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中生代 

 岡山県の中生代の化石は,三畳紀の 植物・海生二枚貝(モノチス)の化石のほか,陸域に生息していた白亜紀のカイエビ・タニシ・昆虫などの化 石が代表的な ものです。これらは日本がまだ中国大陸から分離しておらず,その縁辺部であった当時,その付近で生息していたものです。白亜紀は火成活動が活発で,化石を 含まない花こう岩や流紋岩を主とする火成岩類が多いです。

三畳紀(2億5000万年前〜2億1200万年前) ジュラ紀(2億1200万年〜1億4300万年) 白亜紀(1億4300万年〜6500万年前)

三 畳紀の植物・海生二枚貝(モノチス)の化石
 成羽層群と呼ばれる泥岩・砂岩を主とする地層から産出します。この植物が産出する地層とモノチスが産出す る地層の関係ははっきりしていないようです。
植物化石
植物化石の産出層は厚さ数cm〜1m程度の砂岩層と泥岩層が互い違いに堆積している地層(互層)で,その中でも泥岩層から多く産出し ます。これは植物遺体の水中での沈降速度が泥と同じくらいだからです。特に高梁市からは多種類の植物化石が産出し,それらはシダやトクサなどのシダ植物 (胞子で増える)とソテツやイチョウなどの裸子植物(種子で増える)で す。世界で初めて発見された種類も多くあります。

成羽層群
高梁市成羽町上日 名の 三畳紀層/写真幅約5m
 明るい色の砂岩層と黒い色の泥岩層が互い違いに積み重なっている(互層)。植物化石は泥岩層(矢印の先)から多く産する。
シダ
シダ植物の一種(高梁市成羽町上日名)/写真幅15cm
これは現生種と形態的にほぼ同じであるが微細な点で異なる。
ヤブレガサ
ハウスマニア・ナリワエンシス (高梁市成羽町枝)/写真幅5cm
産地の成羽町にちなんで名づけられた新種のシダ植物。ヤブレガサウラボシの仲間。
イチョウ
イチョウの一種(高梁市成羽町)/写真幅5cm
現生種にくらべ,葉が細長い。なお,イチョウの現生種は1種のみである。
トクサ
トクサの一種(高梁市成羽町上日名)/写真幅5cm
なお,植物化石の密 集した所は小規模な炭層となっており,かつて無煙炭が採掘されました。
海生二枚貝(モノチス)
植物化石を多く含む砂岩・泥岩の互層の近くの砂岩層から産しますが,植物化石と同じ層から産することもあるようです。モノチスは三畳紀 に浅い海底に生息していた二枚貝で,平べったい殻に放射状のすじがあります。また,モノチスに伴う海生動物化石はわずかな巻貝や腕足類などが知られている だけです。産出するモノチスの化石には白い炭酸カルシウムの殻の成分がわずかに残っているものもありますが,多くは続成作用の過程で溶け去って印象(キャ スト)となっています。
モノチス
モノチス(砂岩中)(高梁市成羽町枝)/写真幅10cm
モノチスの化石は堆積時に大半は壊れており,これを含む砂岩層には引き伸ばされたような暗色の泥岩の径数cm程度の塊(スランプ構造:右写真)が多く含ま れてい ます。したがって,モノチスの化石を含む砂岩層は海底地すべりで堆積したタービダイトであると考えられます。
タービダイト
成羽層群の砂岩中に見られるスランプ構造(高梁市成羽町枝)/写真幅 5cm
層理に直角に切断したもの。矢印の先の暗色部が泥岩のレンズ。

白亜紀のカイエビ, タニシ,昆虫などの化石
 これらの陸域に生息していた動物の化石は当時,中国大陸に存在したと考えられる大きな湖やその周辺部に堆積してできた関門 層群の火砕岩層を伴う泥岩層から産出します。主な産出地は井原市〜笠岡市です。この地層は九州北部から中国地方などにかけて点々と小規模に分布し,中国遼 寧省などに分布しているカイエビ・昆虫・恐竜などの化石を含む熱河層群と対比できるものと思われます。
 岡山県では恐竜の化石はまだ見つかっていませんが,見つけるならば,この地層が有望かと思われます。なお,関門層群の泥岩はかつて硯に用いられたので, その地層はかつて「硯石層群」とも呼ばれました。
カイエビ
カイエビ(井原市芳井町三原)/写真幅4cm
二枚の殻の間にエビのような生物体が入っている淡水動物。殻のみが化石として残る。
タニシ
タニシ(井原市上稲木)/写真幅1cm
ゴキブリのはね
ゴキブリの一種のはね(井原市芳井町東三原出谷/写真幅2.5cm)

 その他の岡山県の中生代の化石としては,美作市の三畳紀層(福本層群)のアンモナイトや貝類,新見市に小規模に分布しているジュラ紀層(山奥層)の貝類 などの化石が知られています。
貝化石
貝化石(新見市大佐 上刑部定藤)/写真幅6cm
ジュラ紀層(山奥層)の二枚貝の化石。