倉敷市北部，酒津八幡山は周りを高梁川と柳井原貯水池に囲まれ，まるで水上に浮いているかのように見えます。

この八幡山は，中央部に花崗岩が，北部と南部に古生層が分布しています。

花崗（こう）岩は八幡宮周辺や道路わきなどで，露出した表面を見ることができます。

花崗岩地にはアカマツ林が広がり，コシダが茂っている場所が多く見られます。

花崗岩の隙間から水がにじみ出る場所では，ヤマジソが生えていることがあります。

アカマツに寄生するマツグミ。アカマツが枯れると運命を共にします。

地面に美しい虫を見つけました。ハンミョウです。とても身軽で，他の小さな昆虫を捕らえて食べます。

枯れたアカマツに生えたのはヒトクチタケ。中から虫が出てきました。クロヒラタケシキスイです。

ネズの枝先にケブカマルクビカミキリがいました。このカミキリムシは秋に成虫が出現し，そのまま成虫で冬を越します。

樹の上では尾の長いエナガがせわしなく動き回りながらエサを探しています。

ヒヨドリはノブドウの実を食べているところです。

主に動物の死体を食べるトビは，自然界の掃除屋と呼ばれます。

古生層地帯では，コナラ林が広がっています。コナラの幹は表面がデコボコしていて，縦すじがあるように見えます。

夏にコナラ林の下で，ひっそりと花を咲かせるウバユリ。

岡山県では八幡山ともう１か所でしか見つかっていないミヤマノコギリシダ。いずれの場所も一株ずつしか生えていません。

八幡山北側斜面には岡山県南部では珍しいミンミンゼミがたくさん棲んでいます。

雑木林はクワガタムシの住みかでもあります。ヒラタクワガタはがっしりとした大あごが特徴です。

八幡山の大きな特徴は，河原と丘陵地が堤防や車道にさえぎられることなく，直接つながっていることです。広い河原と丘陵地が一体となったこの地域には，たくさんの生きものを見ることができます。

山から河原へと移る場所にはシラガブドウが見られます。岡山県内では高梁川流域にわずかしか知られず，しかも八幡山が分布の南限になっています。

クズの草むらをよく見ると，いろいろな昆虫が見つかります。オンブバッタが交尾をしています。

じっと動かず獲物を待っているのはオオカマキリです。

秋の七草のひとつ，フジバカマは次第に姿が見られなくなってきました。

秋，高梁川の河原を埋めつくすのは，オギの穂綿です。

ミゾソバの大群落でおおわれているところがありました。

草の隙間にいるのはマツムシです。オスは美しい声で鳴きます。

草丈の低い場所ではトノサマバッタが見られます。

冬鳥のジョウビタキ。オスは銀色の頭，柿色のおなかが一際目立ちます。

モズやジョウビタキは一羽ずつ縄張りを構え，厳しい冬を過ごします。

ノスリは，小鳥やネズミなどを捕まえます。

水辺でもたくさんの生きものが出迎えてくれます。

これはウチワヤンマ。腹の一部がうちわのように広がっているのが特徴です。

ハグロトンボは水辺からあまり離れずに生活します。

岡山県では数カ所でしか生育が確認できないアサザも見ることができます。

水辺にはたくさんの種類の鳥たちが集まります。日本最大級のサギ，アオサギです。

水辺でよく見るセグロセキレイ。

同じくセキレイの仲間，キセキレイですセキレイの仲間は尾を上下に振るので，「石たたき」と呼ばれることもあります。

イソシギも尾をよく振ります。エサを探しているのでしょうか。

ミサゴは水中に飛び込んで魚を捕まえます。

山頂から河原へと連続するさまざまな生きものの変化が，これだけの面積にわたって見られる場所は，倉敷市内では他に見あたりません。

酒津八幡山は，たくさんの生きものたちが息づく豊かな自然環境が保たれています。

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