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内部反射 (クロスニコルで観察)   [戻る]

鉱石鉱物の中で,濃紅銀鉱・淡紅銀鉱・辰砂・石黄・鶏冠石・錫石・ルチルなど,反射率が低い鉱物は,クロスニコルで観察すると,研磨面で反射せずに入射した光が,内部の割れ目などで乱反射し,それが内部からの透過光として見えることがある。これを内部反射という。内部反射はクロスニコルの状態で光源の光を強くし,かつ,下方ニコル(ポーラライザー)を回して視野を暗めにするとわかりやすい。
内部反射の色は褐色系のものが最も多く,次いで淡黄〜黄色・赤色系が多く,それ以外のものは少ない。


鉱石鉱物の内部反射の色の例

褐色系 鉄の多い閃亜鉛鉱,錫石(時に黄色),クロム苦土鉱,錫石(時に淡黄色),ルチル,鋭錐石(時に青色),板チタン石,褐鉄鉱(時に赤色)など。
※褐色系の内部反射を示す鉱物でも粒子が細かい場合は黄色系の色の内部反射として見える。
淡黄〜黄色 石黄,自然硫黄(淡黄),テルル石,角銀鉱(古い研磨面では灰色がかる),錫石(時に褐色),鉄に乏しい閃亜鉛鉱など。
赤系 辰砂,濃紅銀鉱−淡紅銀鉱系鉱物,輝安銀鉱,鶏冠石,ゲチェル石,褐鉄鉱(時に褐色)など。
青系 鋭錐石(時に褐色)など。例は少ない。


※内部反射の色は平行ニコル下での反射色とは補色の関係にある場合が少なくない(例:平行ニコル下で青みを帯びた反射色を示す赤鉄鉱・濃紅銀鉱・淡紅銀鉱は,それと補色の関係にある赤色の内部反射を示す)。

※内部反射の色は同じ鉱物でも固溶成分によって異なる。例えば閃亜鉛鉱は鉄含有率が1%未満のものは淡黄〜黄色の内部反射を示し,鉄含有率が約1〜10%のものは褐色の内部反射を示し,鉄を約10%以上含むものは時に弱い暗褐色の内部反射を示す程度(内部反射がないことも多い)である。

※内部反射の色は,同じ鉱物でも,粒子の大きいものは濃く,粒子の細かいものは淡い。

※不透明鉱物であっても,酸化鉱物はわずかながら光を通すものが多いため,硫化鉱物よりも内部反射を示すものが多い。

※肉眼鑑定で黒色の条痕を示すものは内部反射が無いことが多く,黒色以外の条痕を示すものは内部反射があることが多い。

※石英,方解石,重晶石,長石類,輝石類などの通常の造岩鉱物や脈石鉱物は無〜白色,緑色などの内部反射を示すが,近傍の鉱物の色で,褐色や藍色などに色づいて見える場合が多い。これらの鉱物については内部反射の観察はあまり参考にならない。



鉄の含有率が1%未満の閃亜鉛鉱(Sp)の内部反射
淡黄〜白に近い。光源の光が弱くてもわかる。
Qz:石英
熱水鉱脈鉱床中/兵庫県朝日鉱山



鉄の含有率が数%の閃亜鉛鉱(Sp)の内部反射
褐色〜赤褐色。光源の光が弱いとわかりにくい。なお,鉄を約10%以上含むものは内部反射を示さないことも多い。
Qz:石英
熱水鉱脈鉱床中/ペルー ウチュクチャクア鉱山



濃紅銀鉱(Pra)の内部反射
赤〜朱色。粒子が粗い時は深紅,粒子が小さいときはオレンジに近い朱色。Sb→As置換体の淡紅銀鉱も同じ内部反射を示す。濃紅銀鉱の多形のパイロスティルフィンや淡紅銀鉱の多形のザンソコナイトの内部反射は黄〜褐黄色。
Py:黄鉄鉱,Sp:閃亜鉛鉱,Qz:石英
熱水鉱脈鉱床中/ペルー ウチュクチャクア鉱山



輝安銀鉱(Ply)の内部反射
暗赤。小粒のものは認めやすいが,大粒のものは光源の光を強くするとようやく分かる程度。よく似たピアース鉱(多量の銅鉱物と共生する)は内部反射がない。
Qz:石英

浅熱水鉱脈鉱床中/鹿児島県菱刈鉱山 山田鉱床

角銀鉱(Cha)の内部反射
灰黄。角銀鉱は透明度が高いので脈石鉱物と紛らわしい。塩化銀なので時間がたつと単体の銀を遊離して暗色になる傾向がある。そのため,古い研磨面では内部反射が暗灰色がかっている。
Au:自然金,Goe:褐鉄鉱(内部反射:赤褐色),Qz:石英
浅熱水鉱脈鉱床/北海道歌登鉱山

錫石(Cas)の内部反射
黄褐色。錫石はこれより暗色の内部反射(赤褐色,暗褐色)を示すことも多い。
Po:磁硫鉄鉱,Qz:石英
熱水鉱脈鉱床/鹿児島県錫山鉱山