硫砒鉄鉱 arsenopyrite FeAsS 単斜晶系  [戻る]
砒鉄鉱のAs→S(部分)置換体

明るい白色でわずかにクリーム色を帯びる。硬く,平滑な研磨面を得るには時間がかかる。自形のことが少なくなく,柱状〜板柱状で,その断面が菱型や短冊状を示す。ほかには他形粒状・粗いモザイク状集合体のことも多い。錆びにくいものと錆びやすいものがあり,単一粒子でも錆びやすい部分と錆びにくい部分とが累帯状をなすこともある。中温〜高温の熱水鉱床・スカルン鉱床などによく見られ,磁硫鉄鉱,黄銅鉱,閃亜鉛鉱,方鉛鉱,自然ビスマス,輝蒼鉛鉱,黄鉄鉱などと共生する。
一般に銅鉱床では,還元的かつ高温生成の鉱床では黄銅鉱+硫砒鉄鉱の組み合わせが多く(例:山陽地方の銅鉱床),酸化的かつ低温生成の熱水鉱床ではその代わりに砒四面銅鉱が多い(例:日本海側の銅鉱脈や黒鉱鉱床)。これは熱水が酸化的かつ低温になるにつれ,その中のAsの化学種は,AsS2-よりもAsS33-が卓越するようになるためと思われる。したがって硫砒鉄鉱は重晶石のような硫酸塩鉱物(酸化的な熱水条件,すなわちSO42-が卓越する条件でできる)とはほとんど共生しない(一方,砒四面銅鉱はそのような硫酸塩鉱物と共生しうる)。
Fe→Coの置換が認められることがあり,著量のCoを含むものは形状がややルーズになり半自形〜他形のこと多く,異方性が弱くなる。As⇔Sの置換も若干おこるが(As/S=0.9〜1.1程度),これによる光学的性質の変化は認められない。黄鉄鉱と共生するものは原子比でS>Asである。まれにごく微量(ppmオーダー)のAuを含むことがある(Feを置換)。
類似鉱物として,砒鉄鉱は錆びにくく,異方性の色はかなり鮮やかな桃橙〜青色。

反射色/白〜クリーム白色
反射多色性/普通,白〜クリーム白色(著量のCoを含むものはほとんど無し)
異方性/強い(著量のCoを含むものは普通)
反射率(λ=590nm)/51−52%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/715−1154
内部反射/なし



硫砒鉄鉱
(Asp)/岡山県山宝鉱山 平行ニコル
スカルン中。反射多色性は普通で,注意しないと分からない。中央付近は多角形の輪郭のある自形。
Asp:硫砒鉄鉱,Cp:黄銅鉱


左の硫砒鉄鉱(Asp)の異方性(強い)
 
クロスニコル

結晶方位が異なる粒子とのコントラストで異方性がはっきりわかる(やや中央付近。青〜桃)。
Asp:硫砒鉄鉱,Cp:黄銅鉱

 

 

 



硫砒鉄鉱(Asp) 兵庫県生野鉱山平行ニコル
自形の柱状・菱形の断面。中温の鉱脈鉱床中。
Asp:硫砒鉄鉱,Py:黄鉄鉱,Sp:閃亜鉛鉱


硫砒鉄鉱(Asp) 兵庫県生野鉱山平行ニコル
粗〜細の柱状結晶が累層状をなすもの。普通程度の反射多色性により粒子ごとにわずかに色が異なって見えている(下半分のやや粗粒部分)。中温の鉱脈鉱床中。
Asp:硫砒鉄鉱,Qz:石英

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検鏡試料(矢印先の硫砒鉄鉱の層状部分)