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反射多色性（平行ニコルで観察）　　　［戻る］


　等軸晶系以外の鉱物は光学的に異方体であり，偏光を反射させ，ステージを回転させると多少にかかわらず明るさや色が変化する（下図のように，１回転につき２回ずつ同じ色が現れる）。これを反射多色性という。


チタン鉄鉱（Im）の反射多色性（ステージを１回転させると２回ずつ同じ色が現れる）
Cpx：透輝石−灰鉄輝石系の単斜輝石


　反射多色性の色の変化の度合いは，「非常に強い」，「強い」，「明瞭」，「普通」，「弱い」，「非常に弱い」がある。反射多色性の程度，および，その色は同定の有力な手掛かりとなる。しかし，鉱石鉱物は７割程度のものが灰色系の無彩色に近い色で，反射多色性とはいうものの色が特徴となるものは比較的少なく，むしろ明るさが変化して見える場合が多い。
　また，「普通」以下の反射多色性は注意しないとわからない。「弱い」は注意していてもわかりにくく「なし」とされることもあり，さらに「非常に弱い」はほとんどわからないので「なし」とされることが多い。

※異方体の鉱物でも光軸に沿った結晶方位では反射多色性は認められない。

反射多色性は，単独の粒子よりも，結晶方位の異なる複数の粒子が集合している方が，その粒子を境とするコントラストによって認めやすくなる。	赤鉄鉱(視野のほぼ全体）の反射多色性 双晶境界でのコントラストで反射多色性がはっきりわかる。 角閃石片岩中／愛媛県肉渕産
反射多色性が「非常に強い」や「強い」の同種の鉱物の粒子が集まっているとき，ステージを回転させなくても粒ごとに色が違って見え，あたかも別種の鉱物の集合体に見えるので，ステージを回転させるなどしてよく観察する必要がある。	コベリンの反射多色性　 視野全体がコベリンの板状結晶の集合体で，粒子ごとに結晶方位が異なり，灰や青色（一部，やや紫色がかる）などに見える。これはあたかも別種の鉱物の集まりに見えるが，ステージを回転させると灰→青，青→灰といった色の変化で同じコベリンと分かる。 黒鉱鉱床中／秋田県小坂鉱山産
錫石やルチルのような複屈折量が大きい鉱物（透過の偏光顕微鏡で高い干渉色を示す）は反射多色性が「明瞭」〜「強い」で，比較的わかりやすい（灰〜明灰色を示す）。 脈石鉱物である炭酸塩鉱物（方解石や苦灰石など）も複屈折量が大きいので，反射多色性が強い。	方解石（視野のほぼ全体）の反射多色性 方解石は透過の偏光顕微鏡観察で，複屈折量が大きく（干渉色が高い），反射偏光顕微鏡下でも反射多色性，および，異方性が強い。上図で線状に見えるのは双晶をなしているためである。 スカルン中／岡山県布賀産

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反射多色性の程度

非常に強い：コベリン（青灰〜濃青），リッカード鉱（濃桃〜紫色〜灰青），バレリー鉱（暗橙褐色〜褐灰色），マッキーノ鉱（暗褐色〜クリーム色）など。※これに該当する鉱物はかなり少ないが，反面，決定的な特徴でもある。
コベリンの反射多色性 視野全体がコベリンの板状結晶の集合体で，粒子ごとに結晶方位が異なり，灰や青色（一部，やや紫色がかる）などに見える。これはあたかも別種の鉱物の集まりに見えるが，ステージを回転させると灰→青，青→灰といった色の変化で同じコベリンと分かる。 黒鉱鉱床中／秋田県小坂鉱山産	モースン鉱（Maw）の反射多色性 結晶方位の異なる微粒子がモザイク状に集合しており，ステージを回さなくても結晶粒子ごとに橙色・黄色・黄灰色のモザイク状に色が違って見える。ステージを回すと黄灰→橙など，色の変化が著しい。 Cp：石英，Qz：石英 熱水鉱脈鉱床中／兵庫県多田鉱山産
リッカード鉱（Rc）の反射多色性 数粒の結晶方位の異なる粒子がモザイク状に集合し，ステージを回さなくても濃桃・紫色・灰青色のモザイク状に見える。ステージを回すと著しく色が変化する。 Te：自然テルル，Qz：石英 浅熱水鉱脈鉱床中／北海道手稲鉱山産

・強い：輝蒼鉛鉱（青灰白〜灰色），輝安鉱（青灰白〜灰色），輝水鉛鉱（青灰白〜灰色），赤鉄鉱（青灰白〜灰色）など。

輝蒼鉛鉱（Bis）の反射多色性 この輝蒼鉛鉱は複数の粒子がモザイク状に集合しており，その境界で反射多色性がはっきり判る。 Qz:石英 熱水鉱脈鉱床中／兵庫県生野鉱山産

・明瞭：磁硫鉄鉱，硫砒鉄鉱，キューバ鉱，チタン鉄鉱，鉄マンガン重石，錫石など。

磁硫鉄鉱（視野のほぼ全体を占める部分）の反射多色性　 結晶方位が異なる粒子のモザイク状集合体。複数の粒子がモザイク状に集合しており，その境界で反射多色性がはっきり判る。 熱水鉱脈鉱床中／鹿児島県錫山鉱山産

・弱い：濃紅銀鉱など。

・非常に弱い：輝安銀鉱，黄銅鉱，ハウスマン鉱など。