硬度だが,他にビッカース硬度というものもある。これはダイヤモンドで作った小さな四角錐を,物質の研磨 面に一定荷重で押しあてて,その際にできた凹みの大きさを測って決める硬度である。これは工業分野で広く用いられている硬度の精密な測定方法である。

※硬度は固溶体の成分で変化する。
例1)同じ原子配列の鉱物ではアルミニウム(Al
3+)に富むものの方が鉄(Fe3+)に富むものよりも硬度が高い。
・コランダム(Al2O3)の硬度:9 ・ 赤鉄鉱
(Fe2O3)の硬度:6
・灰ばんざくろ石(Ca3Al2Si3O12)の
硬度:7 ・ 灰鉄ざくろ石Ca3Fe2Si3O12)の硬度:6.5
例2)同じ原子配列の鉱物ではマグネシウム(Mg2+)に富むものの方がカルシウム(Ca2+)に富むものよりも硬度が高 い。
・菱苦土鉱(MgCO3)の硬度:4方解石(CaCO3)の硬度:3
・苦ばんざくろ石(Mg3Al2Si3O12)の
硬度:7.5 ・ 灰ばんざくろ石Ca3Al2Si3O12)の硬度:7