淡紅銀鉱 proustite Ag3AsS3 ・ 濃紅銀鉱 pyragyrite Ag3SbS3  いずれも六方晶系  [戻る]

淡紅銀鉱・濃紅銀鉱は互いにAs⇔Sbの置換による完全固溶体をなし,かつ,相互の区別は光学的には困難。両者とも反射色は青灰色。平滑な研磨面が得られ,錆びにくい。著しいオレンジ〜深紅の内部反射がある(粗粒なものは深紅。細粒のものはオレンジ〜朱色)。普通程度の反射多色性と明瞭な異方性があるが,内部反射により判りにくい場合がある。赤鉄鉱とは硬度で区別できる。褐鉄鉱(針鉄鉱など)とはそれが内部反射がややオレンジ味が強く,かつ,やや硬度が高いことで区別できるが,微粒のものは区別が難しい。なお,淡紅銀鉱・濃紅銀鉱と多形にあるザンソコナイト(淡紅銀鉱の低温相)・パイロスティルフィン(濃紅銀鉱の低温相)とは内部反射の色で区別可能(ザンソコナイト・パイロスティルフィンは共に黄褐〜黄色)。
組成変化はAs⇔Sb以外にはあまりなく,極くわずかなCuがAgの代わりに含まれる程度。そしてSはすべて硫塩基(SbS33-)を構成しているため,Seで置換されにくく,ナウマン鉱と共生するものでもSe含有率は2〜3wt%程度のことが多い。
浅熱水成金銀鉱脈に産し,黄鉄鉱・方鉛鉱・閃亜鉛鉱・脆銀鉱などに伴い,銅に乏しい環境でできる(黄銅鉱に富む鉱石にはあまり出現しない)。アグイラ鉱〜ナウマン鉱,ミアルジル鉱や輝安銀鉱などにも伴う。なお,濃紅銀鉱は輝銀鉱(針銀鉱)とあまり共生しないが,淡紅銀鉱は輝銀鉱(針銀鉱)と共生することがしばしばである。なお,同じ金銀鉱脈中で自然金・輝銀鉱とともに産する場合は,鉱脈の母岩際(盤際)で自然金・輝銀鉱がよく見られ,その内側に濃紅銀鉱(〜淡紅銀鉱)が見られる場合が多く(時にミアルジル鉱なども伴う),それらは互いに鉱化時期を異にしている(一般的に鉱脈の盤際から中心へ向かい,Sb・Asに富む傾向がある)。なお,輝銀鉱などに富む銀黒の割れ目に末期生成物として薄いフィルム状をなすこともある。
淡紅銀鉱・濃紅銀鉱は,銅に乏しい条件でできるので,多量の銅鉱物とは共生せず,各種銅鉱床や黒鉱鉱床などには産しない。したがって金銀鉱床以外ではまれである。

反射色/青灰色
反射多色性/普通(青灰〜淡青灰)
異方性/明瞭。著しい内部反射のため判りにくいことがある。
反射率(λ=590nm)/約30%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/50〜150
内部反射/著しい。粗粒なものは深紅。細粒のものはオレンジ〜朱色



淡紅銀鉱(Pro) モロッコ イミテル鉱山平行ニコル
浅熱水成銀鉱脈。青灰色。反射多色性(青灰〜淡青灰)は普通程度で,注意しないと分からない。
濃紅銀鉱も光学的性質は同じ。
Pro:淡紅銀鉱,Qz:石英


左の淡紅銀鉱(Pro)の異方性(明瞭)と内部反射
クロスニコル

明瞭な異方性があるが,内部反射の影響でやや判りにくい。粗粒なものはこのように深紅の内部反射を示す。
濃紅銀鉱も光学的性質は同じ。
Pro:淡紅銀鉱,Qz:石英


微粒集合体の濃紅銀鉱
(Pra)の内部反射(右)
 ペルー ウチュクチャクア鉱山/
クロスニコル

濃紅銀鉱や淡紅銀鉱は粒子が小さい場合,このようにオレンジ〜朱色の内部反射を示し,褐鉄鉱と紛らわしい。熱水鉱脈鉱床中。
Pra:濃紅銀鉱,Py:黄鉄鉱,Sp:閃亜鉛鉱,Qz:石英