はんれい岩中の普通角せん石(ふつうかくせんせき) hornblende   [戻る]

角せん石には多くの種類があるが,はんれい岩などの火成岩中に含まれているのは普通角せん石という種類が多い。

はんれい岩中の普通角せん石は黒色だが,強い光のもとではわずかに緑色がかって見えることもある。しかし少量のチタンを含んだり,2価の鉄に富み,わずかに褐色がかがって見えるものもある。不定形のこともあるが,時に他の造岩鉱物よりも大きく成長した1cm以上の短柱状のこともある。完全なへき開でやや平滑に割れ,その割れ口に平行な直線状のすじが見えることも多い。へき開以外の方向で割れた面はささくれだっており,光沢が鈍い。
輝石類などと共生し紛らわしいが,へき開が輝石類よりも完全で,へき開の交わる角度は約120°である。また輝石類よりも一層黒く,光がほとんど通らない。

※なお,はんれい岩中の輝石類が変成作用や熱水作用で変質し,角せん石類が二次的に生成していることもある。この場合の角せん石は灰緑色〜暗緑色でやや軟らかいアクチノせん石であり,マグマから初生的にできた普通角せん石とは異なる(下右写真)。

※同じ苦鉄質岩でも火山岩である玄武岩には角せん石類はあまり含まれない。含まれる場合,Tiに富むケルスト閃石という種類が多く,アルカリ玄武岩にまれに認められる程度である。ほとんど黒色で,強い樹脂光沢があり,強い光の下でわずかに赤褐色を帯びて見える。




はんれい岩中の普通角せん石
黒い柱状の部分。へき開面はガラス光沢や樹脂光沢が強い。輝石類よりもへき開が完全(2方向。へき開の角度は約120°)で,一層,黒色であることで区別できる。
周囲の白〜灰色の部分は斜長石。


「変はんれい岩」中のアクチノせん石(Ac)
はんれい岩のうち,海洋底のプレートの中層部を構成していたものがプレートの動 き (1年に数cmの動き)で移動し,プレート同士の衝突帯(造山帯)で地下に沈み込み,弱い変成作用を受けたものは「変はんれい岩」と呼ばれ,もとの造岩鉱物は変質していることが多い。
元の輝石類はアクチノ閃石に変質し(暗緑色部分:Ac),これは左のようなマグマから初生的にできた普通角せん石とは異なり,緻密な繊維状〜針状集合体で針先で崩れやすく,しばしば,より軟らかい暗緑色鱗片状の緑泥石を伴う。
一方,斜長石(Pl)は,緻密で乳白色〜にごった緑灰色のぶどう石・斜灰れん石などに変質している。
このような「変はんれい岩」には写真中央に見られるような白い細脈(Ph)がよく見られる。これはぶどう石や斜灰れん石などからなることが多く,これも弱い変成作用でできたものである。

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はんれい岩中の普通角せん石(ふつうかくせんせき)  hornblende
色/黒色。強い光の下ではわずかに褐色,緑色を帯びて見える。
透明度/不透明
光沢/樹脂〜ガラス光沢。
硬さ/ナイフと同じくらいかやや軟らかい。
岩石中で見られる形態/不定形。時に柱状。
へき開/完全(2方向。へき開の角度は約120°
成分/カルシウム・マグネシウム・鉄・アルミニウムなどのケイ酸塩:Ca2(Mg,Fe,Al)5(AlSi7O22)(OH,F)2