三
畳紀の植物・海生二枚貝(モノチス)の化石
成羽層群と呼ばれる泥岩・砂岩を主とする地層から産出します。この植物が産出する地層とモノチスが産出す
る地層の関係ははっきりしていないようです。 |
植物化石
植物化石の産出層は厚さ数cm〜1m程度の砂岩層と泥岩層が互い違いに堆積している地層(互層)で,その中でも泥岩層から多く産出し
ます。これは植物遺体の水中での沈降速度が泥と同じくらいだからです。特に高梁市からは多種類の植物化石が産出し,それらはシダやトクサなどのシダ植物
(胞子で増える)とソテツやイチョウなどの裸子植物(種子で増える)で
す。世界で初めて発見された種類も多くあります。
高梁市成羽町上日
名の
三畳紀層/写真幅約5m
明るい色の砂岩層と黒い色の泥岩層が互い違いに積み重なっている(互層)。植物化石は泥岩層(矢印の先)から多く産する。 |
シダ植物の一種(高梁市成羽町上日名)/写真幅15cm
これは現生種と形態的にほぼ同じであるが微細な点で異なる。
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ハウスマニア・ナリワエンシス (高梁市成羽町枝)/写真幅5cm
産地の成羽町にちなんで名づけられた新種のシダ植物。ヤブレガサウラボシの仲間。
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イチョウの一種(高梁市成羽町)/写真幅5cm
現生種にくらべ,葉が細長い。なお,イチョウの現生種は1種のみである。 |
トクサの一種(高梁市成羽町上日名)/写真幅5cm
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なお,植物化石の密
集した所は小規模な炭層となっており,かつて無煙炭が採掘されました。 |
海生二枚貝(モノチス)
植物化石を多く含む砂岩・泥岩の互層の近くの砂岩層から産しますが,植物化石と同じ層から産することもあるようです。モノチスは三畳紀
に浅い海底に生息していた二枚貝で,平べったい殻に放射状のすじがあります。また,モノチスに伴う海生動物化石はわずかな巻貝や腕足類などが知られている
だけです。産出するモノチスの化石には白い炭酸カルシウムの殻の成分がわずかに残っているものもありますが,多くは続成作用の過程で溶け去って印象(キャ
スト)となっています。 |
モノチス(砂岩中)(高梁市成羽町枝)/写真幅10cm
モノチスの化石は堆積時に大半は壊れており,これを含む砂岩層には引き伸ばされたような暗色の泥岩の径数cm程度の塊(スランプ構造:右写真)が多く含ま
れてい
ます。したがって,モノチスの化石を含む砂岩層は海底地すべりで堆積したタービダイトであると考えられます。 |
成羽層群の砂岩中に見られるスランプ構造(高梁市成羽町枝)/写真幅
5cm
層理に直角に切断したもの。矢印の先の暗色部が泥岩のレンズ。 |