オウムガイ類とアンモナイト類  戻る

オウムガイ類とアンモナイト類は互いに近縁で,イカやタコの仲間に近く,巻貝に似るが,殻の内部に仕切がある点が異なる。この仕切と殻の内側が接する部分は縫合線という曲線になっている。
アンモナイト類は殻の巻き初めに初期室という小球体を形成する点がオウムガイ類と異なる。
オウムガイ類は,古生代の約5億年前に出現し,種類は少なくなっているものの現在まで生き残っている。一方,アンモナイト類は,古生代の約4億年前にオウムガイ類から派生して中生代に非常に栄え,中生代末(6600万年前)に絶滅した。

オウムガイ類の殻の縦断面

アンモナイト類の殻の縦断面
オウムガイ類とアンモナイト類はいずれもイカやタコの仲間に近い。巻貝に似るが,上画像のようにいずれも殻の内部に仕切がある点が異なる。


オウムガイ類
約5億年前に出現し,種類は少なくなっているものの現在まで生き残っている。


シノシスティス Sinocystis sp. 
原始的なオウムガイ。殻は巻いておらず,棒状で,大きなものは長さ1m以上になった。これは縦半分に切断された標本で,殻の内部に隔壁が見られる点は今のオウムガイと同じ。
古生代オルドビス紀(4億8500万年〜4億4400万年前)中国


リツイテス Lituites lituus

殻が巻いていないオウムガイから少し進化し,殻の先端だけが巻いたぜんまい型のオウムガイ。殻の内部に隔壁が見られる。
古生代オルドビス紀(4億8500万年〜4億4400万年前)中国


現生のオウムガイ
殻が完全に巻いている。殻の切断部に内部の隔壁が見える。
南太平洋


アンモナイト類
古生代は種類や数が少なく,多くは数cm以下で,縫合線は単純な曲線。
中生代になると,種類や数が多くなり,縫合線は中生代終わりの白亜紀のものは特に複雑な模様になる。それとともに30cm以上の大型の種類も多くなり,かぎ型など複雑な巻き方をする種類も多く現れるようになった。アンモナイト類は中生代に最も栄え,中生代末に絶滅した。


古生代のアンモナイト 種類や数が少なく,多くは数cm以下で,縫合線は単純な曲線。


ドンバリテス Dombarites lomazki
古生代中期に出現した原始的なアンモナイトで数cm程度の小さな種類。
これは殻が残っている標本で,縫合線は見えないが,殻の表面の細い筋がはっきり見える。
古生代 デボン紀(4億1900万年〜3億5900万年前) 産地:ロシア




ゴニアタイテス Goniatites choctawensis
全体の殻が剥がれた部分に古生代のアンモナイトの特徴の単純な縫合線がはっきり見られる。また,古生代のアンモナイトはこのような小型のものが多い。
古生代 石炭紀(3億5900万年前〜2億9900万年前) 産地:アメリカ



ウラロセラス Uraloceras sp.

古生代のアンモナイトとしてはやや大型の種類で10cmに達する。殻の表面に細かい筋が多くある。殻がはがれた部分(画像の上半分)に単純な縫合線がうっすらと見え,古生代のアンモナイトの特徴がわかる。
古生代ペルム紀(2億9900万年〜2億5200万年前) 産地:ロシア


中生代のアンモナイト
  種類や数が多く,縫合線は中生代終わりの白亜紀のものは特に複雑な模様になる。それとともに30cm以上の大型の種類も多くなり,かぎ型など複雑な巻き方をする種類も多く現れるようになった。なお,その巻き方は一見,多種多様に見えるが,標準的な平巻き以外に,巻きがほどけるタイプ,らせん状に巻くタイプなどに大別される。


セラタイテス Ceratites nodosus
これは全体が殻がはがれたアンモナイト化石で,標本全体に見える曲がりくねった縫合線は古生代のアンモナイトよりもやや複雑になっているのがわかる。
中生代 三畳紀(2億5200万年〜2億100万年前) 産地:フランス





パキディスカス属の仲間 Pachydiscus sp.
中生代の終わり頃の白亜紀のアンモナイトは,このように一層,複雑な菊の葉の輪郭のような縫合線となる。
中生代白亜紀後期(約7000万年前) 産地:北海道




ドイツ産

山口県産
ハーポセラス Harpoceras sp. アンモナイト類
ハーポセラスはジュラ紀に繁栄したアンモナイトで,殻の表面の肋が細い鎌形。互いに遠く離れたドイツや日本などのジュラ紀の灰黒色の泥岩層から多く発見される。
このことは当時の分布域やその後の大陸移動の状況を示す。
中生代ジュラ紀(2億100万年〜1億4500万年前)
左:ドイツ/右:山口県



イギリス産

山口県産
ダクチリオセラス Dacthyrioceras sp.
ジュラ紀に繁栄したアンモナイトで,殻の表面の肋がやや太く,直線的。互いに遠く離れたイギリス・ドイツ・日本などのジュラ紀の灰黒色の泥岩層から多く発見されている。
ハーポセラス同様,このことは当時の分布域やその後の大陸移動の状況を示す。
中生代ジュラ紀(2億100万年〜1億4500万年前)





ジェレツキーテス Jeletzkytes nebrascensis
殻口付近で巻きがとけかかっている。アメリカのサウスダコタ州から多産する。
中生代白亜紀後期(約7000万年前)アメリカ




アンキロセラス Ancyloceras sp. 
左のジェレツキーテスよりも一層,巻きがほどけた,かぎ型のアンモナイト。
中生代白亜紀後期(約7000万年前)モロッコ


ポリプチコセラス Polyptychoceras sp.

アンキロセラスよりも,さらに一層,ほどけた巻き方で,全体がクリップのような形である。
中生代白亜紀後期(約7000万年前)北海道





クリオセラス Crioceras sp.
平巻だが,成長初期から巻きがほどけているタイプのアンモナイト。
中生代白亜紀後期(約7000万年前)モロッコ





アイノセラス Ainoceras sp.
らせん状に巻く,中生代白亜紀のアンモナイト。

中生代白亜紀後期(約7000万年前)北海道


ユウボストリコセラス Eubostrychoceras sp.

アイノセラス同様,らせん状に巻くが,巻きがほどけた状態で成長する。
中生代白亜紀後期(約7000万年前)北海道




ニッポニテス nipponites mirabilis
蛇行する巻き方をするアンモナイトで,世界的に産出は少ない。
中生代白亜紀後期(約7000万年前)北海道





パラプゾシア Parapuzosia seppenradensis (レプリカ)
アンモナイトは中生代に最も栄え,白亜紀後期(約7000万年前)には大型の種類が増え,殻の直径が2mに達するものもいた。これは世界最大のアンモナイトのレプリカ。殻口付近についているだ円形のものはイノセラムスというアンモナイトと同じ時期に栄えた二枚貝。アンモナイトは大きくても殻の内部にガスをため,その浮力を使って海中で身軽に動いていた。
中生代白亜紀後期(約7000万年前) ドイツ産