石墨　graphite　C　六方晶系　　［戻る］

反射多色性は強く，灰褐〜灰色に変化する。自形〜半自形の板状〜鱗片状をなすものは断面は短冊状で，湾曲していることも多い。不規則な塵状集合体・粒状をなすことも多い。化学的に安定で錆びない。板状結晶を薄く剥ぐような極めて完全な劈開があり，時にそれによる伸長方向に平行な劈開線が現れていることがある。劈開面は非常に硬度が低く，荒れた研磨面になりやすいが，それに交わる方向（劈開線が見える方向：短冊状）ではあまり硬度は低くなく，比較的平滑な研磨面が得られる。組成変化はない。
黒色片岩（泥質片岩）・泥岩起源の片麻岩中・泥質ホルンフェルスに造岩鉱物として含まれ，これは源岩の泥岩中の有機物が変化したものである。また，まれにスカルンや結晶質石灰岩中に見られ，これは多くは方解石（炭酸カルシウム）中の炭素が還元されたものである。
※石墨は還元環境を示す鉱物で，磁鉄鉱とは共生するが，Feが全て＋３価だけである赤鉄鉱とは共生しない。また，石墨と共生する黒雲母や普通角閃石はFe^３＋を主とする緑色種よりも，Fe^２＋を主とする褐色種のことが多い。

・黒色片岩では石英・長石類・白雲母・緑泥石などと共生し，多くの場合，低温の変成作用のため結晶度が低く，非常に細かい塵状の不規則他形で，反射多色性や異方性は認めにくいことも多い。
・片麻岩では石英・長石類・黒雲母・白雲母・アルマンディン・ケイ線石・コランダムなどと共生し，高温の変成作用のため結晶度は高く，しばしば自形の短冊状の断面が片理面に沿って並んでいる。
・泥質ホルンフェルスでは紅柱石・石英・長石類・黒雲母・白雲母などと共生し，塵状の不規則他形の場合が多い。

反射色／灰褐〜灰白色（輝水鉛鉱よりもやや褐色がかる）
反射多色性／強い（灰褐〜灰色）
異方性／非常に強い。
反射率（λ＝590nm）／10〜20％（輝水鉛鉱よりもやや暗い）
ビッカース硬度（kgf／mm²）／7〜20
内部反射／なし

石墨（Grp）の反射多色性　富山県利賀村／平行ニコル 石墨は灰褐〜灰白色の強い反射多色性がある。これは泥岩起源の約700℃に達する高温変成の片麻岩中の石墨で，粗い片状集合体をなし，その反射多色性がわかりやすい（輝水鉛鉱よりもやや褐色がかる）。片麻岩では石墨は長石類・黒雲母などからなる基質に片状（板状）をなし，その自形の断面が短冊状に見え，それは片理面に沿って並んでいることも多い。 石墨は劈開面については非常に硬度が低く，荒れた研磨面になりやすいが，それに交わる方向（劈開線が見える方向：短冊状）ではあまり硬度は低くなく，このように比較的平滑な研磨面が得られる。

左の石墨（Grp）の異方性／クロスニコル 石墨は異方性も非常に強く，それにより，結晶粒子の集合状態がわかりやすい。