かんらん岩中のクロムスピネル chromianspinel  [戻る]

FeCr2O4組成のクロム鉄鉱(chromite)−MgCr2O4組成のクロム苦土鉱(magnesiochromite)の固溶体で,他に少量のAlなどを含む。スピネル構造。黒い亜金属光沢のある微細な粒(不定形・8面体)をなす。磁鉄鉱に似るが,クロムスピネルは条痕色が褐色で,かつ,磁石につかない。
かんらん岩や蛇紋岩中に副成分鉱物として散点状でよく見られ(下左写真),そのかんらん岩の赤褐色の風化面にも,風化に耐えた黒色粒状などでよく見られる(下中写真)。時に層状の沈積組織をなし(下右写真),クロム鉱床を形成する。大陸地域の層状貫入岩体では優白質の斜長岩(はんれい岩の一種)中にも層状で見られる。なお,これら以外の岩石にはまれで,アルカリ玄武岩とその中のマントル包有物(かんらん岩)との境や,無人岩(特殊な安山岩)に見出される程度である。



かんらん岩中のクロムスピネルの例(矢印先)
灰緑色のかんらん岩中に黒色粒状で含まれるもの。このようなものはかんらん岩中に頻繁に見られる。


かんらん岩中のクロムスピネルの例(矢印先)
風化して褐色になったかんらん岩の表面に見られるクロムスピネル。左の新鮮なかんらん岩中のものと同じ見かけで,周囲のかんらん石が褐色に風化しても,変化していない。このようなものはかんらん岩の風化面に頻繁に見られる。


かんらん岩中のクロムスピネルの例
マントルのかんらん岩マグマの中で早期にできた黒いクロムスピネルが,マグマの下方に層状に沈んでたまったもの(沈積組織)。灰緑色の部分はかんらん石。クロムスピネルがさらに多いとクロム資源として採掘されることがある。
クロムスピネルは安定陸塊にある10億〜30億年前の古い時代の大規模な層状貫入岩体のマグマ溜まりでできることも多く,この場合,はんれい岩(斜長岩)中にもこれと同様に層状集合体なすことがある。