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反射率(可視光の反射率:明るさ(平行ニコルで観察)   [戻る]

可視光を反射する割合が大きい(反射率が高い)鉱物は明るく見える。反射率は透明度と反比例する性質である。
・反射率が高く明るく見える鉱物は全く不透明で内部反射を示さない。
・反射率が低い鉱物は光を通し,内部反射(クロスニコルで観察)を示す。

反射率には以下の一般的特徴がある。
・すべての鉱物は光の波長の違いにより反射率は若干異なる。
・等軸晶系以外の鉱物は結晶方位によって反射率は多少なりとも異なる。 → ステージの回転により,反射率が多少なりとも異なる(反射多色性が現れる。しかし,結晶の光軸方向では反射多色性は認められず,反射率は一定)。

※反射率がさして高くない鉱物でも,石英などの脈石鉱物中に単独粒子で存在する場合は,コントラストの関係で,非常に明るく見え,実際よりも反射率が高い鉱物のように見える(例えば,石英中に単独粒子で存在する黄鉄鉱は自然金に見えることがある)。
一方,反射率がかなり高い鉱物でも,それよりさらに反射率が高い鉱物に接していると,コントラストの関係で,実際よりも暗く感じる。


鉱物ごとの反射率の傾向としては以下のような傾向がある。
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●単体の金属や半金属の鉱物は特に反射率が高い。
自然銅,自然銀,自然金,自然白金,自然ビスマス,自然テルルなど。
※自然銀(単体の銀)は全ての物質中で最も反射率が高く(すべての可視光領域の光に対し92%以上),非常に明るい(→ 鏡はガラス板の裏側に銀をはり付けたもの)。


単体の金属:自然銀(Ag)
すべての鉱物中で最も明るく(反射率が高い),その影響で,近傍の硫化鉱物の硫セレン銀鉱(Ai)などは暗く沈んで見える。
自然銀は肉眼では純白色だが,偏光反射顕微鏡下では光源の色の影響で,やや黄色がかり,クリーム色に見える。  
Qz:石英

浅熱水鉱脈鉱床中/兵庫県旭日鉱山

単体の金属:自然金(Au)

硫化鉱物である黄銅鉱(Cp),方鉛鉱(Gn),閃亜鉛鉱(Sp)などより,はるかに明るく,明黄色を示し,近傍のそれらの硫化鉱物は暗く沈んで見える。 
Qz:石英
浅熱水鉱脈鉱床中/北海道光竜鉱山


単体の半金属:自然テルル(Te)
金属ほどではないが,非常に明るく,白い。
硫化鉱物である黄銅鉱(Cp)・ゴールドフィールド鉱(Gf),テルル化鉱物であるリッカード鉱(Rc)はそれに比べ,暗い。
Qz:石英

浅熱水鉱脈鉱床中/北海道手稲鉱山


単体の半金属:自然ビスマス(自然蒼鉛)(Bi)
非常に明るく,クリーム色。硫化鉱物である生野鉱(Ik),輝蒼鉛鉱(Bis)はそれに比べ,暗い。輝蒼鉛鉱は反射多色性が著しく,粒子によって色・明るさが異なるためモザイク状に見えている。

Qz:石英

熱水鉱脈鉱床中/兵庫県生野鉱山


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●硫化鉱物・セレン化鉱物・テルル化鉱物・ヒ化鉱物は,単体金属の鉱物よりも反射率は低いものの,比較的,反射率が高いものが多い。特に,鉄・コバルト・ニッケルなど8〜10族の元素を主とする硫化鉱物,金属元素などとテルルからなるテルル化鉱物,金属元素とヒ素からなるヒ化鉱物には反射率が高いものが多い(明るく見えるものが多い)。
 一方,マンガン・12族元素を主とする硫化鉱物は比較的,反射率が低い。

比較的,反射率が比較的,高い硫化鉱物の例
鉄・コバルト・ニッケルなど8〜10族の元素を主とする硫化鉱物

黄鉄鉱(Py) FeS2
淡黄色で明るい。周囲のやや暗い濃い黄色の部分は黄銅鉱(Cp)

黒鉱鉱床(黄鉱)中/秋田県松峰鉱山

輝コバルト鉱(Co) CoAsS
わずかに赤みがかった白色で明るい。周囲のやや暗い濃い黄色の部分は黄銅鉱(Cp),灰色のはエンプレクタイト(Em)。

熱水鉱脈鉱床中/山口県薬王寺鉱山

ゲルスドルフ鉱(硫ヒニッケル鉱 Ger) NiAsS
白色で明るい。Bn:斑銅鉱。
スカルン鉱床/広島県三原鉱山
金属元素などとテルルからなるテルル化鉱物 金属元素とヒ素からなるヒ化鉱物

シルバナイト(Sy)AuAgTe4,ステイツ鉱(Stz)Ag12Te7
硫化鉱物である黄銅鉱(Cp)やゴールドフィールド鉱(Gf)よりも明るい。

Qz:石英
浅熱水鉱脈鉱床中/北海道手稲鉱山


ヒ鉄鉱(Lo)FeAs2
白色で明るい。オレンジ褐色部分(Bn)は斑銅鉱,灰色(Mt)は磁鉄鉱,暗い灰色(Ad)は灰鉄ざくろ石,Qzは石英。

スカルン鉱床中/岡山県山宝鉱山

スペリーライト(Spe)PtAs2
白色で明るい。褐黄色(Cb)はキューバ鉱,黄色(Cp)は黄銅鉱,淡黄色(Pn)はペントランド鉱,明灰色(Gn)は方鉛鉱,暗灰色(Mt)は磁鉄鉱。

正マグマ鉱床中/ロシア ノリリスク


反射率が比較的,低い硫化鉱物の例
12族元素を主とする硫化鉱物 マンガンを主とする硫化鉱物

閃亜鉛鉱(Sp)(Zn,Fe)S
暗い灰色。酸化鉱物である錫石(Cas)ほど暗くないが,鉄の硫化物である磁硫鉄鉱(Po)よりもはるかに暗い。
熱水鉱脈鉱床中/鹿児島県錫山鉱山

アラバンダ鉱(Abn)MnS
暗い灰色。ケイ酸塩鉱物のバラ輝石(Rho)ほど暗くないが,硫化鉱物としてはかなり暗い。
接触変成作用を受けた層状マンガン鉱床中/岩手県野田玉川鉱山


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●酸化鉱物など酸素を多く含む鉱物は,硫化鉱物などよりも反射率は一般的にかなり低い。
 その中で鉄・マンガンを主とする酸化鉱物は硫化鉱物よりも低いものの,比較的,反射率は高く,やや明るく見える(磁鉄鉱,クロム鉄鉱,赤鉄鉱,チタン鉄鉱,ヤコブス鉱,ハウスマン鉱,鉄マンガン重石,コルンブ石など)。
 一方,鉄・マンガンなどをあまり含まないもの(ルチル,ペロブスカイト,錫石,灰重石など)は反射率がおおむね低く,偏光反射顕微鏡下では通常の造岩鉱物や脈石鉱物(石英,長石類,雲母類,角閃石類,輝石類,緑泥石,方解石,石膏,硬石膏,重晶石など)などと紛らわしいことが少なくない。このようなものは試料を研磨薄片にして,透過光による偏光顕微鏡観察も併せて行って同定する場合もある。



赤鉄鉱(Hm)Fe2O3

赤鉄鉱は酸化鉱物の中では明るい鉱物だが,それでも周囲の硫化鉱物である黄銅鉱CuFeS2(Cp)や黄鉄鉱FeS2(Py)よりもかなり暗い。
キースラガー中/愛媛県佐々連鉱山


磁鉄鉱(Mt)Fe3O4
磁鉄鉱も酸化鉱物の中では明るい鉱物だが,それでも周囲の硫化鉱物である黄銅鉱CuFeS2(Cp)やキューバ鉱CuFeS2(Cb),ペントランド鉱(Pn),方鉛鉱(Gn)よりもかなり暗い。

正マグマ鉱床中/ロシア ノリリスク


錫石(Cas)SnO2

周囲の硫化鉱物である
閃亜鉛鉱(Sp)や磁硫鉄鉱(Po)よりもはるかに暗く,脈石鉱物と紛らわしい。しかし脈石鉱物である石英(Qz)よりもやや明るい。

熱水鉱脈鉱床中/鹿児島県錫山鉱山


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●偏光反射顕微鏡下では,通常の造岩鉱物や脈石鉱物は大部分が暗い灰色である。それらのうちで透過の偏光顕微鏡観察で屈折率の高いもの(ジルコン,ざくろ石類,輝石類など)は,屈折率の低いもの(石英,長石類など)よりも反射率が高く,明るく見える。



灰鉄ざくろ石(Ad)は石英(Qz)よりも透過光での屈折率が高いため(灰鉄ざくろ石の屈折率1.88,石英の屈折率1.54),偏光反射顕微鏡では石英よりも少し明るく見える。
しかし,不透明鉱物であるLo:ヒ鉄鉱,Bn:斑銅鉱,Mt:磁鉄鉱などは遙かに明るく見える。

スカルン鉱床中/岡山県山宝鉱山