※平行ニコルの顕微鏡写真:全て偏光の振動方向は画像の左右方向(⇔)

緑れん石 epidote
Ca2(Al,Fe)3O(SiO4)(Si2O7)(OH)
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斜灰れん石のFe3+に富むものに相当する。

単斜晶系 二軸性(−)2Vx=60〜90° α=1.72〜1.75程度 β=1.73〜1.78程度 γ=1.74〜1.80程度 γ-α=0.02〜0.05程度 Feが多くなると屈折率・干渉色は高まる。

色・多色性/黄色〜淡黄色(やや緑色がかることもある)の明瞭な多色性がある。なお,Feにやや乏しいもの(斜灰れん石に近いもの)は無〜淡黄色。



形態/b軸方向に伸びた柱状の自形〜半自形。不定形粒状のこともある。火成岩中の変質鉱物としては微細な半自形粒状集合体のこともあるが,塵状集合体のこともある。
へき開/伸び方向に1方向に完全なへき開がある。
消光角/結晶の伸び方向(b軸方向),および,それに平行なへき開線に対し直消光する。なお,b軸方向から見たへき開線に対しては20°程度斜消光する。
※ただし,結晶片岩の薄片は通常,線構造に対し平行に作製されるので,b軸方向に伸びる緑れん石のb軸方向から見える粒子はその薄片ではあまり見つからない。
伸長/b軸方向に伸び,かつb=Yなので,正の場合も負の場合もある。


双晶/
(1 0 0)にまれ。消光状態で認められる。

累帯構造/
Al⇔Fe3+の置換による累帯構造があるものは干渉色の違いで確認でき,時に平行ニコルの色でわかる場合もある。

産状

低温〜中温の広い変成相で安定で,緑色片岩・青色片岩・角閃石片岩などによく見られ,時にエクロジャイト中にも産する。
また火成岩マグマの固結過程で派生した熱水がその火成岩自身に作用する自家変質作用でも生じ,その中に細脈状や鉱染状をなす。また,付加体の玄武岩などにも弱い変成作用の生成物としてパンペリー石,赤鉄鉱などとともに見られる。



自家変質した花こう岩中の緑れん石  
Ep:緑れん石,Pl:斜長石,Cal:方解石,Qz:石英,Chl:緑泥石,Mt:磁鉄鉱
深成岩は地下深部で数%のマグマが徐冷して固まる際,それ自身のマグマから分離した水分などで幾分,変質する傾向があり,それを自家変質作用という。その自家変質作用では,斜長石は濁ったようになり,そのCaが溶け出し,斜灰れん石〜緑れん石・方解石・ぶどう石などができやすい(画像の緑れん石は平行ニコルで屈折率がやや高く黄色で,クロスニコルでは1次の黄〜2次の青の干渉色を示す)。また,アルカリ長石も濁ったようになりセリサイト化し,有色鉱物は緑泥石化・アクチノ閃石化・緑れん石化する傾向がある。なお,石英は新鮮なままで,平行ニコルで無色透明である。
なお,著しく自家変質作用が進んだ花こう岩は肉眼的にうぐいす色の緑れん石が目立ち,「ユナカイト」などと呼ばれる。





青色片岩中の緑れん石 Ep:緑れん石,Ghp:藍閃石,Qz:石英,Ms:白雲母,Rt:ルチル

画像のものは,結晶中心部がFe3+に富み干渉色がかなり高く2次の青色に達し,結晶周辺部はややFe3+が少なく1次の黄色程度。このように平行ニコルの色ではわからない程度の組成の違いがクロスニコルの干渉色でわかる場合もある。なお,薄片作成時に結晶周辺部(他鉱物との粒界)が薄くなったものや,柱状結晶を斜めに切った粒子では,粒子内での厚みの違いにより,一見,それが干渉色の違いによる累帯構造に見える場合もあるので注意を要する。