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比重  〔戻る〕
 
  これは4℃・1atmの水の密度がちょうど1g/cm3(g/cm3はCGS単位系)なので,ある鉱物がその何倍の密度があるかを示すものである。比重には単位は ないが,表示される数値は密度と同じである。例えばある鉱物の比重が2.7という意味は,それが4℃・1atmの水の2.7倍の密度があることを示す(密 度は2.7g/cm3と 表現する)。
 同じ体積でも比重の大きい鉱物ほど手に取った時に持ち重りがする。比重は鉱物によってさまざまだが,2.5〜5くらいのものが多い。タングステン,鉛,ビスマスなど原子量の大きな元素を含む鉱物は比重が大きい傾向がある。また,ダイヤモンドや藍晶石など高い圧力でできた鉱物は原子の種類に関わ らず原子配 列が密なので比重が大きい傾向がある。

 通常の鉱物の同定では比重がわかっている既知の鉱物の塊と,未知の鉱物の塊の持ち重りを比べ,比重の目安をつける。なお,同じ比重のものでも形態的に平 べったいものや 細長いものは,丸っこいものよりも感覚的に比重が小さく感じられるので注意を要する。また,比重が異なる鉱物がたくさん混ざった塊では比重の目安はつけに くい。


※比重は固溶体の成分で変化する。

例1)同じ原子配列の鉱物ではアルミニウム(Al3+)に富むものの方が鉄(Fe3+)に富 むものよりも比重が低い。
・コランダム(Al
2O3)の比重:4.0 ・ 赤鉄鉱(Fe2O3)の比 重:5.2
・灰
ばんざくろ石(Ca3Al2Si3O12)の比 重:3.5 ・ 灰鉄ざくろ石(Ca3Fe2Si3O12)の比重:3.8

例2)同じ原子配列の鉱物ではカルシウム(Ca
2+)に富むものの方が鉄(Fe2+)に富 むものよりも比重が低い。
・方解石(CaCO3)の比重:2.7 ・ 菱鉄鉱(FeCO3)の比重:4.0
・灰ばんざくろ石(Ca3Al2Si3O12)の比 重:3.5 ・ 鉄ばんざくろ石(Fe3Al2Si3O12)の比 重:4.3

方鉛鉱と石英の比重
同じ重さの方鉛鉱と石英
同じ重さでも,方鉛鉱(硫化鉛:PbS)は石英(二酸化ケイ素:SiO2) よりも比重が大きいので体積が小さい。
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アルカリ長石と白雲母の比重

うすっぺらな白雲母は薄くて軽く,比重は小さく感じるが,アルカリ長石や石英(比重2.7)よりも比重が大きい。
形態的に平 べったいものや 細長いものは,丸っこいものよりも感覚的に比重が小さく感じられるので注意を要する。
比重の測定

ビー カー,水,秤などを使った比重の測定

 比重は大まかではあるが,ビーカー・水・秤・細い糸を使い,鉱物の塊の重さと体積から求められる場合がある。


@ 鉱物の重さを量る(W(g))
A 水を汲んだビーカーを秤に載せ,その重さを量る(W(g))
B @の鉱物を細い糸に吊し,Aのビーカーの水中に,ビーカーの底に つけることなく完全に浸け,その重さを量る(W(g))。
※浮力が体積の測定となる(体積(cm): W−W)。

∴鉱物の比重=W/(
− W 
  
※密度としてはg/
cmの単位が付く(CGS単位系)。

不純物をほとんど含まない鉱物の塊はまれで,この方法で比重を小数 点第 1位まで正確に求められることは少ない。実際には鉱物やその他の物質の比重(密度)の大部分は,X線回折で得られた結晶構造のデータ(単位 格子(単 位胞)の体積,組成式数),アボガドロ数,化学式量から計算されている。

(計算式)
比重(密度:g/cm)=
[(1×10nm÷ (単位格子の体積(nm)×アボガドロ数:6.02×1023)] ×[化学式量×組成式数]

※(1×10nm= 1cm
※単位格子の体積はunit cell volumeとも呼ばれ,Xと標記されている(単位はnm)。
※化学式量:鉱物の化学式に相当する質量数をその構成原子の原子量で計算したもの。例えば石英(SiO2)の化学式量 は,構成原子の原子量がSi=28.1,O=16.0なので,SiO2=28.1+16.0×2=60.1となる。
※組成式数:単位格子中に,その鉱物の化学式に相当する原子の集合がいくつ含まれているかを表したもので,Z と標記されている。例えば石英の組成式数は3である。こ れはケイ素原子1個と酸素原子2個からなる化学式に相当する原子の集合(SiO2)が単位格子中に3ペア含まれることを 表している。