安山岩中の輝石類(きせきるい) pyroxene  [戻る]

輝石類にはいろいろな種類があり,安山岩には普通輝石や頑火輝石が含まれる(普通輝石は単斜晶系に属し単斜輝石といい,頑火輝石は斜方晶系に属し斜方輝石という)。

安山岩中に斑晶として含まれる普通輝石は緑黒色〜暗褐緑色で透明感に乏しい。一方,頑火輝石はそれより赤みのある褐色・褐色味の強いオリーブ色のことが多く,普通輝石よりわずかに透明感がある。
普通輝石は時に5mm以上になることがあるが,頑火輝石は5mmに達することはまれで,2mm以下が普通。なお,輝石類は小粒のものは互いに肉眼で識別できないことが多い。
普通輝石と頑火輝石の両方を含む安山岩も多く,これは「両輝石安山岩」などと呼ばれている。

石基には輝石類は顕微鏡的な大きさで斜長石などと共に多く含まれている。

※かんらん石とは,輝石類はしばしばへき開が認められることで区別できる。また,普通輝石は透明度が悪く暗緑色を帯び,頑火輝石はやや赤みを帯びることが多い(かんらん石は透明度が良く,黄褐色〜黄緑色でほとんど赤みを帯びない)

※普通角閃石との区別は,普通角閃石は全く透明感がなく,黒色不透明のことが多く,へき開がより完全で光沢が強く,また,結晶が輝石類よりもやや長く伸びていることが多い。そして,輝石類・角閃石類共に伸び方向に沿い2方向のへき開があるが,輝石類は2つのへき開のなす角度が約90°なのに対し,角閃石類はそれが約120°である。

※安山岩中の斜方輝石は玄武岩中の斜方輝石よりもやや鉄に富み,少し赤みを帯びる傾向がある。なお,斜方輝石のうちでかなり鉄に富むものは流紋岩中に少量含まれることがあるが,肉眼ではほとんど認められない。

※単斜輝石のうちでかなりカルシウムに乏しいものはピジョン輝石で,これを含む安山岩も少なくない。しかし,微粒なことが多く,かつ,肉眼で普通輝石と識別困難である。


安山岩中の普通輝石の斑晶の一例
緑黒色で透明感に乏しい。頑火輝石のように赤みを帯びることはまれ。


安山岩中の頑火輝石の斑晶の一例
赤みのある褐色のもの。安山岩中のものは玄武岩中のもの(褐色味の強いオリーブ色)より鉄に富む場合が多く,このように少し赤みを帯びる場合が多い。

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安山岩中の普通輝石(ふつうきせき)  augite
色/緑黒色〜暗褐緑色
透明度/ほとんど不透明だが,明るい所では緑がかった光を少し透す。
光沢/やや鈍いガラス光沢
硬さ/ナイフと同じくらい
形態/短柱状・粒状
へき開/明瞭
成分/カルシウム・マグネシウム・鉄などのケイ酸塩:(Ca,Mg,Fe)(SiO3)

安山岩中の頑火輝石(がんかきせき)  enstatite
色/赤みのある褐色。玄武岩に近い安山岩中のものはやや鉄に乏しくなり赤みが少なくなり,褐色味の強いオリーブ色。
透明度/ほとんど不透明〜半透明。普通輝石よりもわずかに透明感がある。
光沢/ガラス光沢
硬さ/ナイフと同じくらい
形態/小さな粒状・短柱状
へき開/明瞭〜不明瞭
成分/マグネシウム・鉄のケイ酸塩:(Mg,Fe)(SiO3)