褐鉄鉱 limonite FeO(OH)  [戻る]

地表付近の風化作用や低温の熱水作用でできる褐鉄鉱と呼ばれる水酸化鉄鉱物には,針鉄鉱(goethite 斜方晶系),鱗鉄鉱(lepidocrocite 斜方晶系),非晶質のものなどがあるが,結晶質のものでも1μm以下の粒子のことが多く,光学的には互いに区別は困難である。反射色は灰〜青灰色で,橙〜深紅の内部反射が著しい。熱水成のものには時にやや粗粒なものがあり,灰白〜青灰に変わる普通程度の反射多色性,明瞭な異方性が認められる(下写真)。鱗鉄鉱の方が異方性がやや強いといわれるが不確実。
針鉄鉱や鱗鉄鉱は,濃紅銀鉱・淡紅銀鉱・角銀鉱に似ている。しかし針鉄鉱や鱗鉄鉱は研磨硬度が高い。赤鉄鉱に似るがそれより異方性はやや弱い。

反射色/灰白・青灰色
反射多色性/結晶質のもの:普通(灰白〜青灰),非晶質のもの:なし
異方性/結晶質のもの:明瞭(鱗鉄鉱の方がやや強いとされる),非晶質のもの:なし
反射率(λ=590nm)/結晶質のもの:15〜25%程度,非晶質のもの:15〜20%程度
ビッカース硬度(kgf/mm2)/30〜800(特に結晶質のものは高い)
内部反射/橙〜深紅



結晶質の褐鉄鉱(Lm) 兵庫県坂越大泊鉱山
平行ニコル
灰白色。熱水から初生鉱物としてできたもので,光学顕微鏡で確認できる結晶粒子の集合体。反射多色性は普通程度で注意しないと分からない。
なお,針鉄鉱と鱗鉄鉱の区別は光学的には困難。
Lm:褐鉄鉱,Qz:石英


左の褐鉄鉱の異方性(明瞭)と内部反射/
クロスニコル
異方性は明瞭で異なる粒子でのコントラストで認められる。深紅の内部反射がある。このような結晶質のものは濃紅銀鉱・淡紅銀鉱に似ているが研磨硬度が高い。赤鉄鉱に似るがそれより異方性はやや弱い。

 

 



非晶質の褐鉄鉱(Lm)/
岩石の風化帯にできたもの 平行ニコル
等方体。多孔質のことも多く,荒れたような研磨面になりやすい。クロスニコル下では鮮やかなオレンジ〜朱〜紅色の内部反射がある。
Lm:褐鉄鉱,Qz:石英